ウクライナを巡っては結局感謝祭までに何か起きたわけでもなく、ブラックフライデーディールがあったわけでもありませんでした。もちろん、水面下、あるいは水面上で様々な交渉が行われているので停戦の機運はあるように見えるのですが、プーチン氏が27日時点で「最終的な案はまだ存在しない」と言っているので例の28項目の交渉で譲れる、譲れないの激しい駆け引きがあるのだと思います。この手の交渉は仮にうまくいっても数か月かかるので何か急展開する要因があれば別ですが、春までに決まれば御の字だとみています。時間軸が長いのはウクライナにとって堪えるとみており、むしろどこかで戦意喪失にならなければよいと思っています。戦争と外交は一体なのでここは外交手腕に期待するしかありません。
では今週のつぶやきをお送りします。
頑張った株式市場
先々週のこの項では「攻防」、先週が「踏ん張れるか」でしたので、今週は「頑張った」と言えそうです。アメリカ感謝祭休日もあり動きに派手さはなかったのですが、買い手のエネルギーはかなり高かったと思います。特に初秋の相場のリーダーだったソフトバンクGが高値から4割も急落する中で物色銘柄の拡散につながったようです。ちなみに私が主戦場とするカナダの市場は相当好調。指数も高値更新で、カーニー首相のいぶし銀のような手腕が漢方薬のように効果を見せています。またカナダ市場の強みである「金銀銅」相場が堅調なこともあるでしょう。銀相場は以前から申し上げているように最大の注目です。
ではハイテク。調整は終わりでそろそろ反転する感じですが爆発的な上げにもならないと思います。一言で言えばAI投資疲れ。グーグルのジェミニ3の評価が上がり、バフェットさんの会社も同社を買っていたこともあり、エヌビディアを売り、グーグルを買う動きでしたがこれも既に止まっています。理由は評価を冷静に判断するところにあるからで最終的にはゼロサムの話をしているのです。ただし、AI投資が巨額で各社兆円単位を投じ、一部の経営者からは「参戦しないよりやって負けた方がよい」という訳ワカメの発言も散見された中、アメリカ内で二強体制ができるならそれの方が健全だと言えるでしょう。メタなんて賢くてグーグルについて行く方針です。これでメタの投資負担はぐっと下がるでしょう。正解です。
そろそろ2026年のテーマ探しになるわけですが、カナダでは「原油産業に投資するって環境問題で先細りなのに意味があるのか?」という声が聞こえてくる中、アジア向けの新しいパイプライン敷設を政府が推し進めています。いつの間にか再生エネルギー大国となった中国に対してアメリカ、カナダはオールドエコノミーに回帰。日本はといえば次の原発再稼働は何処かで、本命は北海道泊原発一択。個人的にはその間を取って小型モジュール炉(SMR)がブレイクするような気がします。これができるのはGMベルノバ、日立がリーダー。世界で一斉にこの動きが出れば需要ひっ迫になり、「日本での着工は10年後かな」ということになりかねないかも。あくまでも想像力の世界です。
廃墟をどう撤去するか?
日本で問題になるのが廃墟化した住宅や商業施設の撤去の問題。あるオカルト系の書籍を読んでいたら病院の廃墟に夜、肝試しやユーチューバーが撮影目的で侵入してさもありなんという話がいろいろ飛び交っていると。廃墟が廃墟のまま放置されているのは建物所有の会社が倒産、清算されれば役所はそのクレームをするところがないからです。同様に一般住宅も相続人がいないケースはごく当たり前になってきました。あるいは家族関係が薄弱になると親族は「そんなの知らん」と放置プレーになりやすくなります。
日経に「高松のシンボル屋島、再生阻む『巨大廃虚』 所有者不在で撤去進まず」とあります。これも同様なのでしょう。撤去費に「億は下らない」コストもかかるけれどそれを負担できないと。どこの市町村でも同じ問題で「どうしよう!」と頭を抱えているのですが、知恵などいくらでもあると思います。①購入者に撤去費用に見合う建築条件の緩和を提示 ②購入者が再開発したのち、固定資産税を一定額減免 ③市町村で撤去費用を立て替え払いできるファンドを作り、そこが撤去し、その土地に一種の抵当権を付保し、新しい買い手はその費用を払わないと建築許可を取れないようにする…こんな想像力はいくらでも出てきます。
つまり私の提案は土地所有者に全ての責任があるという仕組みを発展的に変えて、購入したい人が購入しやすいようにする案です。これは廃屋が街に点在することで街の魅力が格段に落ちてしまい、街や地域が持つエネルギーを吸い取ってしまうのです。くだんの香川県屋島の建物は一昨年、同地を訪れた際に見ています。屋島という観光名所が全く生かされず、屋島の観光ポイントもバラバラで有名な屋島のうどん屋に来た県外ナンバーの車の人を屋島観光に引き付けられない実にお粗末な実態があると言えます。そうは言っても役所は「できない理由」を5つも6つも並べるのが得意ですからこういうのは政治的に力づくで動かしてもらいたいものですね。
火事の季節
12月と言えば火事で、暖房器具から出火し、空っ風が吹いて延焼した、というニュースが連日聞こえてくるのですが、大分の火災と香港の集合住宅の火災は悲惨でした。共に共通するのが火の回りが早かったということでしょうか?狭い敷地で古い木造住宅が密集しているところはいたるところにあります。大分の火災は2016年の糸魚川大火とそっくりな展開となりました。そして今回は離島にまで火の粉が飛び、そこで火災が発生したのは驚きです。

香港の高層マンション大規模火災のようす
火の粉という点では香港の火事は映画を見ているようでした。私がゼネコンにいた時、香港には駐在員200人を出すほどの規模で高層ビルも建築していました。その頃、「足場が竹組みなんだよね」といわれてえぇーと驚いたのですが、伝統と業界のやり方を死守するスタイルが続いたのでしょう。当然、足場を組む職人がたくさんいるわけで金属製に変われば「おまんまの食い上げ」になるわけでそのあたりは香港政府は英断が出来なかったとも言えます。これは人災ですが工事業者の不備だけの問題ではないと思います。
その中でもう1つ個人的にショックだったのが足立区の菓子工場の火災で歌舞伎の片岡亀蔵さんが無くなったこと。実は彼、我々は片岡二郎と本名で呼ぶのですが、は高校の同期。同期の中では著名だったこともありますが、声がデカくてリーダーシップもあり、皆に好かれていました。数日前クラスメートと電話で小一時間話した際、「9月にお前が東京にいたのを知らずにその時に同期でカラオケに行った時、二郎もいて一緒に歌ったんだよな」と。別のクラスメートはLINEで「病気じゃなくて火事だよ、火事!」。あまりにも突然すぎるという意です。香港の火災でも多くの人が途方に暮れ、家族を亡くしました。火事の時期になりました。本当に気をつけてほしいものです。
後記
23年前に建てた建物の管理組合と21年前に建てた管理組合でその境界線上にある構造物についてもめごと。管理組合が雇う管理会社は両方の建物にサービスを提供しているので「Conflict of Interest」だといって早々に無関心を装います。片方の組合長は怒り心頭、訴訟をちらつかせ、片方の組合長は「私、どうしたらよいの?」とほぼ泣きつき状態。問題はややミステリアスなところがありますが、これを介入できるのは私しかいないのだろう、と勝手に思い込み、奉行役を買って出ています。今回の私のやり方は良い意味でも悪い意味でもフィクサー方式。管理会社は既に口説き落としました。現代社会は問題が発生した場合、外部にその解決を求める依存型が多すぎると思います。解決できない問題はないのです。奉行、立ち上がります!(お前、暇なの?と言われそうですが。)
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年11月29日の記事より転載させていただきました。






