人間関係や仕事の場において、いつのまにか自分が「軽んじられる」立場に置かれていた──。そんな経験は誰にでも一度はあるのではないか。黒坂岳央『なめてくるバカを黙らせる技術』（アルファポリス）は、この問題にあえて直截に切り込み、「なめられることは優しさではなく損失である」と断言する一冊である。
著者の言う「なめられるは損である」は、その真意を的確に言い表すワーディングだ。「なめられること」を、単なる自尊心の問題や「気持ちの問題」として片付けてしまうのは、人生を長期的スパンで考えると、実に大きな負のコストを払う行為である。その根拠として、現実に起きている人間行動の心理や、著者自身がビジネスマンとして体験した数々のエピソードが、具体的かつ注意深く語られていく。
なめられると人生のリソースを際限なく奪われる maroke/iStock
これらのエピソードは、社会が「なめられる者」から容赦なく人生のリソースを奪い取っていくかを痛感させ、読者は自分の今までの人生を振り返ることになる。
また、著者が引用するマキャベリの言葉である「愛されるより恐れられよ」は、単なる歴史的示唆ではなく、人間関係を冷静に見つめる大人への「知恵」として響く。「信頼」と「依存」は異なるものであり、後者に偏ることが「なめられ」の温床になる――本書には、そんな洞察がさりげなく盛り込まれている。
「なめられない努力」は実は、生存戦略そのものなのである。
実践的な防御と対処法へ
本書が興味深いのは「なめられた後の対処法」に留まらない点だ。この後、「絶対になめさせない技術」では、先手を打っていかに「場の主導権」を握るかが語られる。また、「なめてくるバカへの反撃」では、単なる防御を超えた「戦略的な反撃」の視点が示されている。それらは今日からでも実践できるようにブレークダウンされている。
本書を通じて浮かび上がるのは、「自己の立場を守り抜く知性と態度」の重要性だ。決して攻撃的な行動を勧めているわけではない。それよりむしろ、真に誇りを持ち、自分の価値を損なわずに社会と向き合うための手引きとして読むとよいのではないだろうか。
「なめてくるバカ」は、どこにでも現れる。しかし、「なめさせ続けるかどうか」は、私たち自身の手に委ねられている。この一冊は、その舵を取り戻すための、実に頼もしい道標と言える。
なめられなくなるノウハウが満載!
【目次】
序章 「なめられる」 は損である
第1章 なめられる人の実態
第2章 絶対に「なめさせない」 技術
第3章 なめてくるバカの頭の中を理解する
第4章 なめられるケーススタディ
第5章 なめてくるバカへの反撃
