石破首相「御心ならばお用い下さい」:政治的不安定期を迎えた日本

ウィーンで日本の参議院選挙をフォローしていた。投票結果は大方が予想されていたように、与党自公民の過半数割れ、国民民主党と参政党の躍進で終わった。

ベッセント米財務長官の表敬を受ける石破茂首相、首相府公式サイトから 2025年7月18日

ドイツ語圏の代表的メディア、独週刊誌「シュピーゲル」(電子版)は20日、「参議院選で政権は一層危機に」という見出しで、「石破茂首相率いる連立政権は、昨年の衆院選で既に過半数を失い、少数与党政権だ。そして今回参議院選でも過半数を失った。日本は政治的不安定期を迎えており、専門家は政権交代の可能性も視野に入れている」という分析記事を掲載している。

また、「政府の長にとって、参議院選での敗北は都合の悪い時期に起きた」と指摘し、「米国との極めて重要な関税交渉に臨んでいる。決してこの交渉を台無しにしてはならない。国益の実現に全力を尽くすのは当然のことだ」と、石破首相自身がテレビ東京で述べたコメントを紹介している。ちなみに、世界第4位の経済大国である日本は、8月1日までに米国との貿易協定を締結しなければ、最大の輸出市場に制裁関税が課されることになる。

シュピーゲル誌は今回の与党の選挙敗北の理由として、「物価上昇」と「移民政策への不満の高まり」の2点を挙げている。そして「この恩恵を最も受けているのは参政党だ」と強調。デュースブルク=エッセン大学の政治学教授アクセル・クライン氏がDPA通信に「他の民主主義国と同様に、この排外主義的な政党は、民族主義的、修正主義的、そしてポピュリスト的な姿勢を前面に出し、古き良き時代への回帰を公約している」と述べたコメントを報じている。

ドイツは移民、難民の殺到で外国人問題への対応で苦しんでいる。シュピーゲル誌は「単一民族社会を誇る日本において、1億2400万人の人口のうち外国人はわずか3%に過ぎない。しかし、高齢化に伴う労働力不足を背景に、外国人の数は急速に増加している。昨年は前年比10.5%増の約380万人と、過去最高を記録した」と説明し、少子化社会の悩む日本での外国人増加問題に言及している。

日本の永田町の政界については全く無知だから、今回の参議院選の結果とその後の日本の政情分析はできない。ただ、プロテスタント系キリスト者の石破茂首相には退陣に追い込まれる前にどうしても取り組んで頂きたいテーマがある。

ズバリ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散請求問題の再考だ。首相はキリスト系メディアとのインタビューの中で、「防衛長官時代、自衛隊のイラク派遣を決めた時、キリスト信者たちから激しい批判の声が上がった。同じ信仰をもつキリスト信者からの批判が一番つらかった」と語っている。首相には「御心ならば、わが身をお用い下さい」(地の塩となれるように)という強い願いがあるという。その点、ローマ・カトリック信者で首相に選出された麻生太郎氏のように「日曜日礼拝に参加するより、ホテルのバーで一杯を」というタイプではない。

旧統一教会解散問題は安倍晋三元首相の暗殺事件を契機に、共産党系弁護士、左派メディアが実行犯の供述をもとに持ち出してきたテーマだ。メディアの圧力を受けた当時の岸田文雄首相は法の解釈を変えて旧統一教会の解散請求を持ち出した経緯がある。これは明らかに「信教の自由」を蹂躙している。旧統一教会信者の拉致監禁問題についても政府関係当局はこれまで沈黙してきた。

今こそ、キリスト者の石破首相(68)の登場が願われる。政治家として短い期間だったが頂点に就いた。その最後に有終の美を飾るため旧統一教会の解散請求問題を公開の場で審議して頂きたいのだ。与党内やメディア界で混乱と抵抗が出てくるだろうが、「御心ならば、お用い下さい」と祈って頂きたい。教会の日曜学校で教師も務められたことがある首相だからこそ、お願いするのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。