ハイブランドの頂点はルイ・ヴィトンよりもエルメス?

日本経済新聞電子版によれば、2025年1〜6月期の決算は仏エルメス・インターナショナルは増収となった一方LVMHは減益になり明暗が分かれました(図表も同紙から)。

しかし、この数字だけを見て単純比較はできません。

何故ならエルメスは1つの高級ブランドで売上を構成しているのに対し、ルイ・ヴィトンを包するLVMHはコングロマリットです。

ルイ・ヴィトン以外の中級ブランドやスピリッツ(酒類)の販売も手掛けています。

例えば、ディオール、セリーヌ、フェンディ、ロエベ、ブルガリ、ティファニーといった有名ブランドから、モエ・エ・シャンドン、ヴーヴ・クリコ、ルイナール、ヘネシー、ドンペリニヨンなどの良く知られたスピリッツ、さらにはDFS、セフォラ、ボン・マルシェなどもグループに抱えています。

「LVMH=ルイ・ヴィトン」ではないのです。

また、エルメスが9割以上の製品で値上げしたのに対し、ルイ・ヴィトンは4割に留まっています。記事が指摘するように、確かにルイ・ヴィトンを含めLVMHの客層がエルメスに比べ景気変動に左右されやすいのは事実です。

しかし、ルイ・ヴィトンもこの状況に甘んじることなく対策を取っています。

その1つがトランクへの注力です。ルイ・ヴィトンといえばバッグや財布・キーケースなど比較的低価格の商品が知られており、トランクは1部の店舗でしか取り扱いしていません。

価格も100万円を超えるものがほとんどで、中には数千万円の商品もあり、販売点数は少なくても利益率はかなり高くなります。

製造数も少なく手作りで、エルメスのバーキンのようなポジションをターゲットにしていると想像します。

過去の価格推移を見てもトランクは他の商品に比べ明らかに値上がり率が高くなっており、一気に2倍に値上げしたものもあるそうです。景気変動に影響されない価格弾力性低い別の顧客層になっています。

LVMHは企業規模が大きいだけに超富裕層だけをターゲットにしたビジネスに絞り込むことはできないと思います。すべての顧客層に商品提供をしながら超富裕層のような優良顧客を重視した商品戦略を進めていくのではないでしょうか。

t_kimura/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年8月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。