自民党HPより
高市総理が電撃解散を打って挑んだ衆院選での歴史的大勝利が明らかになった9日朝(日本時間)、トランプ大統領はTruth Socialに高市氏への祝意をこう書き込んだ。
高市Sanae総理と彼女の連立政権が本日の非常に重要な投票で「地滑り的勝利」を収めたことに祝意を表します。彼女は非常に尊敬され、人気のあるリーダーです。Sanaeの大胆で賢明な選挙呼びかけの決断は大きな成果を上げました。今や彼女の政党は議会を支配するための歴史的な3分の2の超多数派を握りました。これは第二次世界大戦以降初めてのことです。Sanae:貴女と貴女の政権を支持できることを光栄に思います。貴女の保守的な力による平和政策が大成功しますように。熱心に投票してくれた素晴らしい日本の皆さんを、私は常に強く支持します。 大統領ドナルド・J・トランプ (拙訳による)
早々に横道に逸れるが、筆者はこの投稿を9日6:45の台湾紙『自由時報』のニュースレターで知った。見出しのAI和訳は「選挙圧勝!高雄早苗が一夜にしてメッセージを投稿『トランプ氏に心からの感謝』」が目を引いた。原文は「大選狂勝!高市早苗連夜發文:衷心感謝川普」だが、実は台湾では「高雄市」を「高市」と称している。
閑話休題。この投稿に先立ちトランプ氏は5日にも、「3月19日に高市首相をホワイトハウスにお迎えできることを楽しみにしています」「彼女は日本の人々を失望させない!(SHE WILL NOT LET THE PEOPLE OF JAPAN DOWN!)とても大事な日曜日の投票、頑張って」と書き込んでいた。
これに高市氏が「ドナルド・J・トランプ大統領の温かい言葉に心から感謝します。春にホワイトハウスを訪れ、日米同盟をさらに強化するために共に協力していくことを楽しみにしています」とのポストを返し、斯くて衆院選の大勢が判明した9日朝、冒頭の祝意が届いたという次第だ。
日米中の動向に敏感なこの台湾紙は、9日の別記事「證實習近平將訪美 川普曝時間點」でもトランプ氏が4日、習近平氏との電話会談について述べたことを報じている。4日に行われ8日にUPされた1時間ほどの『NBC』のインタビュー番組の中で、トランプ氏が「さっき習氏と話したばかりだ」と述べたのだ。
トランプ氏は習氏との電話で、「関税の話をしたこと」、「自身が4月に訪中し、習氏が年末にホワイトハウスに来ること」、「習氏とは良好な関係にあること」、「世界で最も強力な2つの国の関係は良好である必要があること」、などが話題に上ったとインタビュアーに明かした。
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本題に入ろう。次期特別国会で総理に指名される高市氏の主たる課題は予算の成立だ。が、「責任ある積極財政」を評価した国民が自民党に与えた3分の2を超える「地滑り的勝利」は、与党少数の参院で否決されても、衆院で再可決できる状況を実現させた。
これも確かに電撃解散の狙いの一つだったかも知れぬ。が、筆者には、責任感の強い高市氏を総選挙に駆り立てた最大の動機は、まさに11月7日の「台湾有事」に係る答弁に対する中国の執拗な嫌がらせを止めさせるには「総選挙での大勝が必要」と考えたからではなかったか、と思えるのである。
そこで1月18日、筆者はこの選挙を「国防選挙」と位置付けて議席予想をし、「高市降ろしを企図している中国に最も効果的な無言の圧力になるのは、政権への高支持率と本衆院選での圧勝である」と書いた。結果は、筆者予想の264議席を遥かに上回る316議席という「戦後初」の歴史的勝利だった。
高市氏にすれば、平和安全法制に沿った答弁を、中国はまだしも日本の野党や反高市勢力が「撤回せよ」と騒いだのだ。「中国の武力による台湾の海上封鎖に米軍が来援し、それに中国が武力を使うなら日本の存立危機事態になり得る」と同法を噛み砕いて述べただけなのにと、さぞ不本意なことだろう。
「答弁」から2ヶ月、電撃解散に直面するや立憲は、中道と野合したいばかりに平和安全法制を合憲と認めた。「撤回」した途端、中国が台湾に武力侵攻するかもしれない、と遅ればせながら気が付いたのではなかろうか。118議席減という惨状は、「信なくば立たず」の逆を行った結果である。
対照的に毅然とした中国を抑止する責任と覚悟が、高市氏をして満身創痍ながら命懸けの選挙戦を続けさせ、国民はそれを目の当たりにした。「中国」は決して口にはしないが、「日本列島を強く豊かに!」するために「私を選んで」と訴え続けた。それがトランプ氏の書く「Conservative, Peace Through Strength Agenda」なのである。
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3月19日、高市総理が国賓としてそのトランプ氏と相まみえる。そこで高市氏が語るべきは「平和」だと筆者は思う。「平和」こそ「台湾有事」を起こさせないためのキーワードだ。先ずは日本が「両岸問題の平和的解決を前提に、中国との国交を回復した」という「歴史の事実」を、高市答弁の経緯説明と合わせてトランプ氏に伝えるのだ。
72年9月29日の「日中共同声明」(第六項後段)に以下の一節があることを説明してはどうだろうか。
両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
即ち、台湾有事の際の中国による台湾「封鎖」が日本のEEZに及ぶ場合は勿論のこと、準軍事組織である中国海警公船による日本領海への不法侵入、あるいは日本のEEZへのミサイル発射なども明らかに「武力による威嚇」であり、この「第六項後段」に抵触することを述べるのである。
然る後、79年1月1日の米中が国交回復した「共同コミュニケ」の3か月後(4月10日)に議会主導で法律化した国内法「台湾関係法」(TRA)に対する高市氏の理解、即ち「日米共同声明と同様に平和が基本である」との理解を開陳するのだ。その「第二条B項 合衆国の政策」は以下のように書いている。
(3)合衆国の中華人民共和国との外交関係樹立の決定は、台湾の将来が平和的手段によって決定されるとの期待にもとづくものであることを明確に表明する。
(4)平和手段以外によって台湾の将来を決定しようとする試みは、ボイコット、封鎖を含むいかなるものであれ、西太平洋地域の平和と安全に対する脅威であり、合衆国の重大関心事と考える。
その上で、中国が問題視する「高市答弁」も日本の法律たる「平和安全法制」の「存立危機事態」基づくから、中国の指摘は「内政干渉だ」と伝える。同様に、米国による「TRA」を根拠とする台湾への武器売却への批判も米国への「内政干渉」であり「ドンロー主義」を侵している、と問題提起してはどうか。
なぜなら習氏は、前述した2月4日のトランプ氏との電話会談で、台湾への武器売却を止めるよう求めた。「米国には米国の懸念があり、中国には中国の懸念がある」と述べ、米国産の大豆や石油の購入を増やす代わりに、台湾問題への関与を弱めさせる「取引」を持ちかけた(2月5日の『日経』)。
が、トランプ氏が尊敬してやまないレーガン大統領は82年8月17日、鄧小平と「8・17コミュニケ」を発表するに当たり、台湾への武器売却に関する以下の文言が記された国務長官と国防長官の署名入りの極秘大統領令に署名した。
・・・このコミュニケの署名に至る交渉は、次のことを前提として進められた。武器売却の削減は台湾海峡の平和次第であること、そして台湾問題の平和的解決を目指すという中国政府の「基本方針」が継続されているかどうかで決まることだ。
つまり、米国が台湾に売却する武器を削減するには、中国が台湾との相違を平和的に解決すると確約していることが絶対条件なのである。これら二つの事項の結びつきが米国の外交政策にとって恒久的な必須条件であることは明白である。
さらに、台湾に供給される武器の質と量は、すべて中国による脅威に応じて決定される。台湾の防衛能力は、質・量の両面において、中国の防衛能力に応じて維持されることになる。
高市氏は、こうした事実をジョン・J・タシクJr著「本当に『中国は一つ」なのか』(草思社 2005年12月第一刷)で読んだことがあると申し添えて、「米国の台湾への武器売却への習氏の懸念は、台湾の武力統一を放棄によって払拭される」とでも、トランプ氏に水を向けてみるのである。
そもそも米中の「3つのコミュニケ」は、須らく両岸問題の平和的解決が前提にある。習氏には毛沢東や鄧小平の成したこうした歴史的事実を常に提示することが肝要だ。トランプ氏が「平和」をキーワードに習氏との会談に臨むなら、高市氏が推薦したノーベル平和賞により近づくことだろう。