25年度補正予算は20兆円規模?:バラマキの「抜け道」でインフレが止まらない

政府が取りまとめを進める2025年度補正予算の一般会計歳出が、前年度の13.9兆円を超える規模となる見通しが明らかになった。物価高対策や成長戦略の名目で巨額の財政支出が積み上がる一方、円相場は9カ月ぶりに1ドル=155円台まで下落。高市政権が財政規律より成長を優先する有識者を政策会議に集めたことが、市場の不安心理を強めているとの指摘も出ている。

  • 政府が策定中の2025年度補正予算は、一般会計歳出が14日までに前年度の13兆9千億円超に膨らむことが判明した。物価高対策や成長分野支援が名目だが、歳出項目が大半を占め、制度改革の記述は乏しい。
  • 自民党の会合では13日、議員から「補正は20兆円規模を目指すべきだ」との発言まで出ており、歳出拡大を当然視する空気が広がっている。
  • 補正原案には、規制改革・構造改革、さらには社会保険料負担の軽減策がほとんど盛り込まれず、現役世代の負担軽減につながらないとの批判が出ている。
  • 円相場は対ドルで約9カ月ぶりの155円台に下落。財政規律より経済成長を優先すべきだと主張する有識者が政府の経済政策会議に加わったことが、過度な財政拡張路線を市場に印象付けたとみられている。
  • 物価高対策として給付金や減税が並ぶ点に対し、「需要を刺激して物価が下がるのか」という根本的な誤解がある。景気過熱局面での給付金はむしろ逆効果の可能性が非常に高い。
  • 補正予算は本来、金融危機や震災など予測不能の大不況時に需要不足を補うための制度だったが、安倍政権以降「毎年恒例」の財政拡張の舞台となった。現在はインフレ下でも編成が続き、バラマキの「抜け道」として機能しているとの批判が根強い。
  • 補正予算の査定は短期間で行われることが多く、早い場合は1週間程度で決まる。専門家からは「当初予算では通りにくい支出を拙速に通す方便」との指摘があり、補正予算制度そのものの廃止や当初予算との一体的・厳格な査定を求める声もある。

2025年度補正予算は、物価高や成長戦略を名目に歳出が再び膨張し、財政規律の緩みが市場の円売りを加速させている。給付金や減税中心の政策で物価高に対処できるのかという疑問も強まる中、補正予算の恒常化と制度的ゆるみが日本の財政運営の弱点になっている。財政拡張を続けるか、制度改革に踏み込むかが、高市政権の経済運営の焦点となる。

国民民主党・玉木代表から経済対策の策定に向けた提言申し入れを受け取る高市首相 首相官邸HPより