魔法の言葉術:酔っ払いオヤジのひと言が人生を変えた夜

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「早く大人になりたい」

著者の娘(当時12歳)がそう言った時、正直、耳を疑ったそうだ。

だって、そうでしょう? 今どき、そんなこと言う子どもがいる? X(旧Twitter)でも「大人つらい」「社畜乙」みたいな投稿ばかり流れてくるし、電車で見る大人たちの顔は死んでる。朝の山手線とか、もはやゾンビ映画だ。

で、娘は続けた。

「だって、パパとママは楽しそうだから」

……泣いた。いや、泣いてない。目にゴミが入っただけだ!と言う。

母と娘の関係を変える魔法の言葉術」(松谷英子 著)WAVE出版

高校生に「公務員」と言わせる国の末路

本書『母と娘の関係を変える魔法の言葉術』に、ゾッとする話が出てくる。

高校3年生の男子6人に「将来何になりたい?」と聞いたら、5人は「特にない」。で、1人だけ「公務員」。理由を聞くと「親が楽だって言うから」「定年まで我慢すれば退職金もらえるから」だってさ。

18歳だぜ? 人生これからって時に、もう「我慢」と「退職金」の話。

いやね、公務員が悪いって話じゃない。立派な仕事だ。でも「楽だから」って理由で選ぶ仕事に、どんな情熱を注げるっていうんだ。その子の親も親だ。自分の子どもに「人生は我慢」って教えて、それで満足なのか。

で、松谷さんの旦那さんが面白い。

「公務員の退職金、2000~3000万くらいかな」って教えた後で、「でも君たちが本気で頑張れば、それくらい1年で稼げるかもよ」って。「会社作ってもいいし、世界に出てもいい」って。

高校生たち、最初はポカーンとしてたらしい。そりゃそうだ。学校じゃ教えてくれないもん、そんなこと。

でもね、その中の1人は数年後、マジで海外に行った。「あの時、松谷の家に泊まらなかったら、海外なんて考えもしなかった」って言ってるらしい。

たった一晩の、酔っ払いオヤジの戯言(かもしれない)が、人生変えちゃった。

好奇心を殺された大人たちの哀れな末路

松谷さんが指摘する「好奇心を失った大人」の特徴が、もう、痛すぎて見てられない。

・他人の可能性を信じない
・大きな夢をバカにする
・人の目ばかり気にする
・挑戦しない
・変化を嫌う
・政治に無関心だけど文句だけは言う

……あ、これ俺の上司だ。いや、違うか。俺もちょっと当てはまる。やべぇ。

でもさ、これって個人の問題じゃないんだよね。子どもの頃から「余計なこと考えるな」「普通でいろ」「目立つな」って言われ続けた結果でしょ。

昨日、コンビニで小学生くらいの子が母親に「なんでレジの人は立ってるの?座ればいいのに」って聞いてた。母親は「うるさい、黙ってなさい」。

その瞬間、あの子の好奇心が一つ死んだ。

松谷さんの娘、15歳で「早く選挙に行きたい」「教育制度を決めてる大人を選び直したい」って言ったらしい。

すげぇな。俺が15歳の時なんて、「モンハン」のことしか考えてなかった。

でもこれ、親が「政治なんて汚い」とか「どうせ変わらない」とか言ってたら、絶対こんな発言出てこない。子どもは親の背中を見てる。親が社会に絶望してたら、子どもも絶望する。当たり前だ。

最後に(いや、まだ続くかも)

松谷さんは「いろんなタイプの大人を見せろ」って言ってる。これ、マジで大事。

成功してる大人も、失敗してる大人も、楽しんでる大人も、苦しんでる大人も、全部見せる。その上で「お前はどう生きたい?」って問いかける。

答えなんか出なくていい。問い続けることが大事。

「なにがしてみたいの?」
「いつでも気持ちを聞かせてね」

こんなシンプルな言葉でいい。

……って、偉そうに書いてるけど、俺、子どもいないんだけどね。

でも、姪っ子には言ってやろうと思う。「お前の人生、お前が決めろ」って。「公務員もいいけど、YouTuberもいいし、起業家もいい。なんなら、全部やってもいい」って。

無責任? うん、そうかも。でも、「我慢して生きろ」って言うよりマシだろ。

子どもの可能性は無限大。それを信じられない大人にだけは、なりたくない。

いや、もうなってるかも。やべぇ。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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