米国とイランの緊張が再び高まっている。トランプ大統領は17日、米政治専門メディア「ポリティコ」に対し、「イランの新しい指導者を探す時が来た」と発言し、事実上、体制転換を示唆する強硬な姿勢を示した。抗議デモへの弾圧を続けるイラン政権を強く批判する文脈での発言だが、米国が再び軍事行動に踏み切るのではないかとの観測を呼んでいる。

トランプ大統領バンス副大統領 ホワイトハウスXより
直前にはトーンダウン、揺れる大統領発言
もっとも、トランプ大統領の対イラン発言は一貫しているわけではない。日本メディアなどが報じた直前の発言では、軍事行動への言及を抑え、ややトーンダウンした姿勢も見られた。強硬発言と慎重姿勢が交錯しており、政権として最終的な判断が定まっていない可能性もある。
ただ、トランプ大統領の政治スタイルを踏まえれば、こうした揺れ自体が交渉や圧力の一部である可能性も否定できない。
空母派遣が示す軍事的シグナル
言葉とは裏腹に、行動面では軍事的な動きが進んでいる。米国は空母を中東に移動させており、これはイランに対する明確な圧力であると同時に、軍事オプションが現実的な選択肢として存在していることを示すものだ。抑止が主目的とされるものの、偶発的衝突や情勢悪化を通じて、実際の武力行使に発展するリスクもはらむ。
バンス副大統領が支持する強硬論
ワシントン・ポストによれば、政権内ではJ.D.バンス副大統領が対イラン強硬論を支持しているという。バンス副大統領はこれまで、海外への軍事介入に懐疑的な立場で知られてきたが、イラン情勢に関しては例外的に軍事行動を支持する姿勢を見せている。
その理由として挙げられているのが、トランプ氏自身が「抗議者を殺すな」とイラン側に警告し、事実上の「レッドライン」を引いた点だ。この警告を実行に移さなければ、大統領の威信や抑止力が損なわれる――これが、ヴァンス氏周辺の論理とされる。
体制転換を求める政権周辺の声
政権外でも、トランプ寄りのシンクタンク関係者からは、イラン国内の抗議運動は「不可逆的な変化」をもたらし得るとして、体制転換を米国が後押しすべきだとの主張が出ている。軍事的圧力はそのための有効な手段になり得る、という考え方だ。
さらに、保守国際主義の立場を取るウォール・ストリート・ジャーナルも、イランの現体制を米国の長期的な脅威と位置づけ、より積極的な関与を是認する論調を展開している。
「軍事力を初動で使う」第二次トランプ政権
こうした動きを理解する上で重要なのが、第二次トランプ政権の安全保障観だ。ポリティコは、同政権が軍事力を「最終手段」ではなく、危機対応の初動から用いる傾向を強めていると指摘している。迅速な決断と圧倒的な力による抑止を重視する一方で、エスカレーション管理の難しさというリスクも抱える。
「再攻撃」になる可能性
仮に米国がイランへの軍事行動に踏み切れば、それは昨年6月に実施されたイラン攻撃に続く「再攻撃」となる。昨年の攻撃は限定的ながらも、米イラン関係を大きく悪化させ、中東全体の緊張を高めた。その延長線上で再び武力が行使されれば、事態は一段と深刻化しかねない。
現時点で再攻撃が不可避と断定することはできない。しかし、トランプ大統領の体制転換を示唆する発言、空母派遣という軍事的準備、バンス副大統領を含む政権内の強硬論、そして政権周辺や保守言論の後押しを総合すれば、「再攻撃の可能性が現実的」と見るのが妥当だろう。
鍵を握るのは、イラン側の出方と、トランプ大統領が自ら引いたレッドラインをどこまで重視するかだ。外交による収束か、力による示威か――その選択は、中東情勢だけでなく、第二次トランプ政権の本質を浮き彫りにすることになりそうだ。





