今は人間にしかできない思考が重視される

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先週、ChatGPTに「君にできないことは何か」と聞いてみた。返ってきた答えは、ほぼ予想通り。

「判断」「価値観」「創造性」——昔からそう言われてることだ。

でも、本当にそうだろうか。

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いや、待てよ。逆に考えると、今の人間がやってることの大半って、AIができることばかりじゃん。特に、ネットで情報を集めて、それを組み合わせて、答えを出す。これ、完全にAIの領域だ。

だから思うんだけど、ネット検索に依存してる人間って、実は自分の仕事をAIに教えているようなもの。「こうやって情報を集めます」「こうやって判断します」って、パターンを見せてる。それを学習したAIが、その方法を完璧にやる。

人間には、もう勝てない。これホントかよ、って思うかもしれないけど、本当だ。

もう一つ思い出した。学生時代の友人で、今は某大手企業の企画部門にいる奴がいる。先月会った時、こぼしてた。「最近、Webで情報を集めて資料を作る奴がどんどん評価されなくなった」って。理由は簡単。AIがそれをやるようになったから。

逆に評価される奴は? 「なんで?」という問いを立てる奴。「どうあるべき?」と考える奴。「これ、他の業界ではどうなってる?」と想像する奴。つまり、検索じゃなくて「思考」してる奴だ。

そういう人間をどうやって育てるか。答えは地味だ。読書。それと、ノートに考えを書く。そして、ちょっと違う意見の人間と話す。これだけ。

検索しない。Webを見ない。その代わり、本を読む。1冊、じっくり。なぜなら、本は一つの問題を掘り下げてるから。検索は断片的。本は、物事の繋がりを見せてくれる。その繋がりを見る力。これが、AIには難しい。

それから、毎朝30分、スマホ禁止。ただ、ノートに考えを書く。「なぜだろう」「どうしたらいいだろう」。何度も同じ問いを書く。すると、脳が考える。勝手に考え始める。検索と違って、自分の脳が動く。

最後は、人間と話す。特に、自分と違う意見の人。なぜなら、人間の意見には「計算では出てこないもの」が含まれてるから。経験、価値観、時間が積み重なった「何か」。それがAIにはない。

今後、5年から10年で劇的に変わると思う。AIが普通になるから。そうなった時、社会が必要とするのは「思考できる人間」だ。企画じゃなくて「企む力」。分析じゃなくて「なぜを問い続ける力」。検索じゃなくて「自分の頭で考える力」。

正直、こんなこと言うのは気が引ける。だって、簡単じゃないから。検索の方がずっと楽。読書は時間がかかるし、ノートに考えを書くのも、人間と話すのも、めんどくさい。そりゃ、検索したい。

でもね、めんどくさいことから、逃げてる奴らって、10年後、全員いなくなってるんじゃないかな。それ、怖くない?

AIとの付き合い方はシンプルだ。AIができることは、AIにやらせる。そして、人間は「思考する」。その棲み分けができた人間だけが、これからの時代を生き残る。

というか、生き残るじゃなくて、そういう人間だけが、仕事として機能する。だから、今から始めないと、本当にヤバい。

読書。思考の記録。人間との対話。地味だけど、これらが、これからの武器になる。ネット検索なんか、もう過去のものと思った方がいい。

※ ここでは、本編のエピソードをコラムの形で編集し直しています。

尾藤 克之(コラムニスト、著述家)

22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)