
日本の政治にはいま、大きな閉塞感が漂っている。長年政権を担う自民党には、官僚依存や既得権益へのしがらみが根強く残り、対抗勢力である野党も有効な対案や具体性に乏しく、多くの国民が不信感を抱いている。このような状況の中で、保守系の新興政党「参政党」が支持を広げているのは、ある意味で当然の流れかもしれない。
2025年都議選では3議席を獲得。特に子育て世代を中心に支持を広げ、共同通信の世論調査では比例支持率8.1%と、既存の野党を上回る結果を見せた。この躍進は一時的なブームではなく、「従来とは違う選択肢」を求める有権者の思いの反映と受け止めるべきだろう。
私は現在、会社経営に携わっているが、かつては生命保険会社に勤めていた。社会保障や医療、教育といった制度の運用と現場のズレを、長年の仕事の中で痛感してきた。多くの政党は、こうした「現場の声」に十分応えられていない。その中で、参政党が掲げる政策には、現場感覚に根ざした「生活に直結する政治」の手応えを感じる。
参政党が重視する「教育改革」は、とりわけ本質的だ。知識詰め込み型の教育ではなく、自ら考え、判断する力を育む教育の必要性は、社会人として長く人材育成に関わってきた私にとっても共感できる。今の日本の学校教育は、「正解のある問題」に強い子を育ててはいるが、「正解のない現実」に向き合う力を育てているかは疑問だ。参政党はこの問題に正面から取り組もうとしている。
また、同党の掲げる「農薬規制」政策にも注目している。具体的には、ネオニコチノイド系やグリホサートなどの化学農薬に関し、人体や環境への影響を精査し、段階的な規制を進めるべきだと提言している。そして、有機農業や自然農法への支援と普及を促す方向性を打ち出している。
こうした主張に対しては、「科学的根拠が薄い」「非現実的」との批判もある。しかし、日本では農業や食品産業をめぐる利権構造の存在も否定できず、安全性や持続可能性よりも経済合理性が優先されがちだった。参政党の政策は、そうした「見過ごされてきた課題」を公の場に引き出すという意味で、価値があると考える。
一部には「過激」「極端」と受け取られかねない政策もある。しかし私は、それらが戦後日本の政治・行政に深く根を張る官民の利権構造を揺るがすきっかけになることを、むしろ歓迎している。中央官庁と業界団体の癒着、補助金依存の地方行政、歪んだ公共事業の構図——こうした構造に真正面から異議を唱える政治勢力が、いまこそ必要ではないか。
参政党はまた、SNSなどデジタルメディアを駆使した草の根的な情報発信にも長けている。従来の政党がマスメディアや組織票に依存していたのに対し、同党は講演会やライブ配信を通じて、個々の国民が「知り、考え、行動する」きっかけをつくっている。これは政治に無関心だった層を引き込み、民主主義を再活性化する動きとして注目すべきだ。
もちろん、懸念点がないわけではない。反ワクチン的な発言やMMTへの信頼、外国人政策に見られる排他的なトーンなど、慎重な検証が必要な要素もある。だが、それでもなお、参政党が提示しているのは「政治とは何のためにあるのか」という根源的な問いかけであり、それ自体が日本の政治に新たな風を吹き込んでいる。
理念を掲げるだけでは、政治は動かない。だが、理念なき実務政治もまた、民意を失う。参政党が今後、理念と現実のバランスを取りながら、実効性のある政策を打ち出していけるか。そこに期待を寄せつつ、私は「変化を恐れず、挑戦を選ぶ」という意味で、参政党の存在を肯定的に評価している。
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桐山 英夫(きりやま・ひでお)
会社経営者。元生命保険会社勤務。企業経営と社会制度の接点に関心を持ち、教育・安全保障・規制改革の政策動向を注視している。






