自民党両院議員総会の議題設定をめぐる駆け引き

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8日に開催される自民党両院議員総会は、党の重要な意思決定機関として注目を集めている。しかし、各メディアの報道によると、党事務局から「総裁の身分に関する決議は出せない」という注意喚起がなされており、反石破勢力にとっては制約の中での戦略的な議題設定が求められる状況となっている。

制約の中での戦略的アプローチ

さすがに議題に「石破首相の責任を追及する議案」を直接的に出すことは現実的ではなく、もともと無理筋な話である。そこで重要になるのは、総裁の身分に直接関わらない範囲内で、いかに間接的に現体制への問題提起につながる議題を設定できるかという点だ。

政治的戦略の観点から考えると、直接的な首相解任や総裁選前倒しを議題にできない制約がある中で、以下のような間接的なアプローチが有効と考えられる。

党運営・組織改革の視点では

「党の信頼回復と組織改革について」「党執行部の責任体制の見直し」「党運営の透明性向上に関する検討」といった議題が挙げられる。これらは一見、建設的な組織論に見えるが、議論が深まれば自然と現執行部の在り方への疑問が浮上する構造になっている。

政策・方針の見直しという切り口では

「現政権の政策検証と今後の方向性」「党の基本政策の再確認と見直し」「国民の信頼回復に向けた政策転換の検討」などが考えられる。政策論議を通じて、現体制の政策運営能力への評価が問われることになる。

選挙・政治情勢への対応としては

「次期選挙に向けた党の体制整備」「世論動向を踏まえた党運営の在り方」「党勢回復のための緊急対策」といった議題も効果的だろう。選挙での勝利という党の至上命題を前面に出すことで、現体制での戦えるかという根本的な問題提起が可能になる。

これらの議題設定において重要なのは、「信頼回復」「責任体制」「刷新」といったキーワードの戦略的な活用である。これらの言葉は、表面的には前向きな改革提案に見えるが、裏を返せば現在の体制に問題があることを暗示している。議論の過程で自然と現執行部への評価や責任論、さらには党の刷新の必要性といった話題に発展する可能性が高い。

敗因分析の論点整理と反対派の戦術

まず重要なのは、参院選敗因の正確な分析である。政治と金の問題、統一教会の問題を曖昧にしたことが選挙大敗につながっているという論調があるが、これは的外れな分析だろう。この2点が問題となり有権者がそっぽを向いたのであれば、野党第一党の立憲民主党の票が増えているはずである。

しかし、自民党と立憲民主党の両党ともに票を落としている。つまり、敗因の本質はこの2点とはまったく異なるところにある。このことを議論の冒頭で明言することが、建設的な総括への第一歩となる。

司会進行役は有村治子両院議員総会長が務めることになるが、首相側がイニシアティブを握ることを考慮すると、反対派も相応の作戦を練る必要がある。議事進行をコントロールされる可能性があるため、反対派の急先鋒で名前が通っている議員(例:茂木敏充氏や西村康稔氏)などが先手を打つ必要もあるだろう。

これらの有力議員が議論の初期段階で的確な問題提起を行い、流れを作ることができれば、他の議員も発言しやすい雰囲気が醸成される。逆に、執行部側が議事進行を巧みにコントロールし、建設的な議論の範囲内に収めてしまえば、反対派の狙いは不発に終わる可能性もある。

こうした政治的駆け引きには、表面上見えない様々な思惑や利害関係が複雑に絡み合っている。単純な石破支持・反対の構図だけでなく、各派閥の思惑、個々の議員の政治的立場、将来への布石など、多層的な要素が影響する。

実際の効果は、党内の力学や当日の政治情勢によって大きく左右されることになるだろう。反対派にとっては、制約の中での知恵比べとなり、執行部側にとっては議事運営の手腕が問われる場となる。8日の両院議員総会は、自民党の今後を占う重要な政治的試金石となりそうだ。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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