日本の国債利回りが高騰、円が下落し続ける中、高市政権は、積極財政政策を前面に出しながら、解散に打って出た。
端的に言って、長期的見通しを欠いたその場限りの態度だと思わざるを得ない。
もっとも高市政権発足後の早期解散そのものは、予定通りだった、と言えるだろう。石破政権の不人気で失った議席を取り戻すことが、自民党が総裁・総理を代えた大きな理由だったからだ。選挙をしないのであれば、高市首相にした意味がない、政策の不手際がさらにいっそう明らかになる前に、解散してもらうのでなければ困る、というのが、自民党関係者の気持ちだろう。異例の短期の選挙戦を、イメージ戦略で乗り切ろうとする作戦は、自民党にしてみれば合理的ではある。
ただ選挙結果の見通しは、不透明だ。内閣支持率は高いが、自民党支持率は、それほどではない。とはいえ、他の政党も、納得感のある政策を打ち出せているわけではない。どこも似たようなものである。

全国幹事長会議で衆院総選挙にかける決意を述べる高市首相 自民党HPより
結果として、政策論への熱意は乏しい。日本が置かれた状況は厳しいが、厳しいがゆえに、政策論が盛り上がらない。選挙そのものも、閉塞感の中で、進んでいくことになりそうだ。
長期的な視点に立って考えてみて、日本の未来は暗い。その雰囲気を振り払うような威勢の良い言葉が並ぶが、誰も本気で心の底から自らの政策を信じているようには見えない。
日本の苦境は、かなり深刻な構造的なものだ。未曽有の大人口減少・少子高齢化時代に、世界最悪水準の財政危機と恒常化した低経済成長で突入しているのだ。簡単な解決策などあるはずがない。問題は、政治家がそれを正面から論じる勇気を持っていないことだが、そのような勇気を持っていたら選挙に落ちて政治家ではなくなるかもしれないとすれば、政治家を責めるのはお門違いということにはなる。
私の専門に近いところで言えば、防衛費の倍増は、中身がないが、威勢の良い言葉だけを並べて選挙にだけは勝とうとする態度がもたらした、端的な事例である。
本来であれば、与党は、過去4年ほどの大幅な防衛費の増加で、いったいどのような成果がもたらされたと言えるのかを、説明しなければならないはずだ。しかし厳密な費用対効果の説明が聞かれることはない。相変わらず、さらなる防衛費の増加を声高に主張する掛け声ばかりだ。驚くべきことに、軍事評論家や国際政治学者の方々も、防衛費倍増の結果には何ら関心がないようだ。まるで自分たちの業界の利益がかかっているかのように、ひたすらさらなる防衛費の増額だけを求めているような状況だ。
清谷氏1月4日記事。私は同意。まあ、数年後にわかるでしょう。日本の主流派の偉い軍事評論家と国際政治学者の方々が、本当に正しかったか、単なる無責任者発言者ではなかったかどうかが。
【アゴラ】清谷 信一:防衛力を強化するには防衛費をGDP比率1パーセントに戻すべき。 https://t.co/4g96bmm6Oq
— 篠田英朗 Hideaki SHINODA (@ShinodaHideaki) January 23, 2026
やみくもに増税や国債に頼りながら防衛費を何倍も上げてみたところで、豊富な天然資源を保有するロシアと、GDPが5倍以上ある中国を相手にした二正面作戦に日本が勝利する見込みなどはない。

論理的に言えば、外交で補っていくしかないのだが、妥協的な態度は、選挙に勝ちたい政治家によって禁じられている。八方ふさがりだ。
選挙戦の最中にも、日本を取り巻く環境は悪化していきそうである。だが恐らくは、選挙の後に、さらにいっそう厳しい現実が待ち受けている。まずはそれをしっかりと見据えておく心持ちが、われわれが今一番必要としていることかもしれない。
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