リモコンのボタン、数えたことある?

Sergey Badalov/iStock

結論から言う。日本のメーカーは、ユーザーを見ていない。いや、見ているつもりなのかもしれない。でも、見えていない。これは全然違う話だ。

僕は、だれの真似もしない」(前刀禎明 著)

先日、1年以上使っていたテレビのリモコンを何気なく触っていたら、表面がスライドしてフタが開いた。中から10個以上のボタンが出てきた。存在すら知らなかった。1年以上、毎日使っていたのに。

笑い話じゃない。これ、日本企業の病理そのものだろう。

ボタンが多いのは「多機能」の結果だ。機能が多ければサービス満点。理屈はわかる。でも待ってくれ。押したこともない、押そうと思ったこともないボタンが大量にあるということは、その機能、誰の役にも立っていないということだ。

家電量販店のスペック比較表、あれ全部理解できる人いる? いないでしょ。みんな値段と、せいぜい画面サイズくらいしか見てない。知ってるくせに、メーカーは機能の数を競い続ける。多機能こそ価値だと信じ込んでいる。というか、信じたいのだろう。そうじゃないと自分たちの仕事の意味がなくなるから。

話を戻すと、昔のソニーは違った。

ベータからVHSに切り替えた後、「極楽ビデオ」というシリーズを出した。コンセプトは単純。「録画したいだけでしょ? だったら簡単に録画できればいいじゃん」。それだけ。余計なボタンなし。これが売れた。

本質的な価値の訴求ってこういうことだ。ユーザーが本当に欲しいものだけ残して、あとは切り捨てる。ジョブズがアップルでやったのも同じこと。iMacは「美しい」「使いやすい」。それだけで会社を復活させた。

でも今の日本メーカーは逆をいく。営業がうまくいかないと「機能を増やせ」と開発に圧力をかける。量販店で説明しやすいように、あれもこれも追加する。努力の割に伝わらない。当たり前だ。ユーザー不在なんだから。

で、iPodの話。

白いイヤホン、覚えてる? iPodがヒットする前、日本人は白を選ばなかった。汚れるから。手垢でグレーになるから。第一選択は黒だった。

ところがiPodが売れた途端、日本メーカーは手のひらを返す。白いイヤホンを作り始める。街中が白だらけになった。

皮肉な話だ。遠目に見たら、メーカーの区別なんかつかない。白いイヤホンをしてる人、全員アップルユーザーに見える。「iPod流行ってるな」という印象を強化して、競合他社が勝手にアップルの宣伝をしてしまった。大量の塩を送ったわけだ。

僕はiPodを売る側にいたから、これを狙ってやった部分もある。でも実際に流行ると、複雑な気持ちになった。

iPodが売れた理由は、新しい体験を提供したからだ。イヤホンが白かったからじゃない。使った人ならわかるはず。でも日本メーカーは表面しか見なかった。白いイヤホンという「記号」だけコピーした。

結果、日本の携帯音楽プレーヤー市場はiPodの一人勝ち。

何やってんだか。

ダンサーのCMが当たれば同じようなCMが量産される。ベストセラーのタイトルをパクった本が次々出る。「Web 2.0」の次は「Web 3.0」。意味もわからず言い始める。

人と違うことをしようと思わないのか。思えないのか。

僕はこういうの、本当に嫌いだ。へそ曲がりと言われようと、意地でも人と違うことをしたい。白いイヤホンを真似る側じゃなく、仕掛ける側にいたい。

あなたの会社の製品、余計な機能ついてない?

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)