資格試験に受かる人と落ちる人の決定的な違い(横須賀 輝尚)

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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか?資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。

なぜ、試験に受かる人と落ちる人がいるのか?

最初にお断りしておきますが、私は試験勉強のプロではありません。テクニックもあまり持っていません。せいぜい持っているテクニックとすれば、重い参考書を分野ごとに破って持ち歩くことくらいのものです。

そんな私でも、資格試験については言えることがあります。それは、「落ちる理由はテクニックや勉強方法に原因があるわけではない」ということです。

よく考えてみてください。試験に受かるための参考書や問題集は山のように市販されています。テキストだけで物足りなければ、予備校に行けば合格方法を講師が教えてくれます。

しかし、現実には落ちる人と受かる人がいるわけです。この違いの根本的な理由はなんでしょうか。

それはズバリ、自分自身です。テクニックやノウハウがあるのに合格できないのは、方法論の問題ではなく、自分自身のほうに問題があるのです。言い換えれば、試験合格の材料を自分以外に探してしまうから、いつまでも合格できないのです。

重要なのは、他人が合格した方法を追いかけるのではなく、自分が合格できる能力を高めていくことです。

ですから、自分自身に基礎的な知識がないと思えば、基礎的な知識を身につけるための勉強方法を探せばいいのですし、また発展的な知識がほしいと思えば、予備校の講師から直接指導を受ければいいのです。

やはりここでも、自分を軸に置かないと、いつまで経っても「他人に合った勉強方法」に時間を使ってしまうのです。

これでは合格しないかぎり、毎年勉強方法を変えていかなければなりません。いつか偶然にも自分に合った勉強方法に出会えればいいのですが、そんな大事なことを運まかせにするべきではありません。試験も戦略的に考えるべきなのです。

横須賀式戦略的試験攻略法とは

重要なことは、自分を軸に考えること。そして、試験を戦略的に突破することです。

では、戦略的に試験を突破するとはどういうことでしょうか?

戦略的試験合格法とは、まず試験について知るということです。スポーツでも格闘技でも、相手の研究をしないで戦いを挑むプロフェッショナルはいません。

まずは「試験」という「敵」を知る必要があります。そのうえで、自分自身の能力値を客観的に把握する。そして、合格に必要なものは何かを探すのです。

私の例を紹介しながら、具体的に見ていきましょう。

(1)試験を知る

まずは、その資格の試験がどのような制度なのか調べます。私の場合、行政書士を受けましたので、行政書士試験について調べました。

このとき、受験者数や合格率はあまり気にしなくても大丈夫です。受験生の中で、真剣に受けている人の割合は決して多くありません。つまり、統計上の合格率より、「真剣に試験を受けている人」の合格率はかなり高いと言えます。合格率はあくまでも目安にすぎません。

重要なポイントはたったひとつ。

「どんな問題が出て、どれだけ点数を取れば受かるのか?」

これだけです。極端な話、合格率が1パーセントでも、満点を取れば合格なのですから、受験者数より、合格率より、「どんな試験問題が出て、何点取ればいいのか」を知ることが重要になります。

私の場合、行政書士試験(平成14年当時)では、法令問題35問(70点配点)、一般教養20問(40点配点)、記述式が5問(30点配点)で、140点満点。そのうち合格するためには84点が必要でした。

そこで私は、合格ラインを早速、計算しました。

法令7割(49点)、記述7割(21点)、一般教養5割(20点)、このラインをクリアすれば合格できるはずだと考えました。行政書士試験は絶対評価の試験ですので、この数字さえ確実に取れば合格できるという結論に達しました。

このような試験の分析をしないと何が起こるかというと、最初からすべてをていねいにやるという勉強になってしまうのです。試験について調べないと、どこまでどのように勉強していいのか基準がわからなくなり、モチベーションも続きません。

試験については、市販の資格ガイドやインターネットなどを利用して、「試験科目」「合格の基準」「試験実施日」などを調べます。この調査の際には情報の鮮度に気をつけてください。書籍もネットも、必ずしも最新情報ではないことがあります。

その際は、直接実施している機関に問い合わせるか、資格指導の予備校などに問い合わせるといいでしょう。

また、試験を調べるときには、必ず過去問も見ておくべきです。試験を単にイメージするだけと実際に直接見るのでは、雲泥の差があります。試験問題を実際に見ることによって、自分自身がどれだけ問題を解けそうかもわかってくるはずです。

そうすることによって、比較的簡単な勉強方法ですむのか、それとも本腰を入れて取り組まなければならないものなのかもわかってくるはずです。

このように、最初に「敵を知る」。つまり、試験の中身を知るということが重要です。

(2)自分の現状を把握する

試験の内容を理解することができたら、次は自分の現状を把握します。

まずは試験に必要な知識です。つまり、自分自身がどこまでの知識を持っているかということです。

例を紹介しましょう。行政書士試験の場合、行政法や憲法などさまざまな分野の法律知識を学ぶ必要があります。法学初学者はゼロから学ぶことになりますが、たとえば法学部出身で一定の法律知識がある場合には、自分自身が何に強くて何に弱いかを把握します。

私の例でいえば、当時、私は行政書士試験に必要な行政法、憲法などは押さえていましたが、労働法や戸籍法などはまったく勉強していませんでした。そうした自己分析をすれば、自分自身の不足箇所が浮きぼりになってきます。そして当然、合格に必要な知識が足らなければ、埋めていかなければなりません。

この確認をしないと、「知っていること」までもう一度学ぶことになり、効率が落ちます。得意科目の復習も必要ですが、それより、まず不足分を埋めなければ合格にはつながりません。好きなことを学ぶのももちろんですが、試験の合格には好きな科目だけでは合格できません。こうした全体分布の把握が重要なのです。

このように自己分析をおこなうことによって、本当に自分自身に必要な勉強の要素が見えてきます。自分自身に必要なものが見えてから、テキストや予備校を選ぶようにすれば、無駄な投資をしなくてすむでしょう。

(3)注意事項

試験になかなか受からない理由のひとつに、「勉強をやるからには最初からきれいにノートをとってすべて完璧にしてしまおう症候群」があります。

試験に関係する知識を、どうせならすべて学ぼうとする完璧主義と、ノートをきれいにとろう、失敗したからまた最初からやり直そうという完璧主義が試験の合格を遅くします。

大学受験でも、たとえば日本史の勉強では、多くの場合、石器時代から始めますので、やり直しで勉強しようとすると、また石器時代から勉強することになり、いつまで経っても現代人に進化できなかったりしてしまいます。

目的は試験に合格することです。勉強は無駄にはなりませんが、合格したあとに好きなだけ勉強することができます。「試験に合格する」という最初の目的を忘れないようにしましょう。

ちなみに私の場合は、行政書士試験では民法という科目を捨てました。当時35間中4問程度しか出ないのにもかかわらず、条文は1,000以上あるということを知り、効率が悪すぎると考え、民法を捨てて勉強を最低限に抑えました。一部の試験科目を捨てるのは勇気がいりますが、結果として、他の重要な科目の勉強に時間を費やすことができたのです。

以上、少しでもあなたが「合格」の二文字を手に入れる一助になればと思います。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年7月7日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。