なぜ維新の「OTC類似薬改革」は進まないのか?「聖域」の正体と唯一の突破口

維新の「OTC類似薬改革」はなぜ進まないのか

日本維新の会が主張する社会保障改革の目玉政策の一つがOTC類似薬保険適用除外である。

連立前の2025年の骨太の方針にもすでに見直しする旨は入っているが、連立入りした後も実現できそうな様子がない。

そもそも何をどうすれば実現できるのかよくわからない。

維新も目標を掲げているのは良いが、道筋を示しているようには見えない。

そこで、一体どうすればOTC類似薬保険適用除外が出来るのか調べてみた。間違っていればご指摘いただきたい。

前提として、OTC類似薬をそのまま文字通り保険適用除外とすると、混合診療禁止の問題もあり困難極まりないため、今回は実質的な保険適用除外を選定療養制度(例外的混合診療の解禁)による10割負担の導入を目指すものと想定して話を進める。

実現への唯一のルート:「骨太の方針」と「予算」の連動

維新が実質的保険適用除外をするには現実的には二つのルートしかない。

一つは

次年度の骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)にOTC類似薬の保険給付除外(選定療養化)を期限付きで明記させる

もう一つは

高市政権に最重要課題と認めさせ、制度変更しなければ予算を通さない、という形での圧力をかける

である。

流れを可視化すると以下のようになる。

高市総理が官邸最重要政策に指定

「骨太の方針」に期限付きで明記(閣議決定)

予算と制度改革を一体化

幹事長・政調会長が党方針として確定

厚労省が法案を起草

政府提出法案として国会提出

これ以外は日本の政治構造上、考えづらい。

いずれにしても、維新は今回の選挙でこのプロセスを明示した上で公約を掲げ、そして民意を得る必要がある。

その民意を背景に高市首相を動かし、 連立離脱をチラつかせながら、幹事長、政調会長をも同意させる必要がある、ということである。

「聖域」の正体:1971年の敗北と医師会の支配構造

そもそも、なぜここまで極めてハードルが高いのか。その理由は、総理ですら容易に手を出せない、日本の医療制度の複雑な成り立ちにある。

日本の医療制度は「社会保険方式」と呼ばれ、一般の政策決定プロセスからは一線を画した、いわゆる聖域に置かれている。

その建前の理由としては、

医療に関しては、過度な政治的な介入を防ぎ、政治濫用を避けたい、そして医療の継続性は確保したい

ということになるが、さらにその背景を見ると、政府と医師会との権力闘争の結果生まれた制度であることがわかる。

戦後の混乱を経て1961年に国民皆保険が達成されたが、政府は医療を官僚統制下(社会主義的な管理下)に置き、医師をあたかも公務員のように管理しようと試みた。

これに対し、伝説的医師会長・武見太郎は1971年、「保険医総辞退」という医師による事実上のストライキを敢行し、医療の崩壊を賭けて医師会が実権を握るべく政府に要求を通した結果が、現行の社会保険方式である。

これにより、中央社会保険医療協議会(中医協)という政府と一線を画した会議での医療政策提言が行われることとなり、実質的に医師会を代表とする医療関係者によって医療制度が管理される仕組みとなった。

さらに、合議制という形により責任の主体を分散することで、制度自体の安定化が図られ、結果として現在までそれが持続している、という状態である。

そのため、たとえ総理大臣であろうと、医療制度を変更することは容易ではない状況が作られている。

さらに、自民党内での合意形成も医療保険部会という機関が事実上の拒否権を持つ形をとっており、ここを通さなければ実質的に変更ができない仕組みとなっている。

そして、この部会の構成員も医療関係者との深いつながりがある議員、いわゆる「厚労族」しか入りづらい仕組みとなっている。
つまり、

医療業界(主に医師会)による二重の支配構造が形成されている

ということである。

鉄壁の政策決定プロセスと、わずかな「介入余地」

具体的に実際の政策決定プロセスを示すと以下の順序で進む。

骨太の方針

厚労省が提示

厚労部会による事前審査

政調審議会による検討と政調会長の了承

総務会による全会一致の承認(党の最高意思決定)

党の正式方針に決定(党議拘束)

政府による閣議決定・法案提出 である。

この中で、厚労省、厚労部会は政治と一線を画した医療業界側の議論が進められるため、政権、維新、そして世論が入る余地があるのは、実のところ入り口である骨太の方針、そして出口での予算承認の拒否権に限られる。

入り口である、骨太の方針で、OTC類似薬の選定療養化を期限付きで明記した場合、さすがに厚労省も従わざるをえない。しかし、仮に「検討する」「進める」などの曖昧な表現にとどまった場合は、検討して進めたがここまででした、と変更には至らない姿勢のみの議論で終わってしまう可能性が極めて高い。

これは後発医薬品使用促進など、これまでもそのように進められてきた膨大な歴史が証明している。

なので、政策の入り口で結果を縛るには、「期限付きで明記」するほかない。

もう一つ、出口での拒否権は予算と連動させて拒否する、という手段しかない。上記の通り、骨太の方針での設定が曖昧な場合、厚労省、厚労部会等での議論は検討しただけの結果に終わる可能性が高い。その際に、「これでは予算は通せない」と拒否した場合にのみ、あらためて厚労省で案を練り直すプロセスに入りうる。つまり、要求を通さなければ予算を拒否する、という形での制度変更の圧力の掛け方しかない、となるわけである。

民意を武器に「最後の壁」を突破せよ

となると、日本維新の会が、本気でOTC類似薬の選定療養化を達成したいと思うのであれば、上記のように

「次年度の骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)にOTC類似薬の保険給付除外(選定療養化)を期限付きで明記させる」

もしくは、

「高市政権に最重要課題と認めさせ、制度変更しなければ予算を通さない」

という形での圧力をかけるしかない、となるわけである。

しかし、それでもまだ障壁は残っている。

「政調審議会による検討と政調会長の了承」「総務会による全会一致の承認」である。

仮に、維新が高市総理に迫り、最重要課題と設定させ、予算拒否も決断させたとしても、それによって党勢が落ちると政調会長、幹事長が判断した場合、政調審議会、総務会で拒否されうる。

そして、ここを越えるために必要なのが、「民意」というわけだ。

すなわち、今回の選挙で、具体的な道筋を国民に示した上で、実現を後押しする票を得た、という結果が、政調会長、幹事長への何よりもの圧力となる。

日本維新の会が連立入りして約4ヶ月。

高市総理の社会保障政策、診療報酬アップや医療介護従事者への報酬アップは大幅に進んでいる。

一方で維新の目玉政策であるOTC類似薬保険適用除外は骨抜き状態の議論が進み、高齢者の医療費自己負担3割に至ってはほとんど議論の俎上にも載せられていない。

これでは、維新支持者の不信感を招くのも無理はない。

今こそ、成立への具体的な道筋

骨太の方針への期限付き明記
予算拒否という圧力

を国民に示した上で、民意を得る、ということこそが正道であり、党勢回復への唯一の道であると言える。


編集部より:この記事は精神科医である東徹氏のnote 2026年1月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は東徹氏のnoteをご覧ください。