またメディアは大騒ぎだ。公明党が連立離脱、自民は終わった、少数与党の孤立無援…。10月10日、確かに26年間続いた自公関係は幕を下ろした。

公明党公式Xより
斉藤鉄夫が高市早苗に「政治とカネ」を理由に三行半を突きつけた。わかる。裏金問題、あれは酷かった。
でも、である。本当に自民は窮地なのか。
正直に言おう。私の周りの保守系の知人たち(中小企業経営者が多い)、ここ数年ずっと文句を言っていた。「なんで自民は公明の顔色ばかり窺ってるんだ」と。集団的自衛権、武器輸出規制緩和――議論のたびに「またブレーキか」って。
麻生太郎が公明幹部を「動かなかったガン」と言い放ったあの発言、メディアは批判したけど、ああいう本音を待ってた層は確実にいる。
創価学会の組織票、確かにデカい。あるメディアの試算では自民候補の2割が落選するそうだ。数字だけ見れば絶望的だ。
だが(ここからが本題)、じゃあ今まで自民に入れなかった保守票はどこに行ってたんだ? 棄権、もしくは維新、国民民主、参政党。公明とベッタリの自民に嫌気がさして、投票所に行かなかった層は山ほどある。
高市早苗——好き嫌いは分かれる。靖国参拝、防衛費増強。タカ派の象徴だ。でも、だからこそ。公明の制約から解放された高市なら、保守層は戻ってくる可能性が高い。
あ、そうだ。自民、本気だぞこれ。公明が候補を立てる11選挙区に、次は独自候補をぶつけるらしい。刺客だ。斉藤鉄夫の広島3区、岡本三成の東京29区。今まで「友党だから」と遠慮してた選挙区に、容赦なく。
で、困るのは誰か。公明、だろう。
組織票があるって? 確かにある。でも、それだけで勝てるのか。
たとえば、広島3区、前回斉藤は8.7万票(47.2%)で勝った。だが自民票があったからだ。その票がなくなって、さらに自民の刺客が立ったら? 保守の佐藤正久、杉田水脈あたりが来たら? 純粋な公明票だけで勝てるか。
東京29区も同じ。岡本三成、政調会長まで務めた実力者だが、自民が本気で候補を立てたら接戦になる。下手したら負ける。
11選挙区全部とは言わない。でも半分くらいは危ないんじゃないか。公明が小選挙区で議席を失えば、比例復活の保証もない。党勢縮小は確実だ。
メディアは「自民が困る」ばかり強調するけど、公明だって相当ヤバい立場だぞ。
そもそも、公明は何を得たんだ今回の離脱で。「政治とカネ」で筋を通した? 聞こえはいい。でも選挙で裏金議員に推薦出してたのは公明だ。共犯のくせに今さら正義面しても説得力ない。
創価学会から「離脱しろ」って声が上がったから慌てて飛び出した——そう見える。
で、飛び出した先に何がある? 野党連携? 立憲と組むのか? 安保政策、真逆だぞ。維新や国民民主は自民との連携を模索してる。公明、行き場ないじゃないか。国交大臣ポストも失った。地方議員への利益誘導もできなくなる。
「公明離脱=自民終了」って短絡的な見方、どうも違和感がある。困るのは自民だけじゃない。公明も相当マズい。むしろ逃げ場がない分、深刻かもしれない。
答えは有権者が出す。当たり前の話だが。
いや、一番困るのは有権者かもな。選択肢がどんどん減ってる(苦笑)
尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
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