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ワールドシリーズ第3戦での大谷の驚異的な活躍や公明離脱の窮地を維新との電撃連立で乗り切った高市新総理の誕生は、石破政権の真っ暗闇や急に吹き始めた寒風を一掃し、日本列島に明るい気分をもたらしている。
こうした話をツマミに旨い酒を飲みたいと、友人と3人で杯を傾けた。維新との連立では、29日に「赤旗」が、藤田共同代表が「公設秘書の会社に公金を支出していた」と報じ、それに藤田氏が「全て実態のある正当な取引であり、専門家にも相談の上で適法に行っている」と反論したことも話題に上った。
すると友人の一人で某役所の幹部を長らく務めていた男が、「やっぱりそうか」と膝を打たせる話を披露した。彼によれば、「うちの会社(役所をそう称した)では、課長になると『赤旗』と『公明新聞』の購読をそれぞれの市議から強制される」のだそうだ。
数年前に嘱託になって、『赤旗』は900円の「日曜版」にしてもらい、『公明新聞』1800円は止めたが、それまでは20年以上も毎月4〜5千円払っていたという。しかも、「詰まらない記事は読まないし、自宅の『朝日』の分とで新聞が溜まること溜まること」と頻りにボヤく。
その友人の両親は共に教師で、父親から新聞は『朝日』、TVは『NHK』、雑誌は『中央公論』にせよ、といわれて育った訳だから、思想信条は自称「ピンク」だ。が、そういう彼をしてさえ『赤旗』(と『公明新聞』)には辟易とさせられてのである。
その彼と、何にでも下らない解決策を捻り出そうとする性癖のある筆者との間で、ひと頻り以下の遣り取りと相成った。
筆者:私なら、市長に直訴して購読料を「会社」持ちにしてもらうよ。
友人:それは無理だ。民間ならまだしも役所じゃそうはいかない。
筆者:なんの問題がある?
友人:市民にバレたら騒がれるよ。
筆者:それは大丈夫だ。その手の話をバラすのはたいがい共産党だ。自分に跳ね返るようなことでは騒がないよ。
友人:なるほど。
筆者:問題は公明党の議員だが、彼らにも脛に同じ傷があるから、こっち大丈夫だ。
これを聞いていた別の友人は、「それにしても橋下徹は何にでも口を出すねえ」「政治の世界にはもう戻れないだろう」という。筆者は「馬場は降ろしたが、復活した藤田の評判が良いので悔しいのかな」「弁護士とタレントで充分だ。敵が多いし」と話を引き取った。
ところが、帰宅しホロ酔いで読み始めた『産経電子版』の「主張」(社説)の見出しには「赤旗の『押し売り』 全国で実態調査し対策を」の文字が踊り、冒頭の一文にはこう書いてあるではないか。こんな偶然、滅多にあるもんじゃない。
共産党の地方議員が自治体の庁舎内で、幹部職員らに同党の機関紙「しんぶん赤旗」の購読を求める行為が横行している。東京都新宿区では、区の管理職の約8割が共産党区議から赤旗購読の勧誘を受け、このうち6割以上が心理的圧力を感じていたことが、区が実施した職員へのアンケートで分かった。
記事によれば、鎌倉市は14年、「職務の中立性」を理由に政党機関紙などの庁舎内での勧誘を禁止する規則を設けたそうだ。維新の吉村共同代表もこの20日、政治資金問題に絡めて「赤旗など政党機関紙の問題も協議する意向を示した」とある。藤田事件の暴露はその意趣返しと思えなくもない。
前出の役人だった友人は市議の要請を断れない理由を、「購読を断った幹部のいる部署が議会で執拗に攻撃されるから」といっていた。いわば、当人を部内で孤立させる陰湿なやり口である。しかも、職員の中には党員がいて、「彼らはいざという時のために内部情報をプールしているのではないか」とも。
そういえばいわゆる「裏金」も『赤旗』のスクープだった。24年6月12日の「『しんぶん赤旗』日曜版の料金改定へのご協力のお願い」との記事で、誇らしげにこう記している。
裏金問題をはじめ自民党をここまで追いつめてきたのは「赤旗」日曜版のスクープが始まりでした。「赤旗」のスクープがなければ今でも「裏金」は裏金のままだったでしょう。それは、読者のみなさんの購読料に支えられた新聞だからできたスクープでした。
日本共産党は、企業・団体献金も政党助成金も受け取らず、「赤旗」の発行を最大の支えにしています。「赤旗」の発行を守り抜くことは、暮らしをよくするうえでも、平和にとっても、日本と世界にとってもどうしても必要です。
公務員の数は24年時点の概算で、国家公務員:59万人、地方公務員:280万人の合計約339万人とされる。仮に1割が課長以上とし、その50%が購読するなら月に約17万部、購読料は日刊紙:3497円・日曜版付:4487円の間を取って4000円と置くと月6.8億円、年間82億円になる。
共産党も公明党も、機関紙の販売が法に触れている訳ではない。が、そうだとして産経記事や友人の話が事実とすれば、公党の在り方として「裏金」議員をいつまでもとやかくいうのは如何か。既に特捜の厳重な捜査の結果「不起訴」となり、選挙の禊も済ませている。
まして、高市内閣の佐藤啓官房副長官が、政府を代表して参院議院運営委員会理事会などに出席することを拒否する所業は、共産・公明を含む野党が、我が国が法治国家であることも、議会制民主主義の国であることも、放棄したと見做さざるを得ない愚挙である。即刻、取り下げるべきだ。






