旅行前にレビューを見てはいけない

黒坂岳央です。

筆者はほぼ毎月のように旅行や出張で全国を飛び回る生活を送っている。この夏だけで東京、北海道、沖縄、大阪、福岡とあちこち飛び回った。

自分が気を付けているのは、ホテルやテーマパークを選ぶ際に行く前にレビューは見ないようにしていることだ。普通は逆で、入念にレビューを見てから行き先を決めるだろう。

なぜか? その理由はレビューはバイアスを受けることで、意思決定を誤らせることが多いからだ。もちろん参考になるレビューも一部あるが、そうでないものが多いのであまり参考にしない方が良いと思っている。

bymuratdeniz/iStock

レビューは不満ほど目につきやすい

サービス業に携わった経験がある人ならわかると思うが、顧客がわざわざ声を上げるのは、期待を裏切られたときや不満が溜まったときである。

筆者はかつて、有名テーマパークの開業直後に派遣社員としてコールセンター業務を担当したことがある。その際、お問い合わせの大半はクレームであった。

「食事がおいしくない」
「待ち時間が長すぎ」
「スタッフの対応が悪い」
「年間パスが使いづらいから解約したい」

こうしたものだった。電話を受ける側からすると「このテーマパークは失敗なのではないか?」とさえ思ったほどだ。

だが実際には、来場者の多くは普通に楽しんでおり、今や日本を代表するテーマパークとして賑わいを見せている。「楽しかった」「問題なかった」という人はわざわざコールセンターに電話をすることはなく、結果として、聞こえてくる声はネガティブなものに偏る。

レビューサイトを見ることも、まったく同じ構図である。ネガティブな意見ほど目立ちやすく、しかも人間心理として悪い情報の方が強く記憶に残りやすい。

悪いレビューは投稿時期を見よ

特に当てにしてはいけないのが、「サービス開始直後のレビュー」である。

ホテル、テーマパーク、レストランのいずれも開業当初というのは、オペレーションがまだ安定しておらず、予想以上の入場者数でキャパシティが追いつかない。スタッフも現場に慣れていないため、至らぬ点が出るのは当然である。

そんなことは行く前に誰にでもわかる。それにもかかわらず、開業直後に訪れた利用者は「混雑していた」といった不満を書き込む。混雑が嫌なら自分が行くタイミングをズラせばいい話だ。

筆者は今年、北海道に長期滞在をした際にニセコやトマムのホテルを利用したが、非常に素晴らしい体験であった。ところが帰宅後にレビューを確認すると、検索候補には「ホテル名 最悪」と出てきて、冒頭に表示されるレビューも「開業直後の酷評」に集中していた。

だが実際には、どこのレストランも効率的に回っており、ピーク時間を外せば待ち時間は5分ほど。スタッフもすれ違えば必ず笑顔で挨拶してくれ、サービス水準に何の不満も抱かなかった。直近日付では苦情はほとんど見られないことからも、ホテル側の努力で問題は改善されたように思える。

もし自分が事前に入念にレビューを読んでいたら、おそらく強い不安を覚えてこのホテルを候補から外していただろう。感情的に書き込まれた不満のレビューとリアルの大きな乖離を感じるのだ。

SNSなどでも開業直後のサービスに「行ったことも体験をしたこともない」のにアクセス稼ぎの道具に使う目的で、ダメ出しばかり言う人が多い。特に日本は海外に比べて悪いレビューをする人が多いことで知られており、新作ゲームなどでは海外ではコメント欄が開放されているのに、日本語は閉じられていることからも「クレーマー気質」が現れている。

そのため、SNSでの評判もなるべく行く前には見ない方がいい。行ってみると実態は全く違う事が多いからだ。

「味と接客」は特に当てにならない

レビューの中でも特に信頼できないのが「料理の味」や「スタッフの対応」に関する記述である。

筆者が宿泊したホテルでも、「味が良くなかった」と酷評されていた場所が非常に満足できる食事を提供してくれた一方、「料理が素晴らしい」と絶賛されていたホテルでは、自分にとっては思ったほどではなかったこともある。味覚や食事の好みは個人差が極めて大きいため、レビューを真に受けるのは危険である。

接客も同様である。ニセコの外資系ホテルで「外国人スタッフばかりで不快だった」という書き込みを見かけた。行ってみると確かに現地はホテル利用者もスタッフも外国人ばかりで、英語と中国語しか聞こえてこない。「日本人は自分たち家族だけなのでは?」と思えるほどであった。

外国人が多いというのは確かに正しい。だが不快に感じるかは人を選ぶ。実際にスタッフの多くは非常に好感の持てる笑顔で対応してくれるし、利用者も物静かでマナーよく過ごしており全く不満は感じなかった。むしろ、その前に宿泊した有名な老舗の高級旅館の日本人スタッフの接客の方が気になる場面があったほどである。

つまり「誰にとっての良し悪しなのか」という主観的要素が大きく、こんな変数が多い要素をあてにして意思決定をするべきではないのだ。

以上の理由から、筆者は旅行や出張の際にレビューを見ないようにしている。開業から数年後、現場でPDCAが回りサービスが安定してから、自分の目と体験で判断するのが最も合理的である。他人の感情的な書き込みに振り回されるのではなく、自らの体験を信じるべきだろう。

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著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。