
7月29日、農林水産省はコメ高騰の原因と農水省の対応を検証した調査結果を公表した。
小泉農相は「流通ルートの多様化」や「精米歩留まりの低下」などを要因に挙げ、調査の終了を宣言。
だが、この報告は「何が本当の原因だったのか」「誰が責任を負うべきなのか」という根本的な問いを巧妙にすり抜けている。
農水省の統計ミスから始まった
問題の発端は農水省統計部がコメの作況調査を誤り、主食用米の供給量を間違えたことだ。

しかし、主食の根幹を担う数値を間違っても、「ごめんなさい」とは認められないのが農水官僚の体質だ。
「統計局」の誤りを組織ぐるみで隠すため、コメの需要情報を司る「農産局」が“作文”を行い、江藤元大臣に「コメは足りている!」と発言させた。
一連の作為的な情報提供と世論誘導のはじまりだ。
責任転嫁の“消えたコメ”21万トン
コメ不足の現実が隠しきれなくなると、今度は一転して「消えたコメ21万トン」と喧伝を始める。
コメを隠し、値上げさせているのは業者や農協だと悪者に仕立てあげ、国民の関心をそちらへ逸らしながら、需給情報の帳尻を合わせてきた。
この間、隠蔽工作によって組織を守った農産局の担当課長は、その“功績”によって人事上の出世で報われる。
これが農水省の内部事情だ。
“隠蔽工作”と”改革演出”に都合のよい小泉農相
やがて帳尻合わせも限界を迎える中で、江藤大臣の失言が引き金となり、小泉新農相が就任。
前任者よりも操りやすく、「農業改革」風を演出しやすい小泉氏の登場は、官僚にとって朗報だった。
統計部長はすぐさま動き、小泉農相に「作況指数の廃止」と「衛星・AIを用いた新調査への見直し」を発表させた。
作況調査の誤りを有耶無耶(うやむや)にしたまま、“改革路線”を装うことに成功した格好だ。
原因調査も「責任回避」で着地
さらに、コメ高騰の要因や農水省の対応を検証する調査を「大臣肝煎り」風に立ち上げた。7月29日は発表した結論は、省の責任を回避できる内容に着地させた。
調査担当者に電話取材したところ、コメ高騰の最大要因として「流通ルートの多様化」、とくに「農家の直売増加」を挙げた。
その主因は、2025年・2026年の2年連続の不作による供給不足だが、農水省はいまだにその基本すら認めようとしない。
この期に及んで「農家の直売が増えたせい」とコメ農家に責任転嫁する。
作況指数「101」で平年並みとした公式発表の建前を崩せず、誤りを認められない官僚の体面維持が優先されているのだ。
7月30日の食糧部会でも、問題の本質を覆い隠したままだ。
小泉農相に「需給変動に対応可能な増産体制へ」と改革風な発言をさせるなど、増産をキーワードに新たな“コメ不足解消”ストーリーへと世論誘導を開始した。
“自作自演”の濡れ衣を、なかったことに
コメ高騰原因と農水省の対応検証調査の結果としては、農水省は「コメの目詰まりは確認されなかった」と総括し、あたかも中立の立場から誤解を解いたかのように装った。
だが、“消えたコメ”疑惑に端を発した「流通の目詰まり」説そのものが、もともと農水省自身の誘導によって生まれた“自作自演”である。
そのうえで小泉農相に「見直すべきは見直す」と発言させ、反省のポーズだけで体裁を整えた。コメ高騰の犯人扱いをしてきたコメ業界への謝罪もその責任の所在も曖昧にしたままだ。
これがコメ高騰問題の農水省の対応に関する検証結果である。
こうして、責任追及をすり抜けながらも、間接的に“コメ業界は冤罪だった”と対応した感をかすかに漂わせることで、官僚は静かに失態の幕引きを進めているのが現状だ。
隠蔽プレーの最後の舞台装置
そして、統計官僚と農産官僚が連携する隠蔽プレーの神輿に乗るのが、“裸の王様”と化した農水大臣という構図である。
その幕引きの最終章こそが、「コメの安定供給に向けた政府の関係閣僚会議」である。石破首相が議長、小泉農相が副議長を務め、コメ高騰問題の検証と今後のコメ政策の方向性が決められる場だ。
農水省は来週、この会議に「コメ高騰の原因調査」を提出する予定だ。
最初から結論が決まっていた“責任不問”のアリバイ調査の報告が終われば、“官僚の無謬性”が公式化され、晴れて無罪放免となる。
農水省にとって勝利の日であるが、国民には何の意味もない。
参考文献:












編集部より:この記事は、浅川芳裕氏のnote 2025年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は浅川芳裕氏のnoteをご覧ください。






