前回の記事で紹介した木曽福島を離れ、各駅停車で小雪舞う信州を北上します。下車したのは奈良井駅。中山道の木曽11宿で最もよく街並みが保存されている宿のひとつで、各駅停車からはインバウンドで来日している観光客がどっと降りていきます。
街を歩くと冷たい風が通りを吹き抜けます。気温は氷点下5℃。風が吹いているのでよけいに寒く感じます。
それでも江戸時代にタイムスリップしたかのような宿場町の風情をそのまま残す美しい街並みを歩くと楽しくて寒さも吹き飛びます。1キロにわたって続くこの町並みは、大きく下町、中町、上町にわかれており、その規模の大きさから「奈良井千軒」と謳われました。
奈良井宿を歩いていると、ところどころにこのような水場があります。旅人ののどを潤す役割を果たしていたほか、家事の際の火消しに使われるなど欠かすことのできない施設でした。現在も水場組合があって当番で管理を行っています。
宿場町であったためか、現在も旅館や民宿などを営んでいるところが多く見られます。山菜料理なども提供してくれるそう。4年前にも見かけた江戸時代さながらのお宿。あのとき、次来るときはこんな宿に泊まりたいと思っていたんですが、残念ながら今回も日帰りです。
猿頭。
奈良井宿の建物は出梁(だしばり)造りといわれる独特の建築様式。2階がせり出しているのが特徴です。屋根は何枚もの木の板を重ねて作られており、それが鎧のように見えることから「鎧庇」と呼ばれています。また、庇を押さえる猿頭と呼ばれる特徴的な桟木も残っています。こんな特徴ある建物に出会えるのも木曽路の宿場町ならではです。
街歩きの楽しさで寒さなど吹き飛んでしまう、と言いましたが1時間も歩くとさすがに寒さが体にしみてきます。お昼時間になったので、かなり年季の入った建物で営業する越後屋さんで信州名物の蕎麦を食べながら次の列車を待ちました。
好物のとろろそばをいただきました。れんげに隠れていますが、付け合わせは「すんき漬け」。赤かぶの葉茎を、塩を使わずに乳酸発酵させたもので、木曽地方の保存食として親しまれているものです。海のない長野県において塩は貴重品で使えなかったため、乳酸発酵だけで作ることができる漬物が誕生したのです。普通の漬物に比べて乳酸独特の酸味を感じることができます。
小高い丘から雪化粧した奈良井宿を望む。
映画のセットのような宿場町の古い街並みがそのまま残る奈良井宿。木曽路の宿場町は雪化粧がよく似合います。寒いですがこの時期にしか出会いえない奈良井の魅力を感じに是非来てもらいたいと思います。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2026年1月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。