台北で開催された「Multiomics and Precision Medicine Joint Conference 2025」に招かれて台湾に1泊2日で行ってきた。
オーダーメイド医療と言い始めた30年前は、奇人変人扱いをされたが、今や、猫も杓子もプレシジョン医療(オーダーメイド医療の同義語)と言っている。時代は変わったと思う。
しかし、コロナ騒ぎが終わり、海外に行く機会が増えて感ずることは、大阪から海外へのアクセスの悪さだ。東京から台北に行くには、羽田空港発台北松山空港行(台北市内)の便がある。松山空港から台北101ビルまで5キロ弱と非常に便利だ。台北駅へも電車で15分ほどだ。大阪から台北に行くには、関西空港から台湾桃園国際空港に行かなければならない。桃園空港から台北の中心までは40キロ以上あり、車で1時間ほどかかる(もっとかかることもある)。

GoranQ/iStock
私が初めて台湾を訪問した時、桃園空港は、「中正国際空港」、もしくは、「蒋介石国際空港」と呼ばれていた。「中正」というのは蒋介石の名前である。2006年から現在の呼称である「台湾桃園国際空港」になった。
蒋介石の名前は、台湾の人にとっては複雑な思いがあるようだ。台北市内にも蒋介石を祭る大規模な中正紀念堂が設立されている。日本が屈した連合軍には中国が含まれるが、この中国は、中華人民共和国ではなく、蒋介石率いる中華民国であることを知らない人が多くなった。
話を戻すと、大阪の北部や神戸・京都から台湾に行くのはかなり不便だ。京都駅から関西空港へ特急電車で行っても1時間30分近くかかる。さらに、関西空港から桃園空港へは、日本航空や全日空が運航していないのだ。私が愛用している全日空はヨーロッパ便を全く飛ばしていない。と嘆いても仕方がないが、大阪は海外へのアクセスの観点で副首都と呼べるレベルではない。副首都構想には海外へのアクセスのしやすさを含めて欲しいものだ。
会議に戻すと、忙しいし、体調も万全でなかったので、辞退しようかとも思ったが、特別講演に穴をあけるのも悪いので1泊2日で1時間の講演をしてきた。
今回は台湾に入国するのに、デジタル申請となっていることを知らず、空港でドタバタして手間取ったし、帰国時も税関申告をデジタルでしたが、そこでの手続きは円滑でなく、最後に人のいる窓口に行けと指示され、何のためのデジタルなのかと頭にきた。どうも、滞在があまりにも短いので、何かの運び屋かとAIが判断をしたようだ。人工知能も単純な判断をし過ぎだ。人相も参考にしてほしい。
文句が多くなったが、最後に気持ちがほっこりとしたことを紹介したい。私の講演の司会をしてくれたのが、シカゴ大学時代に私の研究室に留学していた国立陽明交通大学准教授だった。彼に前もって長い紹介は不要と言っていたのだが、留学時の話を始め、「中村研究室に留学していた仲間とは、中村教授を含め、今でも親しくしている。中村ファミリーの一員になれたことは幸運だった。」との言葉で紹介を終わり、その言葉にうるっとしてしまった。
もちろん、講演は全開パワーで行った。いつもながら、暖かい気候と親日的な対応に生き返った感じがした!
■
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください







