私は参政党が国会に数議席もつことは悪くないと思っている。なぜなら、どうせある種のポピュリスト的主張はまじめな国民のあいだにだって存在するし、それが国会において代弁者を持つことは悪いことでもないと思うからだ。
むしろそれが、れいわ新撰組のように日本を自由主義陣営から引き離すことを共産党と一緒に画策したり、日本保守党のように明治維新にさえ否定的な前近代礼賛、先の戦争において何も日本は悪くないという戦後全面否定、イスラエル全面支持、歴史解釈では万世一系否定など気儘すぎる勢力よりは明らかにまともだ。

ただ、経済政策は実行不可能だ。自分の国の市場から世界を閉め出して、報復されないことを前提にしている。日本が資源国ならベネズエラのようにしばらくやれるだろうが、残念ながら日本は産油国でない。
また、目下、参政党でいまいちばん困るのは、各都道府県のとくに一人区で参政党候補が伸びることで立憲民主党候補に漁夫の利を占められそうなことだ。なにしろ立憲民主党の評判がいいのでないが、共産党が候補をおろしたことはかなりの効果が出ている。そこに参政党が大量得票したら、実質的に共産党の動きと連携したのと同じことになる。
その一方、憲法問題などについては、参政党に対する批判はいささかフェアでない。その店については、参政党に対する厳しい批判をしたのとバランスを取る意味でも客観的な観察をしてみたいと思う。
参政党は憲法草案を出しているが、これについて、かなりアンフェアな批判がされていると思う。
たとえば、憲法改正ののち企図していることを改正を経ずして強行突破するようにすり替えられている。天皇主権は憲法違反だというのはその典型だ。
また、参政党の草案では、天皇を「元首」「しらす者」とし、象徴より高い位置づけの表現はあるものの、「国民主権を否定」してはいない。天皇を現在の象徴からもう少し実質的な権力を付与することを念頭においてるのは確かだが、ヨーロッパの君主国では英国も含めてそれなりの権限はもっており、その程度で天皇主権というのは不適切だ。
徴兵制に途を開くというが、とくにそんな記述はない。国防意識が強調されているが、それが徴兵制にただちにつながるとはいえない。そもそも、現実に海外から侵略を受けたとき戦うことに協力することが国民の義務でないとすれば、国民は侵略を傍観しておればいいのかどうかについて、現在の憲法は回答を用意しているわけでない。
憲法改正でなく、創憲だというのも、現行憲法の改正手続きを否定しているわけではない。日本保守党は憲法無効論に近いがそれとは一線を画している。憲法改正手続きに則って、「日本国民の総意で新しい憲法を制定する」というのは憲法違反というのは少し無理がある。
「LGBT否定・外国人排除」については、草案には「婚姻は男女の結合」「夫婦同姓を要件」との記載があるが、それは現在の法制度を憲法の条文として採り入れろというだけのことであるし、LGBTを「否定」しているわけでない。外国人参政権排除も現行法を追認しているだけである。
神道についても特別な扱いを指向しているが、日本保守党よりのように他の宗教を排撃する指向ではない。参政党は創価学会の目指す方向には賛成できないが、信仰そのものを否定しないという立ち場だが、日本保守党は、創価学会を戦後の国体破壊と洗脳政治の象徴とみなし極めて攻撃的だ。
たしかに参政党の憲法改正案は、復古主義的な文体や文学的表現に辟易するし、現行法制の保守的な価値観を不必要に強く定着を志向するものだし、現状において天皇陛下の権限をヨーロッパなみに拡大するのが必要な状況もないし、むしろ現皇室がリベラルな思考を持っていることを考えればむしろ保守派が嫌がる方向に流れる可能性すらある。
総合的に見れば、ただちに世界から民主主義から逸脱するとか、軍国主義復活といわれねばならないものでなく、日本保守党のような公然たる歴史修正主義に基づき日本と自由主義諸国との関係を破壊するというほどともいえないが、およそ国民に受け入れられそうなものでないというのが公平なところではないか。
そして、もっと現行憲法が日本政治の機能不全をもたらしている現実的な問題への対処はされていないし、安倍首相が目指したような実現可能な必要最小限の改正を遠のかせるものでもある。






