スペインのロタ・モロン米軍基地、モロッコ移転の可能性浮上か?

トランプ大統領とサンチェス首相の摩擦を喜ぶモロッコ国王

6月24・25日にオランダ・ハーグで開催されたNATO首脳会議で、スペインのサンチェス首相は国防費の増額について、2035年までにGDP比2.1%にとどめる方針を主張し、トランプ大統領が求めた5%への引き上げには反対の意向を示した。最終的にスペインも5%増額の覚書に署名したが、サンチェス首相はその後も2.1%という立場を堅持している。

これに対し、トランプ大統領はスペインからの輸入品に特別関税を課す意向を表明している。

この両者の対立を喜んでいる人物がいる。モロッコのムハンマド6世国王である。同国王は、1953年からスペイン南部アンダルシア州に所在する米海軍ロタ基地と空軍モロン基地のモロッコへの移転を、米国と水面下で交渉してきた。

しかも、トランプ大統領はモロッコ寄りの姿勢をとっており、ムハンマド6世とも親しい関係にある。トランプ氏が1期目の任期終了間際に「西サハラはモロッコ領である」と承認したことも、その一例だ。これは、西サハラの住民による「モロッコ統合」か「独立」かの国民投票で決めるとする国連の決議に反している。

セウタとメリーリャもモロッコの支配を狙う

この動きを受けて勢いづくモロッコ政府は、スペインが領有する北アフリカ沿岸のセウタおよびメリーリャの両自治都市についても、モロッコ領だと主張を強めている。モロッコ人住民を両都市に増やし、事実上の支配を強化しようとしているようだ。さらに将来的には、カナリア諸島も同様に制圧する構想を持っているとみられる。

こうしたモロッコの領土的野心が高まる中で、スペインと米国の関係悪化はモロッコにとって好都合である。特に、2029年までトランプ政権が続けば、モロッコ政府はトランプ氏を後ろ盾に、米軍基地のモロッコ移転をより強く主張する可能性が高い。

もちろん、移転に必要なインフラ整備はまだ不十分だが、これらの基地は地中海とアフリカ・サヘル地域の監視を目的としており、地理的にはモロッコに移転してもその機能を果たすことは可能だ。

実際、米共和党の元議員ロバート・グリーンウェイ氏はSNS「X」にて、ロタ基地とモロン基地をモロッコに移す「時が来た」と発言している。米国の元議員がこれほど露骨にモロッコ寄りの姿勢を示すのは異例であり、背後にモロッコ政府からの資金提供があった可能性も否定できない。

今後もサンチェス首相の政権が続く限り、米国との摩擦は継続する可能性が高い。