期待したい安倍・トランプ打ち揃っての訪台と訪朝

2021年02月01日 06:00

ここ半世紀での国家トップによる電撃的な外国訪問といえば、72年のニクソン訪中にまず指を折る。当時はニクソンやキッシンジャーのみならず国際社会も、これを契機に共産中国がいずれ民主化すると信じていた。が、果たして韜光養晦の鄧小平は経済だけを解放、今日のモンスター国家を生んだ。

LorenzoT81/iStock

拉致被害者の一部救出に成功した小泉総理の電撃訪朝(02年)も、日本人にとってはニクソン訪中以上に驚きの出来事だった。歴史を振り返れば、このような国のトップによる電撃訪問は後の歴史を変えるだけの大きなインパクトがある。

今後、期待したいのが安倍・トランプによる台湾と北朝鮮への電撃訪問だ。共産中国によるウイグルや香港などでの人権蹂躙と武力による台湾への威圧は、今や当事者と国際社会の受忍限度を超える。北朝鮮での人権侵害と他国への核・ミサイルの脅威も永らく国連の制裁対象だ。

共産主義政党による一党独裁の支配体制が変わらない限り、両国による人権侵害と武力による他国への脅威はなくなるまい。国際社会による台湾の国家承認は中国民主化の契機となり得るし、北朝鮮民主化は金正恩の心変わりを促すことしかない。両者とも元首の立場こそ退いたものの、在任中の外交実績を鑑みると、安倍・トランプの電撃訪問はどちらにも有効だ。

台湾

中国は先般の新法で海警局を軍隊に準じる組織にした。東シナ海や南シナ海で権勢をほしいままにする狙いだろう。が、そこには我国固有の領土たる尖閣諸島があり、一度たりとも支配を受けたことのない中国から一方的にその核心的領土の一部と見做される台湾があり、また数多くの諸島や岩礁がある。

南沙諸島はオバマ政権が拱手する間にたちまち埋め立てられ、習近平が「そうはしない」と明言した軍事基地になった。フィリピンの訴えを認めたハーグ常設仲裁裁判所裁定(16年7月)を、中国は「紙屑」と唾棄した。ウイグル人権弾圧を強行規範の一つとされる「ジェノサイド」と断じたトランプの置き土産も同様に形容した。

バイデン政権は尖閣に安保条約5条が適用するという。が、「共助」の前に日本の「自助」が必要だ。ところで、中国が尖閣を我が物と主張する根拠は、専ら台湾をその一部としているところにある。李登輝は15年に「尖閣は日本のもの」と明言したが、それは台湾政府の正式見解でない。

だが日本が国際社会に先んじて台湾を国家承認し、米国を巻き込んで今や民間人となったトランプと総理から一議員となった安倍さんとで台湾を訪れて、蔡英文に直にそれを伝えたとしたらどうだろうか。蔡政権が李登輝の尖閣の見解に合わせることは大いにあり得る。すでに台湾はモンテビデオ条約が謳う独立国としての要件のすべてを具備している。

北朝鮮

現下の朝鮮半島情勢は南も北も尋常でない。青瓦台のやることなすことが支離滅裂なのはご承知の通りで、いちいち触れたくもない。文在寅の薄気味悪い日本へのすり寄りの裏には、北がその気になるかどうか判らないオリンピック共同参加よりも、バイデンが当時、副大統領として噛んでいた15年の日韓慰安婦合意を蔑ろにしたことを米新政権から攻められることへの恐怖があると見るべきだろう。

とはいえ文の数々の失政も韓国民の生命には関らない。が、生き死にの問題に至っている北朝鮮経済の疲弊は、金正恩が(嘘でも)泣くところにまで来た。識者に依れば、コロナ蔓延、国連の制裁監視強化、中国との輸出入急減等々で配給もなくなり、命綱の闇市の品や上がりをかすめ取る官憲や軍人が、市民の闇打ちに遭う有様とのこと。

それでも正恩はバイデン政権への強硬姿勢を打ち出し、夜間の軍事パレードでそれを演出した。血を流すのを好まないトランプの見掛けの上での交誼に甘えてところへ、思いがけない政権交代で、そもそも無い正気を更に失ったようだ。が、そんな虚勢は誰もがお見通しで、正恩も自覚していよう。

この状況にこそ安倍・トランプの出番がある。小泉訪朝に同行した安倍副官房長官は、正恩の父正日と会った。盗聴を承知の控室で一芝居打ち、拉致を認めさせて拉致被害者の一部救出を実現した。約束だからと被害者を北に戻そうとする外務省某審議官に断固反対もした。断固筋を通す安倍の姿勢を正恩は知悉しているだろう。

トランプはといえば、18年6月のシンガポール、19年2月のハノイと6月の板門店で正恩と3度も談じ込み、拉致被害者の解放を迫りもした。Little Rocket manとの蔑称を引っ込め、「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の包容力で、日韓で費用を負担する非核化や改革開放を求めつつも、制裁を少しも緩めなかったこと(権限は飽くまで国連にあるが)は本欄にいく度か書いた。

正恩が今日の困難に陥った主な原因の一つが、文の口車に乗せられて大失敗に終わったハノイ会談にあることは明らかで、文への恨みはその時のものだ。ここへ来て文による北への原発建設疑惑も浮上した。もし事実なら、この口約束の不履行も正恩の文への怒りの原因か。

国連の制裁や監視がある以上、核とミサイルを始末し、人権蹂躙をやめない限り、中国といえども北への目立つ支援は難しい。日本にすがって拉致被害者を全員返せば、相応の経済支援は出来ようが、日本も国連の経済制裁の枠は越えられない。米国の懐にトランプを通じて入るしかないということだ。

理屈上は、第3回国連総会(48年)が大韓民国を朝鮮唯一の合法政府と認め、65年の日韓基本条約でもそう確認したので、日本からの有償無償5億ドルは北の分も含む。よって韓国が応分を北に渡すべきだが、拉致被害者全員が戻り、かつ核が廃棄されて国連制裁が解かれるなら、日本が何らかの名目で支援することを国民は妨げまい。

問題の一つは、金王朝を北の国民が許すかどうか。正恩が昭和天皇のポツダム宣言受諾時のように「米国が許しても国民が許さぬなら意味がない」と我が身を国民に差し出せる信頼関係はなかろう。米国への亡命しか途はあるまいと筆者は考える。

こう考えると安倍・トランプが斯く動いた結果に国際社会(中国とその属国以外の)が賛同する時、台湾と北朝鮮の問題が解決する可能性がかなり高い。恩讐を越えてバイデンがトランプにその大役を託すなら、米国の分断解消にも資する。内政で手一杯の菅総理も安倍さんを頼るべきだ。

日本による台湾と朝鮮の統治に国際法上の瑕疵はない。が、日本の敗戦と米国主導の対日講和によって、台湾の法的地位が未確定となり、朝鮮が南北分断されたのは厳然たる事実で、両方の問題で負わねばならぬ結果責任が日本と米国にはある。早期に安倍・トランプが動くことを期待する。

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