11月2日、土曜日。秋の深まりを感じられる長野県に日帰りドライブに出かけました。最近、3連休は高速道路のETC割引がなくなり、平日と同じ料金になったので、愛知県中部の自宅から150キロを3時間半下道で走ります。やってきたのは長野県飯田市にある遠山郷とよばれる山里です。
飯田市とはいっても市の中心部からは遠く離れ、伊那山地を越えた東側にあります。かつては南信濃村と上村(かみむら)という独立した村で、遠山郷は栄村の秋山郷、白馬村の青鬼郷と並んで信州三大秘境と呼ばれています。
下栗の里
そんな山奥にわざわざドライブした理由。それはこの村に「日本のチロル」と呼ばれる絶景が見られる場所があるからでした。国道から脇道に入って約9キロ。対向車が来たらどうするの、というような山道をうねうねと登っていき、噂の日本のチロル「下栗の里」に到着します。
ここから絶景が見えるポイントまではこんな山道をいきます。800mほどなんですが結構遠く感じます。今年は熊が多く出没しており、飯田市でも別の地域で熊が確認されています。
…注意していきましょう。
15分弱歩いて展望台に到着します。思ったほど広くないですが、ここから見下ろす下栗の集落が絶景なのです。
それがこちら!山の斜面にはりつくように拓かれた集落、これが下栗の里です。集落は南側斜面に作られていて、太陽の恵みをいっぱいに受けることができます。山の民はここで畑を作り、芋や野菜を作って暮らしていました。その歴史は古く、縄文時代の土器も出土されているそうです。
うねうねと集落の中を縫うように走る道路。その道路沿いに民家がありますが、人口は減少の一途をたどり2020年現在の人口は80人。過半数は75歳以上の高齢者です。21世紀後半にはここに住む人はいなくなり、山に還ってしまう可能性もあります。
運転してるけど奈良漬って食べていいのかな。
幸い熊には出会わず駐車場に戻りました。駐車場では地元の方がクリご飯を作って販売していました。400円。ごろごろと大ぶりのクリがたくさん入った栗ごはん。これぞ山里の味。おいしく頂きました。
旧木沢小学校
山を下り、旧南信濃村の木沢地区にやってきました。ここには平成12年まで学校として使われていた旧木沢小学校があります。木造のノスタルジックな雰囲気の建物。今は地元住民の手で保存され、資料館や地元のイベントスペースとして使われています。
引越しのサカイのCMで使われたことがあるそうで、延々とビデオが流されていました。
広い教室に3つの机。かつては森林鉄道の起点に近く多くの生徒がいたようですが、晩年はこのように生徒は少なかったものと想像できます。
木製の階段にノスタルジーや何とも言えない懐かしさを感じます。こういう学校、通ったことないのにどうしてでしょう。
木沢のアイドル、平沢さんは今、かわいいおばあちゃんになっているのでしょうか。
木沢地区はとても小さな集落ですが、簡易郵便局がありました。町中の郵便局とは違って民家を間借りしているかのよう。隣は丸西屋という蕎麦屋です。
この日はお休みだったようです。店番はカオナシ。遠山郷の「霜月祭り」が「千と千尋の神隠し」のモチーフになったといわれていることが関係しているようです。
ついでに、といっては怒られますがトトロもいました。
道の駅 遠山郷
霜月祭り「神楽」の像。
かなり深い山の中ではありますが、遠山郷、結構立派な道の駅があります。併設している「かぐらの湯」で5年前にポンプの落下事故が起きて以来温泉は休止していましたが、つい先月復旧したばかりです。
真新しい施設に蘭が並ぶ。
温泉復旧に合わせて足湯も開業しました。せっかくなので入りながら、移り行く山里の秋を眺めます。
平地より一足早く訪れる山里の秋。ここから秋が南に向けて駆け下りていきます。
遠山郷には名物「遠山ジンギス」と呼ばれる肉があります。ジンギスというからジンギスカンなのかといえばさにあらず。昭和30年代にこの地で創業したスズキヤがこの地域にいる動物を食べやすく味付けして提供しはじめたもので、味付きのスタミナ肉のことを指します。
その肉とは鶏や豚のほか、鹿、馬、イノシシ、クマなど。深い山奥にあるこの地域では貴重なたんぱく源として古くから狩猟が行われてきました。その食文化を引き継ぎつつ、今はやりのジビエとしておいしく加工して提供しています。
というわけで、イノシシをゲットしました!豚肉よりも肉は固く肉厚で野性みを感じますが、ニンニクで味付けされているためか全く臭みがなくおいしく頂けました。次は隣で売られていたウサギも食べてみたいですね。
すぐそばまで山が迫る。
人里離れた信州の秘境、遠山郷。たどり着くのはなかなか大変ですが行くだけの価値のある絶景や自然を感じられる場所でした。このあたりは温泉が多くわく地域でもあります。次は温泉巡りをしながらドライブを楽しみたいなと思いました。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。