江戸時代から続く「せどり」を現代の副業に

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せどり(競取り、背取り)とは、商品を安く仕入れて高く売る、江戸時代から存在する商売の形態です。元々は古書店で相場より安い本を仕入れ、他店で高く売る商いでしたが、現在はオンライン販売が主流となり、副業として取り組む人も増えています。

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「せどり」の現実的な始め方と注意点

扱う商品も書籍だけでなく、DVD、ゲーム、おもちゃ、家電など多岐にわたり、販売先はAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングのようなネット店舗から、ヤフオク、メルカリ、ラクマなどのフリマアプリまで様々です。

中でもAmazonは月間4000万人以上の利用者がおり、日本人の3人に1人が利用している計算になります。この圧倒的な集客力により、商品の回転率が高いという特徴があります。

また、FBA(フルフィルメント by Amazon)というサービスを利用すれば、商品の保管、注文処理、出荷、配送、決済、返品対応まで全てAmazonが代行してくれるため、仕入れた商品をAmazon倉庫に送るだけで、あとは自動的に販売が進みます。2週間ごとに売上金が振り込まれるシステムも、キャッシュフローの面で助かります。

ただし、FBA利用には各種手数料がかかり、在庫の保管期間が長引くと追加料金が発生します。また、返品リスクや商品の劣化リスクも考慮する必要があるため、仕入れの際は慎重な判断が求められます。

収益化までの道のりとリスク管理

せどりで安定収入を得るまでには、相応の時間と努力が必要です。「30日で簡単に稼げる」といった誇大な表現を目にすることもありますが、実際には以下のような段階を経ることが一般的です。

最初の1〜2ヶ月は学習期間として、市場調査の方法、適切な価格設定、信頼できる仕入れ先の開拓などを学びます。

その後2〜3ヶ月は試行錯誤期間として、小規模な仕入れで経験を積みながら、どのような商品が売れやすいか、利益率はどの程度確保できるかを実践的に学びます。収益が安定し始めるのは通常3ヶ月以降で、月収20万円以上を安定的に稼ぐには、半年から1年程度の経験が必要とされています。

始める前に知っておくべきリスクも複数あります。まず資金リスクとして、初期投資として仕入れ資金が必要になります。次に在庫リスクとして、売れ残りによる資金の固定化や商品の劣化があります。さらに、同じ商品を扱うライバルとの価格競争により、想定していた利益が確保できない場合もあります。

プラットフォームの規約変更も大きなリスクです。Amazonや各販売サイトは随時規約を更新しており、これまで問題なく販売できていた商品が突然出品禁止になることもあります。また、一定以上の収入が発生すれば確定申告が必要となり、税務処理の知識も求められます。

価格設定については、Amazonでは同じ発送方法・同じコンディションの最安値を参考にするのが基本です。FBAを利用する場合は、自己発送より5〜10%程度高く設定しても、配送の速さと信頼性から売れることがありますが、市場の動向を常に観察し、柔軟に価格を調整する必要があります。

せどりを始める際の心構えと実践的アドバイス

せどりは、正しい知識と戦略があれば副収入を得られる可能性のあるビジネスです。しかし、インターネット上でよく見かける「簡単に稼げる」「誰でも月100万円」といった表現は現実的ではありません。

地方在住でも都市部でも、それぞれにメリット・デメリットがあります。地方はライバルが少ない反面、仕入れ先が限られる場合があり、都市部は仕入れ先は豊富ですが競争が激しいという特徴があります。どちらの環境でも、自分の状況に合った戦略を立てることが重要です。

興味がある方は、まず本業に支障をきたさない範囲で、少額の資金(例えば1〜3万円程度)から始めることをお勧めします。せどりは可能性のあるビジネスですが、安易な気持ちで始めるのではなく、しっかりとした準備と覚悟を持って取り組むことが成功への第一歩となるでしょう。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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