中道改革連合代表選で新代表に小川淳也衆院議員が選出された
中道改革連合HPより
衆議院選挙の後、SNSを見ると、非常に人心が荒んでいる印象を受ける。自民党を支持した側は、「われわれが勝ち組だ、リベラルよ死滅しろ」といった類の「マウントをとる」行動で悦に入っている。野党勢力を支持した側は、「バカな人々が中身のない扇動に引っかかった、日本は死滅する」といった類の「恨み節」を羅列している。非常に不健康な状態だと言えるだろう。
人間の社会に競争は付き物であり、必要悪ですらある。重要なのは、それが社会を発展させる方向で発現していくのか、それとも社会が停滞するような混乱を助長する要因となってしまうのかである。
今の日本は、明らかに後者の要素が強い。もっとも、その最大の要因の一つは、小選挙区制度を導入して久しいにもかかわらず、意図された二大政党制の方向に政党政治がまったく進んでいないことだ。
政権交代の可能性がないのであれば、小選挙区制には弊害しかない。一方で、常に大量の死票を生み出し、社会に恒常的な不満層を蓄積させていく。他方で、独裁的な権力を温存し続ける。
もっとも、なぜ今の状態になってしまっているのかという原因をめぐっても、争いは止まないだろう。自民党支持者側は、「野党がだらしないから、こうなる」と主張するだろう。野党支持者側は、「自民党側が力と金に物を言わせてイメージ戦略だけを徹底するから、こうなる」と主張するだろう。
おそらく今回の衆議院選挙で「中道改革連合」は、こうした事情を鑑みて「中道」を掲げたのだと思われる。「極右」でも「極左」でもなく、真ん中の良識的な路線を行くのが「中道」だと言いたかったのだろう。加えて一応、停滞感があふれる日本社会の現状も踏まえて、「改革」も掲げた。
しかし「中道改革」のイメージはわかりにくかった。そもそも冷戦終焉から35年がたつ現代世界、そして現代日本において、「右」と「左」の座標軸に沿って人々が争っているから「中道」に意義があるという仮定自体が、まったくナンセンスで現実離れしていた。
体系的な「右」や「左」のイメージがないまま、軍拡を掲げる強硬な安全保障政策や、消費税廃止を求める過激な経済政策などで争っているのが現代日本である。
国際社会の動向を見ても、どの国が「右」でどちらが「左」なのか、といった問いはまったく意味を失っている。現実から乖離した問いであり、もはや誰もそのような問いを発していない。
特に若年層、そしてほとんどの現役層にとって、「右」と「左」の違いは意味を失っている。したがって「中道」は、意味不明なものにしか映らない。
「中道改革連合」が意図したのは、過激な主張に与せず、あるいは単純化されすぎたスローガンに懸念を抱き、地道に現実的な政策を積み上げていくことを好む穏健派の人々の支持を開拓することだったのだろう。
だとすれば、せめて「中道」ではなく、「穏健」主義のグループとして自己アピールをするべきだった。「極端を排する」ことを主張し、「穏健」さを売りにしていくべきだった。
- 国益を大切にしながら、中国との対話も模索していく
- 日米同盟の価値を認識しながら、多角的な信頼を得る外交を進める
- ウクライナに寄り添いながら、戦争の泥沼化よりも早期終結を促す
- 敵対国を罰することではなく、国際社会の法の支配と人道主義を原則に掲げる
- 移民の弊害を認識しながら、望ましい共生社会を求めていく
- 持続可能な財政政策を目指し、無駄を省いたうえで新規の支出を行う
- 人口減少の現実を受け止め、長期的観点から人口減少の早期停止と少子高齢化の弊害の緩和を目指す政策を優先する
こうした「穏健」路線は、現実が厳しいことを認識したところから生まれる。現代日本が抱えている構造的な問題に対して、簡単に即効性のある効果が見込める政策など存在しない、それはすべてデマである、という立場をあえて採用するところから、「穏健」主義は生まれる。
高市政権は、中身がないと酷評されながらも、きれいな言葉を並べ続け、その態度こそが国を愛することだというアピールをして選挙で大勝した。これから4年間は、その高市政権の姿勢と現実とのギャップの顕在化が大きなテーマとなる。 野党としては、じっくり腰を落ち着けて4年後を見据えた体力強化を図らなければならない。
そのためには、高市自民党の限界を指摘する役目を担うことが必須だ。しかし、高市自民党が「極右」で「バカ」だから間違っている、といった類の主張は、あまり効果がないだろう。野党の政治家だけが天才揃いで、魅力的な抜本的解決策を知っているはずがないからである。
日本が置かれた厳しい現実を見つめる誠実な態度が必要だ。そのうえで、高市自民党は単純でわかりやすいが現実から乖離した主張をしている、と批判するべきである。
自分たちは、地に足の着いた現実認識をもって、穏健な政策でじっくりと日本を改善していく、と主張するべきだ。
外交・安全保障政策では、アメリカ一辺倒の外交で中国とロシアに対する二正面作戦を勝ち抜こうとする姿勢の非現実性を指摘し、穏健な外交路線を前面に出すべきであろう。
野党が標榜するべきなのは、「中道」というよりも「穏健さ」だと思う。
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