日本人の流行モノ好きは私の見る限り韓国と並び世界で突出していると思います。流行っているとなると極端に消費が増え、ある日突然、ピークを迎え、その後、新興企業の株価のように一気に醒めていくのです。なぜでしょうか?
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読売がボージョレヌーボーの輸入量がピークの2割に減少したと報じています。フランスワインの新酒なのですが、もともとはワインの出来を見るために業者向けに提供していたものが一般向けにも放出されたもので日本は「初物好き」ということで大ブームになったのがバブルの頃の88年あたりでした。私も覚えています。「皆が飲むなら飲んでみるか」という感じでしたが決して味わい深いものではなく、若々しく新緑で跳ねるような感じがワインに本来期待する円熟味やまろやかさとかなり相反しており、割とすぐに飲まなくなりました。
ただ当時の会話を思い出すと「ボージョレヌーボーよ、きっとおいしいわよ」とよくわからないロジックで人々はおいしいものだと思い込んでいたような気がします。言い換えると日本人は当時はワインの味をさほど理解していなかったのではないかと推測します。
比較的最近の話ですとタピオカの入ったドリンクブームも醒めるのが早かったと思います。いわゆる台湾ブームの一環で台湾のフルーツや小豆などを使ったカラフルなドリンクにタピオカが入っているもので、日本には昔はなかった商品でした。当時、台湾の人と話していた時、日本人がタピオカを全部買っていくと半ばあきれ顔で話していたのをよく覚えています。あのブームはすっかり沈静化し、先日、日本にいた際も台湾系ドリンクショップはひっそりと営業を続けていました。
ちなみに私、タピオカが結構好きで、数日前もタピオカドリンクを飲んだのですが、最近はタピオカ入りドリンクは主流ではなくメニューでもタピオカはオプションになっているケースが増えています。ちなみに街で持ち歩きながら飲むこのドリンク、カナダでは1つ1000円、日本でも7-800円だったと記憶しています。ちょっとお高いですよね。
流行モノのリストをあげていくときりがないのでこのあたりで止めておきますが、なぜ日本人は流行モノが好きなのでしょうか?いわゆる初物には縁起を担ぐ傾向が強くあり、ご祝儀的な意味合いも兼ねるケースがあります。特に農産物や水産物で顕著に見られます。とはいえ、マスクメロンにしろ、マツタケにしろ庶民には無縁のものでこれは流行モノとは程遠いものです。
一方、マーケティング的には数量限定で「売り切れ必至」商売が常套手段になっています。それこそアニメグッズからマンションの「第〇期販売」までとにかく業者は数を出さず、売り切れというキャッチに重点をおきます。「数量限定」「残り僅か」「早い者勝ち」などなど。それこそ備蓄米も一種の流行モノに近く、一部の方にとっては「どんなものか一度食べてみよう」だったのではないでしょうか?政府も政府で備蓄米は8月末までに売り切れるよう制限付きになっています。当然ながらここから先は小出しで品薄感を醸し出せばマーケティング的には成功ということになります。
日本とカナダを往復していていつも思うのは日本は消費大国であることです。そして多くの消費者がsomething new(何か目新しいもの)を血眼になって探しているのです。それこそ100均で陳列棚を隅から隅まで舐めるようにして見て歩く客が多いのは「これみてよ、すごくない?」という話題性を求めているのだと思います。その点は韓国人も似ていて長蛇の列もそっくり。2023年には日本のウィスキーとハイボールがバカ受けしたのを覚えているかと思います。
アメリカも割と流行には敏感ですが、カナダはかなり保守的でその商品なりサービスが間違いないものか、石橋を叩く傾向はあります。ただしのぞき見趣味はかなり強く、かつてはコンドミニアムの新発売となれば販売センターに長蛇の列ができて売る側も行列している人たちにドリンクサービスをするなどむしろそれを楽しんでいたこともあります。24年にバンクーバーに初オープンした丸亀製麺も初めの3か月ぐらいは驚異的な人気で確か同社の海外店ではハワイに次いで2位につけるほどの売り上げを記録しました。今ではいつでもすぐに入れます。つまりカナダではブームではなく、ちょい見して終わりという点でビジネスは本当に難しいところです。
基本的にはカナダは英国の保守的消費行動の流れを継いでいることはあるでしょう。カナダ人はカネを使わずに1日中遊べることにかけては天才的とも揶揄されますが、要はケチなのであります。
そう考えると日本では選挙で消費税どうのこうの、と訴えていますが、夏のボーナスは平均で45万円。一部からは100万円越えで思わず笑みがこぼれる方もいて思った以上に懐具合は暖かくて流行モノのお宝グッズ探しに今日も精を出しているのではないかと思うのです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月9日の記事より転載させていただきました。