国会が生むブラック労働の現実:“官僚離れ”の遠因はここにある

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「国会議員の質問通告時間の遅さが、政党間での権力闘争の具となるばかりでなく、深夜にまで対応を迫られる官僚の疲弊と、莫大な残業代&タクシー代の支出に繋がり、ひいては過酷な労働環境を忌避して官僚のなり手不足の遠因にもなっている」ことについては、以前から問題視されていました。

しかし今般、立憲民主党議員が「与野党で合意した『質問通告は2日前まで』というルールを守らず、官僚や高市氏周辺に迷惑をかけたのに、それを逆に高市氏批判に用いた」という自作自演自爆によって騒動となり、多くの人にこの問題が認知されるようになったのは不幸中の幸いでした。この機に、国会が建設的な議論の場となることを切に願います。

さて、最近多くの方が目にされているであろう「質問通告2日前のルールを守っていないことが多い政党」(画像1)の出典は、民間コンサルティング会社「ワーク・ライフバランス」社が2021年4月に発表した「コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査」(画像2)です。

画像1

画像2

もう4年半も前のことなので、今はだいぶ状況が改善しているかと思いきや、騒動を見る限りまだまだでしたね。

この調査発表時、一般公開された資料において、記載されていたのは「ルールを守っていない政党名」まででした(画像3)。

画像3

しかし実際の調査では、官僚の方々に「ルールを守っていない議員名」までヒアリングしてたんですね。その結果が当方を含む一部メディアに個別開示されたため、当時私はその情報を基に、得票数の多い議員複数名に対して取材を申し込んだのです。その結果をまとめて執筆した記事が、本投稿のリンクです。宜しければご一読ください。

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ちなみに、現役官僚から「質問通告2日前のルールを守っていないことが多い議員」として名前が多く挙がったのは、「森ゆうこ」「小西ひろゆき」「蓮舫」「福山哲郎」「枝野幸男」(以上立憲民主党)、「塩川鉄也」「山添拓」(以上共産党)の各氏でした。

当方は画像4の趣旨の取材文面を各氏に送付しましたが、結果的に期限までに回答があったのは山添議員と蓮舫議員、期限後に福山議員の計3名のみで、他議員からは一切の返答がありませんでした。回答全文は記事中に掲載しておりますのでご参照頂ければ幸いです。

画像4

「2日前ルール」を守れない理由として、委員会の日程自体が権力闘争の一つになってしまっているという慣習が槍玉にあげられることがありますが、であればすべての党の質問通告が同程度に遅れても不思議はないはず。

なのに、立憲民主党と共産党だけが群を抜いてルールを守れていないということは、彼らが皆「基本的なルールさえ守れないダメ人間集団」なのか、「我が国の官僚組織の弱体化を図ろうとする、悪意に満ちた集団」なのか、その両方なのか、などと勘繰ってしまいます。

民間企業における働き方改革では、「会議の調整」などというムダなタスクは真っ先に圧縮・削減され、限られた時間で価値発揮するための努力をしています。一方で国会や霞が関では、どれだけの時間が空費されているのでしょうか。

議論になったことをチャンスと捉え、ここで一気に旧来の慣習や構造を変える機会として頂きたいものです。


 

(編集部より)この記事は、新田 龍@nittaryoのポストを、許可をいただいた上で転載いたしました。