ノーベル平和賞が軍事侵攻を後押し?:マチャド氏受賞に国際社会が懸念

2025年のノーベル平和賞は、ベネズエラの反政府指導者、マリア・コリーナ・マチャド氏に授与された。しかし、この決定が公表されるや否や、各方面から強い批判が噴出している。理由は、マチャド氏の言動が「平和」の理念とは逆行するものではないかという懸念だ。

強硬な軍事路線への支持

マチャド氏は、米国・トランプ政権によるカリブ海での軍事的プレゼンス拡大を強く支持してきた。彼女はマドゥロ政権を「地域全体への巨大な安全保障上の脅威」と位置付け、軍事的圧力を正当化している。

発言録(マチャド氏および政党の主張)

  • 「Maduro is the head of a narco-terrorist structure of cooperation.(マドゥロは麻薬テロリスト協力構造の首領だ)」※ベネズエラでの政権転覆を強硬に主張してきたアメリカのルビオ国務長官の発言とも酷似しており、彼はマドゥロ政権について「テロ組織および組織犯罪によって国家が乗っ取られた存在だ」と非難しています。そこには、一切の妥協の余地がありません。
  • 「本日、我々は国際社会に対し緊急の行動を要請する。パンデミックへの注目が、ベネズエラ国民の命が交戦状態に巻き込まれている現実を覆い隠してはならない。今日ペタレで目撃される光景は、やがて国全体、ひいては地域全体に拡大する恐れがある。」
    ※「ベネズエラにおける悲劇を止めるため、協調した勢力の共同作戦が緊急に必要である」と題した、マチャド氏が率いる政党 Vente Venezuela の公式声明(2020年)
  • 「あなたがカリブ海地域にいて、ベネズエラの北に位置し、米国への麻薬取引を試みているなら、あなたは米国にとって正当な攻撃対象だ」
    ※この発言は、マチャド氏の政党「Vente Venezuela」が、トランプ政権のピート・ヘグセス国防長官の発言を引用・拡散したものである。

「平和賞にふさわしいのか?」国際的な懸念

こうした姿勢に対し、国際的な批判も激しい。アメリカ・イスラム関係評議会(CAIR)は、マチャド氏のノーベル平和賞受賞に強く反対し、「非良心的な決定」とまで断じた。

マチャド氏は、イスラエルの人種差別的なリクード党の熱心な支持者であり、今年初めには、ゲルト・ウィルダースやマリー・ル・ペンを含むヨーロッパのファシストの会議で、1500年代のスペインのムスリムとユダヤ人の民族浄化を指す「新たなレコンキスタ」を公然と呼びかける発言を行いました。

CAIRは、マチャド氏がイスラエルのリクード党や欧州の反イスラム・極右勢力に共鳴していることも問題視しており、その姿勢は多様な信仰や人権を尊重する「平和賞」の理念とは著しく乖離していると批判している。

軍事介入の大義名分化

今回の受賞は、トランプ政権内の強硬派がベネズエラ政権に対して軍事圧力を強める「新たな大義名分」を与える結果となったとの指摘もある。反政府活動に対する支持と、軍事的関与との境界が曖昧になる中、ノーベル賞の選考基準そのものに疑問が投げかけられている。

トランプ大統領(ホワイトハウス)とマリア・コリーナ・マチャド氏(同氏インスタグラム)