S&P 500は2度目のナッシングバーガー

S&P 500は1ヶ月ぶりに大幅に下落した週となった。

先週の記事ではハロウィーン効果に期待せず、「過剰投資懸念は最終的には克服されると思われるが、週が明けても燻ぶるようなら、短期的になかなか反証できるヘッドラインが想像付かない」「金融政策の方からのサポートは12/1まで途切れており、(中略)Fed BSと株価を重ねるパブロフの犬的には夜明け前の暗い時間帯となる」と、10月FOMCをアンチ・ゴルディロックスの始まりと見てきた。

月曜11/3にはAMZNとOpenAIの大型契約を手掛かりに高寄りしたが、そこからは売りに押された。FOMCでアンチ・ゴルディロックスの流れが確立されて以来、高寄りがプットの買い場にされたようなチャートが連日続く。

火曜11/4はパランティアPLTRが好決算を発表したにもかかわらず暴落したことがバリュエーション懸念の象徴となり、個人投資家のセンチメントが悪化したGSの個人投資家選好銘柄指数は「解放の日」以来の下落幅となった

11/4引け後のAMDも期待には届かなかったが、逆に水曜11/5はショートカバーの日となった。水曜11/5の場中にトランプ政権のIEEPA関税をめぐる最高裁口頭弁論が行われ、それがどうもトランプ政権側に不利っぽい雰囲気であったことが伝わるとショートカバーは加速した。

もっとも5月のナッシングバーガーの前例を引いても(ただし今回は次がない)この手の本丸の懸念からかけ離れたグッドニュースの効果は長くは持続せず、それに気付いた投資家によるものか機械の売りか分からないが水曜11/5の引け前には売りが降ってくる。何ならまだ判決が出ていないおかげでトランプ政権のリアクションがなかったのが幸いなくらいである。

木曜11/6も寄付きからハイテク株売りが再開した。OpenAI経営陣が資金調達の保証を米国政府に求めた失言で痛くもない腹を探られる形となった

金曜11/7もハイテク株の売りが続いたが、6670近辺に位置する50SMAを付けてようやく自律反発した。政府閉鎖の再開を巡りポジティブなヘッドラインが流れたのもきっかけとなった

ナスダックは「解放の日」以来の大きな週間下落幅となったこれまでのS&P 500の3%程度の調整には反発が続いたが、果たして。

AI過剰投資懸念の象徴となるラージテック社債スプレッドは週間を通して更に拡大し、AIバブルが始まって以来のレンジの上限に近付いている。これの拡大が止まらなくなるか、株式のラリーを見て後追いで縮小に転じるかに注目である。また潰れそうになっていなくてもラージテックによる連日の大型起債は金融市場から流動性を吸収したと思われる。

GS CTAは10月後半の最高値更新にもかかわらず、10/10ショックを引きずる形で緩やかな売りが続く。

DB positioningは一旦振り落とされたが、こちらでもシステマティック勢が落としたポジションを回復しようとしない。

一方、裁量投資家は米中貿易戦争再開リスクが軽減されたと見るや、10/10ショックでぶん投げたポジションを早速回復した。

BofAのディーラーガンマは少し前から大幅に変化した。コールウォールをスポットが越えたことでコールウォールは綺麗に消滅したようだ。

代わりに6700をピークとする新たなプットウォールが新たに築かれたようにも見えるが、それは縮尺が変わったからであり、大きな上下動の結果として総じてオプションポジションは綺麗になっておりポジティブガンマが薄くなっていることに変わりはない。先週の調整でプットウォールのピークが一度貫通されたので尚更である。

毎回調べても間違えるので無視を決め込んでいたが、2025年9月末に建てられたJPMのJHEQXカラーのコール売りが6955に刺さっているようであり、先々週付けた過去最高値6920はその手前で折り返した形となるし、年末に近付くにつれコール売りの影響を受けやすくなるだろう。下値では6550を割られるとネガティブガンマに転じる。

10月最終週の顧客フローは機関投資家の売りが目立った。DBが観測した「その後の裁量投資家の買戻し」とやや矛盾するようにも見える。企業の自社株買いはブラックアウト明けで再開しつつあるが、2025年は総じて2024年ほどの勢いがないようだ。設備投資で燃やしてしまうからか。

NAAIMは先週の記事で100を超えたことから「次は調整の順番ということになるだろう」と導き出したのは正しかったことになる。もっともNAAIMもそれなりの勢いで反落しており、先週ほどは調整の必然性が濃くない。一瞬だけポジティブ域に入ったGSセンチメントは再びマイナスが深くなってしまった。

今後のニュースフローとして政府再開が期待されており、これについて先週の記事では指標再開に伴うヘッジニーズの可能性を取り上げたが、今は既にそれどころではないので、むしろ政府再開に伴う流動性改善に期待したいところである。

テクニカル。6920をピークに週足上ヒゲ陰線に続く大き目の調整であり、日足50SMA割れを一度試した。

金曜11/7後場の反発のかげで日足は下ヒゲ陽線となっており、6630は一度日足サポートとなる。もしここまでの調整が単なる売り仕掛けであったとすればこの50SMAタッチが限界と思われ、今後はテクニカルよりもAI過剰投資懸念がどこまで燃え広がるかに左右される。

一層のバッドニュースがなければ6630 -6920レンジに移行する形となり、そういう意味で10月FOMC直前のバブル上値追いモードはどうも収束したらしいものの、既存ポジションを縮小するならせめてこのレンジの上半分を待ちたい。

一方、もし週が明けて6630があっさりカチ割られた場合、ナスダックで言うと22500をカチ割って日足ヘッドアンドショルダーを形成した場合、次は10月の調整が残尿感のある水平サポートを作っており、またネガティブガンマにフリップする6550近辺を狙う形になりそうである。6550トライのリスクは引続き鬼門ではあるが、レバレッジさえかけすぎていなければ、そのゾーンをカチ割られた後の水準ではさすがに耐えておけばいいだろうとは思っている。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年11月8日の記事を転載させていただきました。