「信教の自由」は人権であり、特権ではない

困窮下の教会支援団体「エイド・トゥ・ザ・チャーチ・イン・ニード」(ACN)が21日に発表した報告書「世界の宗教の自由2025」によると、世界人口の約3分の2にあたる54億人が完全な「信教の自由」がない国に住み、自由に信仰を実践することができないという。世界で「信教の自由」が悪化していると警告している。

中国共産党政権のチベット人弾圧を訴える亡命チベット人たち(2012年2月8日 ウィーン市内で撮影)

「世界の信教の自由」報告書は1999年初版発行以来、25年間にわたり、196カ国におけるこの基本的人権の現状を調査してきた。政府機関以外で実施されたこの種の調査としては世界で唯一のものだ。ACNの報告書はカトリック組織によって発行されているが、「信教の自由」の権利が濫用、侵害、または制限されているあらゆる信仰の人々を対象としている。

今回の報告書によると、調査対象となった196カ国のうち62カ国で、この基本的人権の深刻な侵害が見られ、権威主義、宗教的過激主義、そして紛争が状況をさらに悪化させている。2023年1月から2024年12月までの期間を対象とし、今回で25回目の発表となるこの調査によると、改善が見られた国はカザフスタンとスリランカの2カ国のみだった。

同報告書の発表に先駆け、ローマ教皇レオ14世はXショートメッセージで「信教の自由はあらゆる公正な社会の礎だ。信教の自由は、真理を探究し、自由に真理に生き、公然と証をすることを可能にさせる。それゆえに、良心が形成され尊重される道徳的空間を守るため、それはあらゆる公正な社会の礎となる」と述べている。

ACNのレジーナ・リンチ事務局長は、「世界人権宣言第18条で保護されている思想、良心、宗教の自由の権利は、単に圧力を受けているだけではない。多くの国で、この権利は失われつつある。信教の自由は、他のすべての人権の指標だ。信教の自由の制限は、基本的自由のより包括的な崩壊を告げるものだ」と語っている。

報告書によると、権威主義が宗教弾圧の主因であると指摘している。迫害を受けている24カ国のうち19カ国、そして差別を受けている38カ国のうち33カ国において、政府は宗教活動を統制または封じ込めるための組織的な戦略を展開している。イラン、エリトリア、ニカラグアにおいて、当局は監視技術、デジタル検閲、制限的な法律、そして恣意的な逮捕を用いていた。報告書は「信仰の統制は政治権力の手段となっている」と指摘し、「宗教弾圧の官僚化が進んでいる」と強調している。

今回の報告書では、アフリカとアジアにおけるイスラム過激主義の脅威の高まりにも光を当てている。サヘル地域(サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域)はジハード主義による暴力の中心地とみなされており、イスラム国サヘル州(ISSP)やJNIM(「イスラム教及びイスラム教徒の守護者」)などの組織が数十万人を殺害し、数百万人を避難させ、数百の教会や学校を破壊してきた。民族宗教的ナショナリズムは、アジア、特にインドとミャンマーにおいて弾圧を推進している。例えばインドでは、報告書は「ハイブリッドな迫害」、つまりキリスト教徒とイスラム教徒のコミュニティを標的とした政治的言説によって煽られた差別的な法律と民間人による暴力の組み合わせについて言及している。

中国の実情について、報告書は「中国はウイグル族のイスラム教徒とキリスト教徒のコミュニティにイデオロギーの統一を強制する「中国化」政策をさらに拡大している。2024年から施行された新たな規制では、すべての宗教集会所が社会主義的価値観を明確に遵守することが義務付けられている。チベット族とイスラム教徒のコミュニティは、村の改名、逮捕、礼拝所の破壊といった苦難に耐えてきた。特に懸念されるのは、未成年者への宗教教育を禁止し、宗教行事への参加を制限する法律である」と記述している。

ACNの報告書によると、「信教の自由」の悪化は欧州や北米も例外ではない。2023年には、フランスで約1,000件の教会への攻撃が記録され、ギリシャでは600件以上の破壊行為が記録された。スペイン、イタリア、アメリカ合衆国でも礼拝所の冒涜、聖職者への身体的暴行、礼拝の妨害などが見られた。ACNによると、こうした攻撃は宗教に対するイデオロギー的な敵意の風潮を反映している。

報告書はまた、2023年10月7日のイスラム過激テロ組織(ハマス)のイスラエル攻撃を発端にガザ地区における戦争を受けて、反ユダヤ主義および反イスラム主義的な行為が劇的に増加したことも記録している。フランスでは反ユダヤ主義的な行為が増加し、イスラム教徒に対するヘイトクライムは29%増加した。ドイツでは、イスラエルとハマスの紛争に関連する事件が2023年に4,369件記録された。前年は61件だった。

ACNは、今回の報告書を受けて、「信教の自由」を求める初の国際嘆願書を開始した。リンチ事務局長は「62カ国で、自らの信念に従って信仰し、生きる権利が損なわれており、これは数十億の人々に影響を与えている。信教の自由は人権であり、特権ではない」と強調している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年10月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。