公明党・岡本三成ファンドと参政党・松田学プラン:二つの財源構想を比較する

左:公明党・岡本三成政調会長 右:参政党・松田学氏

参政党の松田学氏(元財務官僚)は、かねてより「松田プラン」と称する新たな財源構想を提案してきた。これに対し、公明党の政調会長・岡本三成氏(元ゴールドマン・サックス証券執行役員)は、「政府系ファンド」(日本版SWF)創設によって財源を生み出すという構想を打ち出している。

両者に共通しているのは、荒唐無稽なMMT(現代貨幣理論)を否定したうえで、財政健全性に配慮しつつも知恵を絞ろうとしている点である。以下では、それぞれの構想の相違点、実現可能性、リスクなどを簡潔に比較する。

端的に言えば、松田プランは国の借金を「通貨」に置き換えて帳消しにする構想である。具体的には、日銀が保有する国債を「永久国債」に切り替え、政府が発行するデジタル通貨(暗号資産)と交換することで、政府債務の実質的な返済負担を免れるという仕組みである。通貨の発行量は日銀が管理することでインフレの抑制を図り、財政規律を保つとしている。

この案は一見すると斬新に見えるが、市場がそのような「通貨マジック」に信認を与えるかは極めて不透明である。少数ながら「試してみる価値はある」との声も存在する。池田信夫氏も「松田案は、ターナーやシムズの案と同じであり、ゼロ金利のときは意味がなかったが、現在なら金利リスクをヘッジできる」と一定の理解を示している。

筆者としては、日本経済のようにすでに危機的な状況にある国が、前例のないマクロ経済政策を採用することには基本的に反対であり、積極的に賛成することはできない。ただし、限定的に研究・試行する余地はあるとも考える。しかしながら、これを前提にして巨額の歳出拡大を当然視するような政策運営は論外である。

一方の「公明ファンド」案は、政府が保有する株式や外貨準備などの既存資産を集約・ファンド化し、その運用益を子育て支援や成長投資に振り向けるという仕組みである。

このモデルは、安倍内閣時代に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって実際に導入され、株価の変動に伴い成果も上下した。現時点では株高に支えられ、「成功」と見なされている。中には、その評価益を調子に乗って一般財源に取り込もうとする不届きな主張すらある。

ただし、このような仕組みを恒常的な財政拡大の原資と位置づける発想には強い懸念がある。年金と一般財政の両方がこの方式に依存すれば、資産総額そのものがリスク要因となる。

とはいえ、仮にファンド運営が健全かつ非政治的に行われるのであれば、それなりに高い確率で一定の成果を上げる可能性はある。家計においても、預金・株・不動産に三分割する発想のもとで、多少リスクを取っても利回りの高い運用を行うことは妥当である。米国債の比率をやや減らし、米国政府が評価する他の金融資産に振り向ける選択も考えられる。

特に、ゴールドマン・サックスの役員経験を持ち、日本の政治家で唯一、政界入り前にトランプ大統領と対峙した経験を有する岡本氏のような実績ある人物が主導し、人脈を活かして有能なマネージャーを発掘し、政治的介入から独立した人事と運用体制を確保するのであれば、成功の可能性は高まるであろう。

問題は、これが政治主導で運用先を決定されるようになると、旧来の放漫な財政投融資の二の舞となるリスクがある点である。かつて郵貯資金などを原資とした投融資が政治的に歪められた苦い歴史を忘れてはならない。

諸外国には、ノルウェーのように天然資源を原資としたSWFもあれば、フランスのように純粋な投資型ファンドとして慎重に規模を限定した事例も存在する。したがって、誰も試したことがない手法というわけではない。日本においても、適切に制度設計を行えば、一定程度は導入を検討してよい選択肢だと考える。