米大陪審、コミー氏に続きレティシア氏を起訴

先の拙稿「米大陪審が起訴したコミー元FBI長官の嫌疑」で筆者は、トランプ大統領が「コミー、シフティ、そしてレティシアはどうなるんだ?」などとTruth Socialに投稿し、彼らの起訴を司法長官に促したことを書いた。そのレティシア・ジェームズ氏に対する連邦大陪審の起訴状が現地時間9日、バージニア州東部地区連邦地方裁判所に提出された。

起訴状には「住宅ローン詐欺の疑惑に起因する2つの罪」が記されている。前述拙稿で、シフ氏とクック氏の立件は難しいが「レティシア氏については、居住用と別宅の両方とも居住用の低金利で住宅ローンを契約した証拠がある上、居住宅の戸数を偽って(5戸⇒4戸)低金利で契約した疑いもあり、早晩、起訴されると思う」としたが、どうやらその通りになった(9日の『The Hill』)。

同記事は、「起訴状によると彼女は銀行詐欺と金融機関への虚偽申告の罪に問われて」おり、検察側は彼女が20年に「セカンドホームライダー“second home rider”」と呼ばれる契約に基づきバージニア州ノーフォークで住宅を購入したと主張、この契約で彼女は当該物件をセカンドホームとして居住・使用することが義務付けられたことで、有利な融資条件を得ることができたとしている。

一方のジェームズ氏は今回の起訴について、「大統領による司法制度を必死に武器化する取り組みの継続」と呼び、自身がニューヨーク州検察長官として「職務を遂行した」ため、大統領が連邦法執行機関に自分の命令に従わせようとしていると主張し、「容疑には根拠がなく、大統領の公の発言からも、彼の唯一の目的はどんな犠牲を払っても政治的報復をすることであることが明白だ」などと述べている

この様に彼女は具体的な反論をしていないが、起訴状は、彼女は自身の代わりに自分の縁者3家族に物件を賃貸しており、こうした投資目的の場合は有利な条件が適用されなかったはずで、その結果、彼女に約1万9000ドルの不当利得が生じたとする。また、彼女が住宅保険や納税申告書の申請書においても、不動産の用途について「虚偽の申告」を続けたと主張している。

これらの罪状は最高で懲役30年が科せられる可能性があるが、ジェームズが初犯であるため、有罪判決を受けた場合でもそれより軽い刑罰が科される可能性が高いそうである。

ジェームズ氏の起訴はコミー氏と同様に、バージニア州東部地区の暫定連邦検事リンジー・ハリガン氏によるものだが、本件の担当判事も、コミー事案のマイケル・ナックマノフ地方判事と同じく、バイデン大統領が任命したジャマー・ウォーカー米連邦地方判事が無作為に割り当てられた。

なおジェームズ氏が24年1月に、被害者のいない金融詐欺容疑の民事裁判で3億6800万ドルの罰金をトランプ氏とその息子らに科した事件については、拙稿「トランプの『ニューヨーク詐欺事件』」でそれが如何に異様な事件であったかを詳しく述べたので、そちらを参照願いたい。

その後の事態として、ニューヨーク州控訴裁判所が本年8月、トランプ氏が不正行為に加担したとのこの裁判の結論を支持しつつも、憲法修正第8条に照らして罰金が過大であるとして、全員一致でこれを無効(void)にしたことを付け加える。