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トランプ大統領の今後の外交予定を報道からまとめると、クアラルンプールでのASEAN関連会議(10/26-28)を経て、日本を訪れ(10/27-29)、韓国慶州で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(10/31-11/1)に出席し、そこで習近平氏と会談するようである。
他方、10月28日に予定されている高市氏とトランプ氏の初めての会談について、米メディア『Newsmax』は『AP』電を引用して以下のように伝えた。
彼女(高市氏)は、トランプ大統領が国際会議に出席するためアジアを訪問する予定の中で、今月下旬に同大統領との首脳会談を主催する可能性があり、新たな大きな試練に直面することになる。
筆者の考えはまったく違う。高市新総理の外交日程もトランプと同じく、クアラルンプール⇒東京⇒慶州になるが、むしろ高市氏は「3度もトランプ氏と会談できる」と思っているはずだ。こうしたタイミングに総理総裁に選ばれたことは、彼女にとって「大きな試練」どころか「僥倖の極み」なのである。
その高市氏には、その前に一つ大事な日程がある。10月17-19日に営まれる靖国神社秋季例大祭だ。春と秋の例大祭には、天皇陛下の勅使が毎年参向して、陛下からの供え物(御幣物)が献じられ、御祭文が奏上される。欠かさず秋季例大祭に参拝してきた高市氏は、今年も同じようにするだろう。
そこで本題だが、高市氏はトランプ氏を靖国神社にお連れしてはどうか。それには昭恵夫人にも一肌脱いで頂き、高市新総理が誕生したら直ぐに、夫人からトランプ氏にそれを持ち掛けてもらうのだ。もちろん靖国には、高市氏と昭恵夫人とトランプ氏、3人が「打ち揃って」参拝するのである。
「打ち揃って」と括弧書きにしたのは、21年2月に「期待したい安倍・トランプ打ち揃っての訪台と訪朝」と題した拙稿を書いたことがあるからだ。そこで筆者は、ニクソン訪中や小泉訪朝を例に挙げて、「国のトップによる電撃訪問は後の歴史を変えるだけの大きなインパクトがある」と記した。
ガザや印・パやカンボジア・タイなどの紛争では影響力を行使したトランプ氏だが、プーチン氏や習近平氏が相手だとなかなか思うようにはいかない。それは両国が核を保有する軍事大国だからだが、弱みの知れているロシアには進めつつある二次制裁の手がある。が、輸出入でも大国の中国は始末が悪い。
大豆の輸入先をブラジルとアルゼンチンに切り替えて、この半年ほど米国を干している習氏に手を焼くトランプは、8月に300億ドル(約4兆4200億円)を記録して、年50兆円にもなりそうな関税収入の一部を大豆農家への補助金に充てる一方、AUKUS強化のため豪州への原潜供与に舵を切った。
トランプ氏の靖国参拝が、韓国での習氏との会談にどう影響するかは判らない。が、トランプ氏に先手を打って靖国神社の由来を説いておくことは、日本にとって、高市氏の例大祭参拝をトランプ氏との会談で話題にする可能性のある習氏に対する、何らかの牽制になるのではなかろうか。
安倍氏とトランプ氏の初顔合わせは、大統領就任前の16年11月17日夕刻(現地時間)だった。翌年2月に新大統領との公式会談のため訪米した際、「シンゾー」はアーリントン墓地を訪れて献花した。このことをトランプ氏は必ず覚えている。その間の16年12月28日には、オバマ大統領と共にパールハーバーを訪れ、こう演説した。
オバマ大統領、アメリカ国民の皆さん、世界のさまざまな国の皆さん。私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々のみ霊に、ここから始まった戦いが奪ったすべての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった数知れぬ無辜の民の魂に、永劫の哀悼の誠をささげます。
その安倍総理の靖国参拝を、アフガンから遺体で戻った13人の将兵を時計を気にしながら迎えたバイデン大統領は副大統領当時、キャロライン・ケネディ駐日大使に指示して非難させた。が、これに比べてトランプ氏の軍人に対する尊敬の念は極めて強い(徴兵逃れへの贖罪ともいわれるが)。
昭恵夫人や高市氏にはこうした経緯をトランプ氏に語り、「シンゾー」を思い出させるのだ。拉致被害者に対する対応を見ても、トランプ氏は情に厚い。昭恵夫人と「高い見識と強さを兼ね備え、非常に尊敬される人物」とTruth Socialに書き込んだ高市氏の要望なら、存外簡単にOKを出すかも知れぬ。