
Korrawin/iStock
日本企業は、海外ビジネスにおいて「真面目だ」と評価されることが多い。約束を守り、品質に妥協せず、社内ルールも厳格だ。しかし、この「真面目さ」が、時に海外では失敗の原因になる。
問題は、真面目であることそのものではない。国内ルールを、そのまま海外に持ち込んでしまうことにある。
日本企業が海外でつまずく場面を見ていると、「ルールを守っているのに、なぜうまくいかないのか」という違和感を抱くケースが少なくない。背景にあるのは、日本の社内ルールと、海外で求められるルールの性質の違いだ。
日本のルールは、内部統制を目的に作られていることが多い。誰が見ても分かるように、例外を減らし、曖昧さを排除する。一方、海外ビジネスのルール、とりわけ規制や契約の世界では、「状況に応じた判断」と「説明可能性」が重視される。
たとえば輸出管理の場面で、日本企業は「ルールに書いていないからできない」「前例がないから進められない」と判断しがちだ。しかし海外では、「なぜその判断をしたのか」「どのリスクをどう考えたのか」を説明できれば、一定の裁量が認められることも多い。
ここで起きるのが、日本企業特有の混乱である。国内ルールに忠実であろうとするほど、現地のスピード感や判断基準と噛み合わなくなる。
さらに厄介なのは、日本の社内ルールが、海外規制の要求水準と必ずしも一致していない点だ。国内向けに作られたチェックリストや稟議フローが、海外当局から見ると「なぜその点を確認していないのか」と問われることもある。
つまり、真面目に守っているはずのルールが、海外では的外れになってしまう。
海外で成功している日本企業は、国内ルールを捨てているわけではない。ただし、それを「絶対視」していない。
国内ルールはあくまで出発点であり、海外では「その上で何を考え、どう判断したか」を重ねていく。この切り分けができているかどうかが、成否を分ける。
海外ビジネスで求められるのは、真面目さではなく、考え抜いた真面目さだ。国内ルールを守ることと、海外で責任ある判断をすることは、同じではない。
この違いを理解できない限り、日本企業は「真面目なのに成果が出ない」状態から抜け出せない。






