2026年に入ってからアメリカからこうも毎日いろいろなニュースが飛び込んでくると日本のニュースがかすんでしまいます。日曜日の夜に飛び込んできたのがアメリカ司法省がパウエルFRB議長を大陪審に召喚する書簡が送られたとの報。温厚なパウエル氏がすぐさま準備したビデオメッセージでは相当怒っており、珍しいケースになっています。

すぐさまメッセージを発したパウエル議長 FRB動画チャンネルより
ブルームバーグによると今回の騒動の主役の一人はトランプ氏に近い連邦住宅金融局のパルト局長で具体的事例を示さないまま、FRBが進める本部改築工事の費用が当初の19億ドルから25億ドルに膨れ上がった点を不当と断罪し、司法省がそれに乗っかる形で動いたものです。出来レースに近いのかもしれません。当のトランプ氏は何も知らないとシラを切っていますが、知らないはずはないでしょう。
5月に退任予定のパウエル議長をここまで追い詰める理由がどこにあるのでしょうか?一部で報じられているようにFRBの議長及び委員について政権の意向を反映できる人事体制にしたいというのがトランプ氏の目的であることはほぼ間違いありません。少なくとも現状だけを見れば議長はトランプ氏に近いハセット氏が次期議長の最有力候補であり、政権が氏を支持をするのであればそうなる公算は高いと思います。決定プロセスは極めて政治的であり、個人の資質は既にクリアしており、あとは個人の信条だけの問題でしょう。
また7人の委員のうち、既に4名はトランプ派にすり替えられる見込みであり、5月以降のFRB運営は今までにはなかった体制と背景が生じることになりそうです。
本日、金や銀が爆上げしていますが、それはドル安を反映したことと将来のドル基軸への不信感を市場が示したとも言えます。FRBは政治からは切り離され、学術的な背景を持ちながら世界の中央銀行とのネットワークが構築され、マネーが地球儀ベースでスムーズに流れるような仕組みを作ってきました。もしも中銀が一国家の政治的事由により金利が動くならば世界通貨の全体の流れを乱し、ドル基軸故に世界が振り回されるという結果を生むでしょう。ちなみにトルコではエルドアン氏が訳の分からないことを中銀に「指示」して経済が酷い状態になったこともありました。
一方純粋に金利の話をすれば私個人としては今の物価水準からはアメリカの金利は正直高いと思います。ただ、パウエル氏は意識的にゆっくり引き下たのではないかと穿った見方をしています。それは「どうぜ5月以降、政権の意向に沿って金利を下げるのだろう。とすればそののりしろは残しておき、アメリカ経済が正常に機能する日が一日でも長く維持されなくていけない」と考えている気がするのです。よって今月のFOMCでの利下げはないと思うし、市場予想もないとみています。もしもやるなら3月で、それはあと2カ月の経済指標次第だと思います。雇用が非常に落ち込んできているのですが、トランプ関税の判決もそれまでには出るでしょうからアメリカ経済の先行き見通しは立てにくいというのが正直なところでしょう。
ところでベネズエラ再建に関してアメリカ石油業界のトップを呼び出し、「お前は投資するか」と個別に確認した際、エクソンのウッズCEOが「投資不可能」と非常に単刀直入明快に返事をしたことに怒りまくり、ベネズエラから「エクソン外し」を指示したと報じられています。トランプ氏は同CEOのことを「こざかしい」(利口ぶって生意気)と述べています。トランプ氏の性格は自分に寄り添う人には「お前にも褒美をやるぞ」、それに対して自分の意見をぶつける人には「排除する」ことに何ら躊躇しません。
権力者になると誰でもその傾向はある訳で習近平氏もプーチン氏も全く同じように身内を固めていくわけです。ただ、アメリカは今のところ2期8年までしか大統領ができないので2029年1月までです。その頃には宿敵、習近平氏の4期目があるのかどうかの結果は分かっています。もしも憲法改正をしてでもトランプ氏を続投したいとアメリカ世論が支持するのか、その頃には81歳になっているトランプ氏は健康状態も気になる中、アメリカはそれまでずっと揺れ動くのでしょうか。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月13日の記事より転載させていただきました。






