【めいろまさんインタビュー】日本の右派ポピュリズムは“健康”と“自己防衛”から始まる

今夏も日本に帰国された谷本真由美さん(@May_Roma)に、今回も海外からの視点で見た日本の現状や課題についてお話を伺いました。

― 日本の右派ポピュリズムと、欧米との違いについて教えてください。

はい。欧米と日本の右派ポピュリズムは、一見すると似たスローガンを掲げていますが、実は根本的な「被害者意識」の質がまったく異なります。

欧米では、「移民」「治安」「アイデンティティ」が主要な争点です。たとえばフランスのルペン、ドイツのAfD、イギリスのリフォームUK、アメリカのトランプ支持層などは、次のような主張を中心に展開しています。

  • 国境管理の強化や不法移民排除
  • 難民流入に対する治安不安
  • キリスト教的価値観の防衛
  • EUやメディアといった“エリート層”への反発

背景には、イスラム系移民との文化摩擦や治安の悪化、福祉財政の負担増などがあり、こうした「外からの脅威」への恐怖が、ポピュリズムの原動力になっています。

― 日本では、同じような“脅威”は感じにくいですよね。

 そうですね。だからこそ、日本のポピュリズムはやや異質です。

日本で目立つのは、「反ワクチン」「自然志向」「高齢者批判」など、一見すると政治とは無関係に見える要素です。たとえば参政党を支持する層には、「製薬会社は信用できない」「高齢者の社会保障ばかり優遇されている」といった不信や怒りが強く、それが政治的な態度に結びついています。

つまり、「外国人が治安を悪くする」ではなく、「制度や社会に置き去りにされた自分が、被害者だ」という感情が強いんです。

健康志向とポピュリズムの結びつき

― 健康志向と政治が結びついているというのは、意外な視点です。

この点はとても注目しています。

たとえば、郊外に移住した「意識高い系」の若者層がいますよね。彼らはオーガニック食品を選び、自然療法を好み、ワクチンに慎重です。

この層は、ピラティス教室や自然食カフェがある地域を好んで移り住みます。海老名や狛江といった都市近郊に、こうした傾向がよく見られます。そして、生活の選択がそのまま政治意識にもつながっていくんです。

― 参政党の主張と親和性がある、ということですか?

そうです。参政党は「反ワクチン」を正面に掲げているわけではありませんが、「体に入れるものは自分で選ぶべき」「自然回帰」「製薬会社を疑え」という文脈では一致します。

実はこれは反体制的な思想と親和性が高いものとなります。「自分の健康は自分で守る」という姿勢が、「国家に頼らない」「エリートを信用しない」という右派的な政治態度に変換されていくんです。

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SNSと「切り抜き」の時代に

 ― SNSの使い方も特徴的ですね。

 参政党は、TikTokやYouTubeショートのような短尺・視覚重視のコンテンツをとても上手に使っています。

短い時間で「ワクチンは毒」「日本人ファースト」といったインパクトの強いメッセージを届ける。これが、生活の中にすっと入ってくるわけです。

しかも「切り抜き動画」を使った収益モデルも構築していて、支持=拡散=収益という構造になっています。支持者が「自分も稼げる」ことで拡散が加速します。これは、従来の政党とはまったく異なるエコシステムですね。

新しい「保守層」のかたち

 ― 健康志向から、保守的スローガンに共鳴するというのは驚きです。

 一見リベラルに見える若者たちが、参政党の「日本人ファースト」「移民反対」「反グローバリズム」といった保守的な言葉にも違和感なく馴染んでいきます。その背景には、「自分の健康や生活を脅かすのは誰か?」という問いがあります。

その答えを「外国人」「政府」「グローバル企業」と見なす構造があり、それが新しい右派的な政治的な選好へとつながっています。

― いまの政治意識の変化についてひとことお願いします。

 かつて政治は、イデオロギーや社会階級の問題でした。でも今は違います。「食べ物に何を選ぶか」「どんな運動をするか」「何を信じて健康を保つか」といったライフスタイルが、そのまま政治的態度をつくり出しています。

つまり、「オーガニック食品を選ぶ」「ワクチンを打たない」といった行動が、やがて「日本人ファースト」「反グローバリズム」へと連なる。この流れを理解せずに、日本のポピュリズムは語れません。

動画もぜひご覧ください!(記事と内容が異なります)