政治が権力を握ると平気で嘘をつくようになり、国家や世界を破壊し始める

トランプ米大統領は既存の国際秩序や同盟関係を破壊し続け、プーチン露大統領は4年目に入るウクライナ侵略戦争を止めない。そうした姿を見ていると、政治が国家や世界を破壊していると判断するしかないのです。

連日のように彼らは嘘をつき、政治の最高責任者がフェークニュース(虚偽情報)を流しています。正体不明の発信者でなく、歴然とした正体を持つ大統領、首相らがすぐにばれる情報を発信しているのです。それをメディアは垂れ流す。

日本ではどうでしょうか。安倍長期政権は「デフレ脱却」といって、アベノミクス(異次元金融緩和と財政膨張政策)を展開し、結果は「2年で消費者物価2%上昇」は嘘同然の空振りにでした。巨額の国家債務を積み上げ、超低金利政策は円安をもたらし、物価高を招き国民はインフレに苦しむ。

日本のGDPは世界5位に転落

円安のため、ドル換算した日本のGDP(国内総生産)はかつての世界2位から、5位に転落しました。日本経済はアベノミクスで壊されたも同然です。安倍路線の継承者を自認する高市首相は年末の各紙インタビューで「無責任な減税はしない。国債発行は抑制的に行う」(日経新聞)と述べました。

本気でそうするのか疑わしい。少なくとも、アベノミクス路線を修正せざるを得なくなっているというべきです。高市首相は「安倍路線の継承者」というレッテルが欲しいのです。

虚偽を口にした高市首相

年末の「エコノミスト懇談会」(日経主催)で高市首相は「行き過ぎた緊縮財政で国力を衰退させることではなく、責任ある財政政策で国力を強くする」と、宣言したそうです。その場にいた金融専門家は「行き過ぎた緊縮財政とは何のことか」と思った。日本の国債発行残高はGDP比で230%にも膨張したのは、緊縮財政ではなく、財政膨張策による。首相たる者は虚偽を口にしてはいけない。日経もそのことは書かない。

高市首相 日本取引所グループ大納会で 首相官邸HPより

政治家に過剰な権力を握らせてはいけない。政治家が握っている権力を抑制することが、世界にとっても、国家にとってもますます必要になっていると思うのです。戦争・戦時状態が安全保障を脅かし、自然災害や経済危機が多発し、国際交渉・外交の重要度が増すにつれ、政治権力の役割は大きくなる。同時に、政治権力の肥大化・暴走をどう防ぐかが大きな課題です。

日本の場合、短命政権が多く、政権が変わる度に、新味をだそうとして、政治的なスローガンが編みだされ、財政支出の拡大を招いてきました。高市政権の場合、日本成長戦略本部が設置され、重点投資する主要17業種が指定されました。高市政権を成長重視を誇示したいにしても、官民一体でそのような産業政策が成功するとはないでしょう。

安倍政権の時は、一億総活躍国民会議、未来投資会議、菅政権では成長戦略会議とデジタル社推進会議、岸田政権は新しい資本主義実現本部と田園都市国家構想実現会議、石破政権は新しい地方経済本部と米国の関税措置に対する対策本部、そして高市政権は成長戦略本部、地域未来戦略本部、人口戦略本部の3つです。

要するに、政権が掲げるのは看板だけで、成果が上がらなかったから次の政権が別の看板を持ち出す。できもしないことを約束する、その繰り返しです。政府主導の政策は成功しないことを証明しているのです。メディアも看板だけと思ったら、小さな扱いにすべきです。

政府は何をやらないかの区分が必要

もういい加減に嘘みたいな子供だましは止めてほしい。政府は何をすべきかではなく、何をやらないかと考える時です。

安倍・元首相は「首相は森羅万象を司る」と国会答弁で述べました。首相になると、神にでもなった気分になるのでしょうか。「森羅万象」とは、政府万能論です。政府は万能と錯覚する国民もいるでしょう。

ですから「景気も政治」、「成長も政治」、「賃上げも政治」、「人口減も政治」になり、すべての問題を政治が背負い込み、際限なく財政支出は増えていく。メディアも何か問題が起きるとすぐ政治、政府の責任として追及する。その繰り返しです。無意味な報道は自粛してほしい。

首相の解散権を制限せよ

それと日本は首相になると、解散権をちらつかせて、自らに最も有利なタイミングで解散総選挙に走る。票集めのために、ポピュリズムの走り、財政支出を膨らませる。連立政治の時代になり、野党を釣り上げるために、少数与党は野党の要求を飲む。民主主義の基盤である選挙を通じて、財政が劣化し、民主主義が弱体化する。意識転換が必要です。

新年の社説は新聞社の力量が問われる。「今年は衆院解散と総選挙が行われる可能性がある。受けのよい政策で目先の成果だけを追及する政治では、日本そのものが漂流しかねない」(読売)という主張を目にしました。もう一歩踏み込んで、「首相の解散権を制限すべきだ」と書くべきなのです。政権にきちんと対峙する姿勢がほしいのです。

恥ずかしい学者の政治依存

学者の政権依存も目立ちます。田中明彦・東大名誉教授(前国際協力機構理事長)は年末の大型コラムの冒頭、「高市首相は就任直後としては上々の外交デビューを飾った」(読売)と、持ち上げました。

トランプ大統領が来日して、日米首脳会談を行い、会談後、横須賀の米軍基地に高市首相を同道してヘリで飛び、原子力空母艦に乗艦しました。艦上でトランプ氏が挨拶し、外交辞令で高市氏を持ち上げると、高市氏は小躍りして喜びを隠しませんでした。

米国に媚びを売るかのようなの姿は、恥さらしではないかと思った人は大いに違いない。それがなぜ「上々の外交デビュー」になるのか。政治学者も政権に媚びを売る。恥ずかしい学者の姿です。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年1月3日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。