ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、米国の政治誌「アクシオス」との会見で、「トランプ大統領と28日の日曜日、フロリダ州のトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」で戦争終結計画について話し合う予定だ」と語った。

欧州首脳たちと和平案について電話会談をするゼレンスキー大統領,2025年12月26日、ウクライナ大統領府公式サイトから
ゼレンスキー氏は「トランプ氏との会談では、2022年から続く戦争終結に向けた枠組みについて合意に達することを期待している。合意すれば、その和平案に対し国民投票を実施する用意があるから、ロシア側は少なくとも60日間の停戦に同意しなければならない」と述べている。
「トランプ氏が日曜日にゼレンスキー氏と会見する」というニュースが報じられると、「会談は米国とウクライナの和平案での重要な和解を意味する。トランプ大統領は以前、合意が達成可能な場合にのみゼレンスキー大統領と会談すると述べていたからだ」と受け取る声が聞かれる。オーストリア国営放送(ORF)のワシントン特派員は26日、夜のプライムタイムのニュース番組で、「トランプ氏が日曜日、ゼレンスキー氏との会談に応じたということはいい知らせだ」と述べ、会談で何らかのブレークスルーが期待できるかもしれないと述べている。
ゼレンスキー氏は「我々は一日たりとも無駄にするつもりはない。20項目の和平案は90%完了している。我々の今の仕事は、全てを100%確定させることだ」と述べ、トランプ大統領との会談が望ましい結果をもたらす可能性があることを示唆している。
一方、トランプ大統領は、26日のニュース誌「ポリティコ」に掲載されたインタビューの中で、「私が承認するまで、彼(ゼレンスキー氏)には何も残らない。彼が何を持っているか見てみよう」と述べ、「ゼレンスキー大統領との会談はうまくいくと思う。また、プーチン大統領ともうまくいくと思う」と強調した。
ウクライナが依然として支配するドンバス地方の一部をロシア側に明け渡すという要求については、まだ合意に至っていない。なお、独軍事専門家は27日、ドイツ民間放送ニュース専門局NTVとのインタビューで「ゼレンスキー氏にとって、ドンバス地方(ウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州)の放棄は自殺行為だ」と指摘、領土の割譲問題が如何に難しいかを説明している。
ロシア紙コメルサントの報道によると、プーチン大統領は最近、交渉の意向を示したが、ウクライナ東部のドンバス地方全体の併合を主張している。プーチン氏の立場は、8月の米ロ首脳会談でロシア側が提案した内容と変わらず、ドンバスはロシアに帰属する一方、それ以外の地域での部分的な領土交換の可能性を排除していないというものだ。
キーウが米国のウクライナ戦争終結計画の改訂版を提示したことを受け、モスクワは「ウクライナが協議を妨害した」と非難した。ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は26日、ロシア国営放送で、「改訂版はモスクワがここ数週間ワシントンと交渉してきた内容とは根本的に異なる。ウクライナとその支援国、とりわけ紛争の解決に賛成していないEUは、協議を妨害する動きを強めている。この危機を引き起こした問題を適切に解決しなければ、最終合意に達することは不可能だ」と強調した。
最後に、人工知能(AI)のチャットGPTにウクライナ和平案の成功の見通しなどを聞いてみた。
―ウクライナ和平20項目は成果を挙げるだろうか。
「ゼレンスキー大統領が提示した20項目和平案の成功率は、現時点では非常に低い。なぜなら、領土問題(クリミア、東部地域)と『NATO加盟断念・中立化』の核心部分でロシア側との隔たりが大きく、米国も調整中であり、ロシアが修正に反発する姿勢を示しているため、根本的な合意形成が極めて困難な状況だからだ。成功には、米欧の『安全保証』の具体化とロシア側の譲歩が不可欠だが、現状は双方の要求が真っ向から対立している」
―成功を阻む主要要因は何か。
「領土問題の深刻な対立だ。ゼレンスキー案は自国領土からの撤退を拒否し、米国の提案した自由経済地域についても国民投票にかける案を主張しているが、ロシアは現状の占領地維持を強く求めている。また、『安全保証』と『中立化』の相違だ。ウクライナはNATO加盟国並みの安全保証を求めているが、ロシアはNATO加盟の断念と中立化を要求しており、この点での妥協が難しい。ロシアは和平案の修正に反対しており、修正に応じる姿勢を見せていない」
―和平案の今後の行方について
「米欧からの強力な安全保証だ。ウクライナが侵攻されないための具体的な安全保証が提供されれば、ウクライナ側の交渉余地が広がる可能性がある。領土問題の一部を国民投票にかける案が、合意形成の糸口になる可能性も排除できない。20項目はウクライナの基本姿勢を示すもので、交渉の出発点としては重要だが、ロシアが受け入れ可能な形に修正される見込みは低く、合意に至るまでの道のりは非常に険しい。いずれにしても、ロシアと米国の間での調整が続いており、2025年末から2026年初頭にかけての首脳級の交渉が、この案が実効性を持つかどうかの分岐点になると予測される」
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






