今週、日米で金融政策決定会合があります。大方の予想ではアメリカは0.25%の引き下げ、日本は現状維持で、ここはさほど疑念はありません。問題はそれぞれの議長、総裁がその後の記者会見で何を述べるかにかかっています。
日本については利上げしてもよい環境にあるのですが、自民党の総裁選、ひいては次の首相の行方を占う時期に入っており、金融政策の変更をするには芳しい時期ではないと見ています。更に首相が決まる10月以降に再度利上げする機運が出たとしても仮に新首相が自らの信任を問う解散総選挙を行うとすればこれまた政治の不安定化とみられ、利上げするタイミングは逃すのかもしれません。個人的には年内にもう一度上げたいというが植田氏の本望だろうと思いますが、すべては政治日程が絡んでくるのでしょう。その点においては金融政策だけを見れば日本の株価にはさほどネガティブにはならないと思います。

植田和男日銀総裁 日銀HPより
一方、政治そのものが読みにくいのでサプライズがあるかどうかは気になるところであります。ただ、サプライズと言っても総裁選に名乗りを上げているのは「いつもの5名」で、本命の2人を中心に展開するのだと思うので前回の総裁選の時のように「あぁ、石破氏か」といった程度のサプライズ感ではないでしょうか?となればそれで株価全体にどこまで響くかといえば微妙だと思います。
一方、アメリカについては「更なる利下げがあるのか」が最大の注目ポイントになります。パウエル氏がヒントをくれるかどうかですが、私の読みは「インフレ率はFRBの想定よりやや高いところにある一方、雇用が弱含みしており、今後の政策については慎重にデータを見ながら判断していくことになる」といった趣旨を述べるにとどまる気がします。つまり議長からの明白なフォワードガイダンスは聞こえてこないと思います。とはいえ、年内もう一度利下げの催促相場になるかもしれません。
こう見ると金融政策についてはまずまずのところに収まりそうで、あとは株価に刺激を与える何かが起きるかどうかがポイントになります。
個人的にはトランプ氏の変身ぶりに着目しています。今週の金曜日に習近平氏と電話会談が予定されており、主題はTikTokの処理問題で、政府の実務レベルで決着がついたようなのでその確認が行われるのでしょう。またトランプ氏がアメリカに中国人学生60万人を受け入れると述べています。これは身内のMAGAからの猛反対に対して「2年で60万人だ」「アメリカの大学の15%が無くなってもよいのか?」と述べた点において自国で膨れ上がった中国依存の体質がそう簡単に除去できないことを如実に物語っているとも言えます。つまり思った以上にトランプ氏は中国を厚遇するのではないか、という気がしているのです。
私はもうひとつの戦略を見ています。それは対ロシア政策においてロシアと中国の結びつきを考えるとアメリカは中国を敵に回すより寝取ってしまう戦略に切り替えたとしたらどうでしょうか?もちろん中国はそれに簡単に引っかからないのですが、米中間の各種経済制裁を少し和らげるだけで株価にはプラスになるのです。
ではお前が以前から気にしている秋の落とし穴は何か、であります。落とし穴なので誰もわかりません。私も予想はできません。ただ、きな臭さがあるとすれば戦争絡みではないかと思います。1つはロシアが本気でバルト三国や旧東欧地域にちょっかいを出し、欧州をかく乱させ、NATOが動く事態になること、もう1つはイスラエルが無謀な領土拡大政策を行い、アメリカにさえも袖にしてしまうリスクです。私にはプーチン氏もネタニヤフ氏もメンタル的に壊れているとしか思えず、引くに引けない状況に陥ってしまった気がするのです。よってこの2人が主導する戦争では何が起るか全く想定できないのであります。
更に危険だと思うのは他の指導者たちが両名の説得をギブアップしつつあることです。プーチン氏に面と向かって「いい加減にせよ」というプレッシャーを与える国家首長は少なくなりました。ネタニヤフ氏においてはトランプ氏にすら本心を見せているのかさっぱりわからず、仲介の労を取ったカタールのドーハをハマス幹部がいると称して攻めてしまうところなど狂気の沙汰と言ってもよいと思います。
株価に死角はないのか、と言われると心地よいそよ風が市場に吹き続けていることは事実ですが、いつまでもそれが続くわけではないということはしっかり認識すべきことかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年9月16日の記事より転載させていただきました。






