2025年秋、日本各地でクマによる人身被害が急増し、自治体が自衛隊の派遣を要請する事態となった。秋田県をはじめ、山林と集落の境目で人手が足りず、猟友会や警察だけでは対応が難しくなっている。これは単なる「獣害」ではなく、地方の人口減少とインフラ維持の困難がもたらす構造的な問題の表れでもある。
- 秋田県が防衛省に「後方支援」派遣を要請
鈴木健太知事は、罠設置や捕獲後の搬送支援などを目的に自衛隊の協力を求めた。武器使用は想定せず、疲弊した現場の労力を補う「人的支援」として位置付けた。 - 防衛省は派遣の可否を協議
政府は災害派遣に準じた枠組みで対応を検討中。官房長官は「関係省庁と総合的に判断する」と述べ、前例の少ないケースとして慎重に調整を進めている。 - 背景:過去最悪の被害と人手不足
2025年はクマによる死傷者数が過去最多を更新。高齢化で猟友会の担い手が減り、山林整備の遅れや餌不足も重なって市街地出没が増えている。 - 問題の本質は「地方の疲弊」
クマ害は結果にすぎず、根本には地方のリソース不足がある。人手も予算も足りず、山と町をつなぐ里山の管理が崩壊している。獣害を抑えても、次に別の災害が続く可能性がある。 - 専門家の指摘:駆除では限界
クマを撃つだけでは根本解決にならず、森林整備・里山再生・地域経済の立て直しといった長期的視点が不可欠とされる。自衛隊派遣は応急措置に過ぎない。
自衛隊のクマ対策派遣は、地方の限界を象徴する出来事である。獣害の背景にあるのは、人口減少とインフラ崩壊が進む「ふもと」の崩れだ。クマを追い払うだけでなく、地域そのものをどう維持していくかという問いが、今まさに突きつけられている。

就任早々難題に立ち向かう小泉進次郎防衛相 防衛省Xより






