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正直に言う。墓じまいの費用を調べ始めたとき、最初に思ったのは「高くない?」だった。
ケースバイケース。便利な言葉だ。要するに「わからない」ということである。

「墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!」(吉川 美津子 著)WAVE出版
で、何にそんなにかかるのか。大きいのは3つ。お墓の解体・撤去費、離檀料と法要、そして改葬先の費用。順番に見ていくが、読んでいるうちに気が滅入ってくるかもしれない。私がそうだった。
まず解体費。これは避けられない。墓石があるなら壊して撤去しなければならない。相場は30万から50万円。1平方メートルあたり10万から15万円で計算するらしい。奥行き2メートル、横幅1.5メートルなら3平方メートル。掛け算すれば30万円。ここまでは、まあ納得できる。
問題はここからだ。「追加費用」という魔法の言葉が登場する。駐車場から墓所まで遠い。重機が入れない。作業員を増やす必要がある。墓石がデカい。理由はいくらでもつけられる。見積もりを取ったら「思ってたのと違う」となる人、多いんじゃないか。
次に離檀料。寺院墓地にお墓がある人だけの話だが、これがまた厄介だ。相場は5万から20万円。または普段のお布施の2〜3倍。「長年お世話になった感謝の気持ち」として渡すものらしい。
感謝の気持ち。
いや、気持ちはある。あるけど、金額を「相場」で語られると、なんだか違和感がある。仏教の教義に決まりはないという。つまり寺院の言い値だ。ここで揉める人がいるのも頷ける。
閉眼供養のお布施も3万から5万円。魂を抜く儀式である。必要な手続きなのはわかる。わかるが、積み上げていくと気が重くなる。
ここまでで30万から70万円。「墓じまい」だけで、だ。改葬先の費用は別。遺骨をどこに納めるかで、さらに数十万から数百万円が上乗せされる。
結局、墓じまいとは何なのか。先祖への供養か、寺院へのお礼か、業者への支払いか。全部だと言われればそうなのだが、「気持ち」と「金額」が混在するこの仕組み、どうにも座りが悪い。
とはいえ、放置すれば無縁墓になる。子どもに負担を残すわけにもいかない。だから皆、黙って払う。私の知人もそうだった。「仕方ないよね」と言いながら。
仕方ない。たぶん、そうなのだろう。でも、せめて事前に相場くらいは知っておきたい。知った上で「仕方ない」と言いたい。この記事が、その一助になれば幸いだ。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
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