10月の消費者物価指数(CPI)が3%上昇し、7月以来の伸び率となった。物価の基調が再び加速するなか、政府の大規模な財政出動や円安進行が絡み合い、日本経済は「悪い物価上昇」の色合いをますます強めている。
- 総務省が21日に発表した10月の消費者物価指数(生鮮食品除く)は112.1で、前年同月比3.0%上昇となった。上昇率が3%台となるのは3カ月ぶりで、インフレ圧力が再燃している。
- 物価上昇の背景には、円安による輸入物価の上昇がある。かつて日本国債の金利が低位で安定していたのは、日銀がゼロ金利を長期にわたり維持してきたためだが、いまは世界標準の金利環境に引き戻されつつあり、財政膨張による金利上昇圧力が顕在化している。
- 高市政権が進める「物価高対策」を掲げた補正予算17兆円は、追加国債発行を通じて財政赤字を拡大させるものだが、財政バラマキが物価を押し上げる教科書通りの流れとなっている。
- 市場では、インフレ税が政府の有力な選択肢として意識されつつある。政策金利をゼロ近辺に据え置き、物価上昇を一定程度容認すれば、政府の実質債務は縮小する。物価が5%上がれば、60兆円規模の「隠れた課税」と同じ効果が生じるが、多くの国民はその負担を自覚しにくい。
- 日本は高齢化と低成長という構造問題の中で、円安とインフレが連鎖する悪循環に陥りつつある。輸入物価上昇→生活悪化→追加支出→円安加速という循環が固定化すれば、家計の負担は今後さらに増す。
- 円安の反転には、米国の利下げ、日銀の追加利上げ、あるいは財政再建が必要とされるが、当面は政治的・経済的に実現しにくい状況だ。しかし、その代償は物価上昇と通貨安として現れる。
- 現在の物価上昇は需給の逼迫ではなく、財政主導の円安インフレが主因との見方が強い。減税や給付金も結局は需要刺激によって物価を押し上げ、生活負担を増やす。
10月CPIの3%上昇は、単なる物価高騰ではなく、日本経済が構造的な円安インフレに落ち込みつつある兆候でもある。こうした政策の帰結を国民が理解するには大きな痛みが伴われるのだろうか。

高市首相 首相官邸HPより






