「予防」に投資する成功者、「対処療法」で消耗する人

黒坂岳央です。

人生やビジネスにおいては、問題が起きてから慌てて対処する人は多い。しかし、個人的にはこのような「対処療法」ではなく、事前に「予防」する方が圧倒的に良いと思っている。

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ビジネスも人生も「対処療法」より「予防」

対処療法をざっくりいうと、問題が発生した後にその場しのぎの対応を行う手法だ。短期的には効果的に見えるが、長期的な視点でトータルでは損をする事が多い。

最もわかりやすいのが健康だろう。普段から健康を意識した「予防」の方が、病気になって慌てて医者にかかる「対処療法」より圧倒的に合理的だ。たとえば虫歯や歯周病が悪化すると、対処療法に要するコストや精神的苦痛、かかる時間のトータルは予防と比較にならない規模になる。

これはビジネスについても同じことが言える。例えば、ある小売企業が売上低迷に直面した際、慌てて値引きキャンペーンを実施するようなケースである。だが、顧客離れの根本原因は商品の品質低下にあるので、値引きを辞めると問題は再発する。また、頻発すると顧客は大胆な割引の時以外は買わなくなる。

この場合、真にやるべきは値引きをせずとも売上が出るように商品品質を高めたり、ブランド価値を高めることにあるだろう。つまり、努力の方向性が間違っているのだ。

対処療法に走る人の思考

上記のような話は言われずとも、誰でもわかっているはずである。それにもかかわらず、なぜ依然として多くの人は予防せず対処療法に走りがちなのか?その理由を考察したい。

理由の1つ目は人間は短期的に得られる結果を、長期で獲得する結果より高く評価するという機能性を持つからである。具体的にいえば1年、2年かけてスキルやキャリアアップをする方が大きく収入を増やせるのに、目先の残業代で稼ごうとする、といったものだ。

短期で得る結果は「確実」だが、長期の自己投資は「不確実」なので、後者を取りに行ける人は少ないということなのである。

理由の2つ目は「何をすれば予防になるのかわからない」という知識不足も大きいと思っている。自分の市場価値を高めれば待遇改善、収入増加が見込めると言われても「具体的に自分の場合はどんなスキルをどのように獲得すればいいか?」を突き詰める必要がある。だが、実際にはなかなかリサーチまで届かない。

理由の3つ目は変化を嫌うからだ。地方の企業には未だにFAXを仕事で活用する会社が少なくない。顧客へのマーケティングにFAXでのDMを送るのだが、これを続けてもFAXを使う家庭の減少とともに確実にジリ貧になる。しかし、「インターネットでのマーケティングに乗り出してうまくいかなかったらどうしよう」と変化を恐れて、昔からずっと続けているやり方を踏襲してしまうのだ。

「予防思考」になる方法

ではどうすれば、対処療法ばかりではなく予防する思考になれるのか?

1つ目は現状把握である。そもそも、自分がやっていることが対処療法なのか?それとも予防策を打てているのか?を把握することがファーストステップだろう。降ってくる仕事を頑張って捌くだけの日々になっているなら、予防策を打てていないことを疑い、付加価値を高めるスキルアップを考えるべきだ。

2つ目は知識のアップデートだ。対処療法しかしない人は勉強不足であることが少なくない。上述した「FAXでのDMしか売り方を知らない企業」の話を聞けば、インターネットでのマーケティングを勉強するべきだと誰でもわかるはずだ。今はどんなビジネスが主流で、どんな技術が使われ、何がトレンドか?ということが理解できれば、「それじゃこれをやってみよう」とこれまでにない施策を打つことができるだろう。

3つ目はスモールスタート、という技術を持つことである。対処療法から抜けられない人は往々にして「大きく始めようとする」傾向がある。しかし、新しい取り組みは失敗する確率の方が高い。いきなり大きく初めて失敗すれば、「やはり思い切った挑戦はリスクが大きい」と及び腰になる。そのため、まずは小さく初めて自分への適正を見極めるスモールスタートでやるべきだ。

予防というのは「一回やって終わり」ではない。毎日の習慣化に落とし込み、常に改善できる余地を模索し続け「毎日アップデート」という感覚で取り組むのが良いだろう。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。