防衛力を強化するには防衛費をGDP比率1パーセントに戻すべき。

防衛力を強化するには防衛費をGDP比率1パーセントに戻すべきです。

経済力に対して分不相応な2.5パーセント、あるいは米国が要求する3.5パーセントといった軍拡をするのであれば、すぐに息切れします。

防衛はマラソンみたいなものです。長距離を走るスタミナがないのに短距離と勘違いして飛ばせば、あっという間に息切れします。ある意味防衛費は掛け捨ての生命保険みたいなものです。給料以上の借金をしているサラリーマが、分不相応な生命保険をかけ続けているようなものです。

防衛予算案、初の9兆円台…対中念頭に対処力を向上

防衛予算案、初の9兆円台…対中念頭に対処力を向上
【読売新聞】 26日に閣議決定された2026年度予算案の防衛費は、初の9兆円台に達し、過去最大となった。中国が軍事面での膨張を続け、日中対立も深まるなか、対処力を引き続き向上させ、無人機などを利用した新たな戦い方にも対応していく。

来年度予算案の防衛費は、前年度当初比3・8%増の9兆353億円(デジタル庁計上分、米軍再編費などを含む)となる。政府は22年、防衛力の大幅な増強をうたった国家安全保障戦略など安保3文書を決定し、防衛力整備を急ピッチで進めている。米国のトランプ政権が同盟国に防衛費増の要求も強めるなか、政府は引き続き主体的に防衛力整備を進めていく方針だ。

この手の報道の駄目なところは補正予算にはふれないところです。

過去最大の巨額に上った防衛省の補正予算。それがむしろ、日本の防衛力や防衛産業を弱体化させてしまいかねない深刻な理由

過去最大の巨額に上った防衛省の補正予算。それがむしろ、日本の防衛力や防衛産業を弱体化させてしまいかねない深刻な理由
高市内閣は「責任ある積極財政」のスローガンのもと18兆3034億円の巨額の補正予算(2025年度)案を閣議決定した。防衛省の補正予算は8472億円と巨額なものになった。政府は防衛費などの関連予算を27年度にGDP比で2…

補正予算の約8千億円以上が本来の補正予算の趣旨ではなく「軍拡」に使われています。これらを加えればほぼ10兆円です。安倍政権からのからくりですが、こういう指摘を新聞やテレビはしてこなかった。

高市首相 首相官邸HPより

政府は防衛増税をするといっていますが、焼け石に水です。税収が80兆円しかないのに、補正込みで約140.6兆円規模となります。GDPの2.6倍の財政赤字はさらなる拡大を続けています。

来年度予算では社会保障費:39兆円超(医療・介護費の増大)、国債費:31兆円超(利払い費の増加)、防衛費:約9兆円です。これにプラスして「責任ある積極財政」こと「無責任な借金だのみの積極財政」で国債による支出がプラスされます。

政府がいくら支出を増やしてもそれが民間の投資や消費を呼び込んで豊かになる、結果として税収が増えて国の借金が減らせるならそれでもいいです。ですがこの30年そのばらまきをやり続けても残ったのは国の借金だけです。つまり政府によるばらまきは何の経済効果も生んでこなかったとことは証明されています。

それでも財政出動をすれば景気がよくなるのだというのは、お前の病気が治らないのはお布施がたりなからだ、お布施を増やせば病気が治るというカルト宗教と同じです。
実際問題として、市場は既に警告を出し続けています。国債の利率はあがり、円は下がり続けています。これをやり続けるといわゆる「インフレ税」となります。インフレで政府の負債は削減されます。ですが物価高騰によってGDPの5.5割の個人消費は更に落ち込みます。食品、エネルギー、被服、スマホ、もろもろの生活用品は日本企業の海外生産も含めて輸入に頼っているからです。当然ながら国内の製造業や農業、飲食業なども原価が上がります。

国債短期化、将来の負担に 超長期債は減、2年債・5年債は増額借り換え増えて利払い重く

国債短期化、将来の負担に 超長期債は減、2年債・5年債は増額 借り換え増えて利払い重く - 日本経済新聞
財務省は26日、2026年度の国債発行計画を公表した。市場動向を踏まえ、償還までの期間が10年を超える超長期債は発行額を減らす。金利上昇局面では国債の短期化が進めば利払い負担が増え、将来の財政悪化への懸念が強まる。(1面参照)新規国債のほか、財政投融資の資金に充てる財投債や満期を迎えた国債の償還資金を調達するための借換...

財務省は26日、2026年度の国債発行計画を公表した。市場動向を踏まえ、償還までの期間が10年を超える超長期債は発行額を減らす。金利上昇局面では国債の短期化が進めば利払い負担が増え、将来の財政悪化への懸念が強まる。

発行する国債の年限が短くなるほど借り換えの頻度が増す。金利上昇局面で将来的に利払い費増加の影響を受けやすくなる。

今後予算での国債費は増え続けるでしょう。

そして国債の利率が高騰すれば国債費が増えます。そうなると予算が組めなくなってくる。それに対処するために国債の発行を増やせばさらなる利率の上昇と、円安を招く無限地獄が待っています。

円が安くなるということは日本の企業やアカデミズムの活力がなくなるということです。

例えば海外での見本市や学会にでることを減らさないといけない。外国の著者に払う印税が払えずに、翻訳本が減っていく。国が貧しくなると情報もはいってこなくなり、ますます国は貧しくなります。徐々にですが途上国化が進んでいきます。

防衛費もインフレで目減りします。いくら防衛費を挙げてもインフレと円安でそれらが吸収されて「真水」の防衛費増は微々たるものです。輸入装備にかぎらず、国産装備も多くの外国製コンポーネントを使用していますし、国産の部材だって元をたどれば輸入品です。無論自衛隊で使用する燃料なども高騰します。

そしてどこかで限界が来ます。さんざん借金軍拡をして「火の出るおもちゃ」を大人買いしても、防衛費を削減せざるを得なくなってそれらを維持整備することができなくなります。

戦わずして自衛隊は自壊していきます。

財政改革をせずに借金を増やし続ければどこかで破綻が待っています。本来は予算で最大の社会保障費用の支出の削減を含めて、政府支出を全的に見直すべきです。例えば医療にしても年齢問わず3割負担にする、生活保護でも1割負担にする。消費税を20パーセントに引き上げる。所得税の控除を見直す。現実所得が650万円以上の少ない層に税金が集中してい。これを続けると中間層が没落していきます。そうなれば第三世界への道をまっしぐらです。

借金による軍拡をあきらめて、防衛費はGDP比1パーセントに戻すべきです。そうすることによって世界と市場関係者に野放図な財政支出をしないとアピールができて国債の利率や円安を抑える方向に進むでしょう。

そして自衛隊を26万人から大幅に削減する。そもそも現状でも少子高齢化で募集には難航しています。部隊の充足率は危険なほど低い。いくら待遇をよくしようが、この環境に変化はない。現状の定員と実員を維持するのは困難です。

たとえば定員を16万人まで減らして、4万人は純粋削減、6万人は防衛省職員兼予備役自衛官として再雇用し、調達部署やリクルート、各種学校の職員とする。そうすれば65歳の定年まで働ける。そうなれば再就職対策のコストも減るでしょう。

人員を減らして、充足率を上げ、浮いた予算を装備の近代化や抗堪性に回すべきです。陸自を大きく削減し、空自の戦闘機や海自の艦艇などのプラットフォームも大幅に削減すべきです。潜水艦は16隻体制あるいは12隻体制にして、護衛艦も戦闘機も減らす。1機あたりのパイロットを増やすほうが罫線能力のという意味でも大きいし、将来はもっと無人プラットフォームが増えるでしょう。

防衛費をいくら増やしてもそれは経済の活性化にはつながらない。税金使って穴を掘って埋め戻すようなもので、乗数効果はない。税金を食いつぶすだけです。

やる気があるなら輸出市場で稼ぐべきです。世界の市場で戦えば性能、品質、コストの面でメリットがあります。逆に輸出しないような企業、例えばいすゞみたいな企業は防衛調達から外すべきです。そのためにはいわゆる5類型を廃止し、事業統合を促進する。そ自衛官の数を維持するより、その分の輸出する防衛産業あるいは別な産業で雇用すれば税収は増えて国力が強化できます。

高市早苗は戦艦馬鹿

先日大人の事情で商業媒体に掲載できなかったのでNoteで公開した「馬鹿が戦艦でやってくる」の増補改訂版です。
kindle unlimited であれば無料で読めます。

大人の事情で商業媒体に掲載されなかった記事を、Noteで有料公開します。

馬鹿が戦艦でやってくる!

Kindleで有料記事の公開を始めました。

いずも級、22DDHは駆逐艦に非ず。 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一
暴力装置 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一

東洋経済オンラインに寄稿しました。

拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653
ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817

過去の著作の電子版が発売になりました。
『ル・オタク フランスおたく物語』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1PJ1YL/
『弱者のための喧嘩術』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1L9SPW/


防衛破綻 – 清谷 信一


専守防衛 – 清谷 信一


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。