西側諸国が「うらやむ」中ロ朝の再結束:安全保障上シビアな状態になる日本

中国、ロシア、北朝鮮の首脳がそろい踏みしたのは66年ぶり。抗日戦争勝利80年記念式典に出席したプーチン氏と金正恩氏が習近平氏を囲む姿の写真や動画は世界で報じられました。また金正恩氏が習近平氏と会うのも6年ぶりとあり、一時不仲説や北朝鮮放置説もあった中で今回の結束は写真以上の意味があると見ています。

クレムリンHPより

一般の方からすれば「へぇ」ぐらいにしか思われないかもしれませんが、外交や国の政策を考える立場の人たちからすれば「ついにこの日が来たのか」という感じではないでしょうか?

先日書いた民主主義と権威主義の話に近いかもしれませんが、中国とロシアは陣営作りを時間をかけて着実に進めてきており、それはより大きく、そしてより強化しつつあるように感じます。BRICSやら一帯一路といった政策のみならず、うがった見方をすればロシアが仕掛けたウクライナへの攻撃は陣営が自然に強化される戦略だったともいえ、それは今のところ、見事に機能しているように見えます。

ウクライナを攻める⇒西側は経済制裁⇒中ロ陣営の結束強化⇒アメリカが中国の踏み絵を迫られる新興国、という流れを作ります。そしてグローバルサウスという体の良い言葉が出来ましたが、私から見れば新興国はアメリカ、中国どっちつかずで「いいところどりをしよう」というもの。これに対してアメリカと中国はアメ玉で自陣への囲い込み作戦をします。

ではアメリカのその作戦はどうだったか、これはこのブログで何度も書いているようにモンロー主義的なアメリカ御都合主義が前面に出てしまい、西側陣営の結束が緩んでしまったのではないでしょうか?特にトランプ政権は真逆に近い関税政策で新興国はやむを得ない選択を迫られました。G7でも進歩的な会議にはならず、体裁だけを整えるような成果を伴わない状態にあります。

ではトランプ氏だけが悪いのか、といえばそうとも言えません。欧州はかつては一枚岩でした。今ではその岩はひび割れどころか、剥がれつつあるし、各国とも自国のことで精いっぱいというのが見て取れます。その代表格がフランス。バイル首相の辞任は避けられず、再びいばらの首相選びのプロセスに入ることが濃厚になっています。マクロン氏の人気低下もさることながら手腕にも疑問符がつきます。それでも本人は任期満了まで辞める気はなく、野党では極右と左派が手を組むという同床異夢で子供でもおかしいと思う見せかけ政治が展開しています。

各国の政権ないし首脳支持率はフランス15%、ドイツ24%、英国24%と低迷しており、どこの国も政権運営に苦慮という状況です。これでロシアにどうやって立ち向かうのか、NATOどころの話ではないわけです。同じ話は日本でもいえることで、直近の展開は第一党である自民党の存続の道とか解党的出直しとか、要は巨大政党の自壊と野党による囲い込みで「半年後の日本の首相って誰だろうね?」という質問に対してコメンテーターですら答えられない状況にあるのです。

タイトルに「西側諸国がうらやむ」と書きました。「そんなわけないだろう」という反論もあると思いますが、私は結束という点だけに限れば「うらやむ」なのだと思います。

日本は特にこの三者が固い握手を交わしたことに繊細になるべきだと思います。この三国が日本の北、西、南の三方を押さえると日本と韓国は東の海にしか抜けられない実質的な囲い込みとなるのです。もちろん、私は近い将来、日本が戦争に巻き込まれるなどとは考えていません。但し、国防上も安全保障上もなかなかシビアな状態になるだろうとみています。

トランプ氏が金正恩氏と年内に会おうという画策があります。私から見ると「何のために?」という疑問府はつきます。話題作りならそれで結構です。金正恩氏はプーチン氏に巻き取られ、習近平氏との関係再構築と経済援助が見込まれる中、トランプ氏がどれだけ甘いディールを持ち込んでもそう簡単になびくことはなさそうです。2000名近い北朝鮮兵士が戦場で命を落とした代償とはロシアとの絶対的な関係強化でしょう。

外交の悩みは尽きないと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年9月5日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。