このごろ政治家が潜在成長率という言葉を使うようになりました。「成長戦略」のためには短期の景気対策だけでなく長期の潜在成長率を上げる必要があるという当たり前の話に気づいたのは一歩前進ですが、高市首相は「積極財政で潜在成長率を上げる」といいます。
日本経済の「実力としての成長力」を表す「潜在成長率」の要因を分析すると、「日本人の底力」ともいえる技術革新力や働き手の効率性などを表す「全要素生産性」は、他国の先進国と遜色のない「寄与度」を示していますが、「資本投入量」の「寄与度」が目立って低いそうです。… pic.twitter.com/Z0Lr0ffLlw
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) January 26, 2026
Q. 潜在成長率とは何ですか?
潜在成長率(Potential Growth Rate)は、資源(労働・資本)が過不足なくフル活用され、インフレにもデフレにもならない長期的な経済成長率、簡単にいうと経済の実力のことです。経済成長率は短期的な要因で変化しますが、潜在成長率はそういうノイズを除いた長期的なトレンドで、政策立案に使われます。
特に潜在成長率と実際の成長率の差を需給ギャップ(GDPギャップ)と呼び、景気や金利の判断基準にします。
Q. 潜在成長率の構成要素は?
経済学では、主に以下の3つの要素が組み合わさって潜在成長率が決まると考えられています。
・資本ストック(モノ):工場、機械、インフラ(道路や通信網)などの設備の量
・労働投入(ヒト):働いている人の数や、労働時間の合計
・全要素生産性(TFP): 技術革新(イノベーション)や経営の効率化など、労働や資本以外の要因
Q. 日本の潜在成長率は?
日本の潜在成長率は、近年では0~0.5%程度で推移しています。日本経済がこの30年、成長できなかった原因は、高市首相のいう「行きすぎた緊縮財政」ではなく、資本や労働の投入量が減り、生産性が上がらないために潜在成長率が下がったことです。

Q. 「積極財政」で潜在成長率は上がるのでしょうか?
潜在成長率に、政府支出は含まれていません。「積極財政」と呼ばれる給付金や減税は、一時的にGDPを上げる景気対策で、民間投資を刺激する効果はありますが、長期的な潜在成長率は上がりません。
道路や電力などのインフラ整備は生産性を高める効果がありますが、日本のインフラ整備はほぼ終わっており、必要なのはその改修ぐらいです。行政のデジタル化投資(DX)は必要ですが、規模は大したことありません。
他方、積極財政には効果がない、あるいは逆効果になるとする見方もあります。
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インフレの加速: 人手不足などで供給不足のときは、給付金や減税で物価が上がるだけです。
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クラウディングアウト: 完全雇用の状況で政府が大量に借金をして支出すると、金利が上がって民間の投資をかえって阻害します。
今のように需給ギャップがゼロのときは、政府投資と民間投資はトレードオフになっています。政治家のみなさんが選挙のためにカネをばらまきたいのはわかりますが、それは金利上昇をまねいて民間投資を締め出す可能性が高いのです。





