- 齋藤ジン:世界秩序が変わるとき
- 河野龍太郎:日本経済の死角
- Ray Dalio: How Countries Go Broke
- トマ・フィリポン:競争なきアメリカ
- 藤代宏一:株高不況
- 池本大輔:サッチャー
- 河浪武史:円ドル戦争40年秘史
- 家近亮子:蒋介石
- レイ・カーツワイル:シンギュラリティはより近く
- 渡辺努:物価を考える
今年は不作だった。読んでいちばん感動したのは、原著が2011年に出たReligion in Human Evolutionだが、訳本はいまだに出ない。
1はトランプ政権の世界戦略。グローバリゼーションの旗手だったベッセントが財務長官になったことは、新自由主義の時代が終わって新しい時代が来たことを示すが、それが何かはよくわからない。3はグローバリゼーションの敗者が日本だという分析。過剰債務で企業が海外逃避し、円安になって日本は莫大な交易損失をこうむった。これが長期不況の原因である。
2は日本経済の分析としてはよくできているが、肝心の「労働生産性は上がったのに賃金が上がらないのはなぜか」という問題の答が間違っている。原因は企業が「収奪的」だからではなく、10が指摘するように労使が賃上げを自粛しているためだ。その原因は、賃金を抑えて正社員の雇用を守る温情主義である。古い雇用慣行が日本経済のボトルネックになっている。
「株高なのに不況なのはなぜか」という5の答は簡単である。7にも書かれているようにグローバル企業が海外に資本逃避し、成長するアジアで利益を上げているからだ。これは2も含めて多くのエコノミストが指摘しているが、高市政権はバラマキ財政で金利を上げて民間投資をクラウディングアウトし、空洞化をさらに進めている。これが今の円安の構造的な原因である。






