かつての同志、伊藤詩織さんと望月衣塑子記者が記者会見で大激突

ジャーナリストの伊藤詩織さんが2025年12月15日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、自身が監督したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」をめぐる批判に反論した。会見では、映画内容を問題視してきた東京新聞の望月衣塑子記者との激しい応酬があり、両者の対立が前面に出る異例の展開となった。

  • 伊藤詩織さんは、元TBS記者から性被害を受けたと訴えた一連の出来事と、その後の捜査・裁判過程を映画化した「Black Box Diaries」を監督。作品は海外で高く評価され、ピーボディ賞を受賞するなど60か国以上で上映された。
  • 一方、日本公開を前に、捜査員の音声、ホテルの防犯カメラ映像、非公開の勉強会での映像などが、十分な承諾を得ないまま使われているのではないかという疑念が浮上。とくに、伊藤さんの元代理人で約8年間支援してきた西廣陽子弁護士が、目的外使用や人権侵害の恐れがあるとして強く問題提起してきた。
  • 西廣弁護士は、裁判目的で入手した証拠映像が無断で映画に使用されたことや、打ち合わせ音声が録音・使用されていたことを挙げ、「法的・倫理的問題は解決されていない」と公開直前にも批判コメントを発表している。
  • これに対し伊藤さんは会見で、映像や音声はCG加工や編集を施しており、外部から個人が特定されることはないと説明。「性暴力の真相を明らかにするため不可欠だった」と主張し、日本での公開が遅れたのは弁護士や一部メディアが事実でない情報を広めたためだと批判した。
  • 会見の中で伊藤さんは、西廣弁護士について「4回謝罪している」と述べたが、西廣弁護士側は「そのような事実はない」と否定しており、両者の主張は真っ向から対立している。
  • 会見終盤では、映画を批判的に報じてきた東京新聞の望月衣塑子記者との応酬が起きた。望月記者は、非公開の集会映像について「見出しは誤解を招くとして修正したが、本文は変えていない」「許諾を得ていない参加者がいたのは事実だ」と指摘した。

  • これに対し伊藤さんは、「完全なウソだ」「ファクトチェックをせずに報道されたことで、日本での上映が難しくなった」と強く反論。質問に対し笑いを交えながら応じる場面もあり、会場の緊張感が一層高まった。

  • ホテルの防犯カメラ映像についても、ホテル側が目的外使用を認めていないとする指摘に対し、伊藤さんは「ホテルやタクシー、客の顔もCGで加工している」と正当性を主張したが、承諾の有無をめぐる溝は埋まらなかった。

  • ことし2月には、伊藤さんは望月記者の東京新聞の記事に対し名誉毀損で提訴している。

今回の記者会見は、伊藤詩織さんが被害当事者としての立場と表現の自由を強く主張する一方で、かつての支援者や記者から向けられている倫理的・手続き的な疑問に対し、十分な合意形成や謝罪が示されたとは言い難い内容となった。映画の評価とは別に、証拠の扱い方や同意の解釈をめぐる対立は深刻化しており、この騒動が今後の性被害告発や報道のあり方にどのような影響を与えるのかが問われている。

2025年12月17日 外国特派員協会で会見する伊東詩織さん